外伝 動き出したそれぞれの思惑(???視点)
※今回の話は複数の場面に入れ替わりお届けいたします。
「――そうですか。彼は
モニター通信越しに映る人物を前に
『
「そうでしょうか?むしろ,自分よりもあなたの方が安堵しているのではありませんか――
皺を寄せていた初老の男性――現政権である新民党の幹事長を務めており事実上の政府の最高指導者である
『君も痛い所を突いてくれないでくれ。馬鹿息子が原因でこのような事態になったのだ。
「幹事長,何度もいいますが今の
『そう,だったな。昔と違って彼等は軍属でもなければ政府の犬でもない。いや,表立ってはと言った方がいいか』
自身の言ったことに苦笑している幹事長を見て自分も肩をすくめた。
自分達が
――その反面,昔から続いている様々な問題が浮き彫りになって彼等に危ない橋を渡らせているのも事実であるが……。
まったく,あの時代の者達は何を考えて若い世代を犠牲にさせることを当たり前と思っているのか未だに理解が出来なかった。
「それで幹事長。これからどうするおつもりですか?御子息が復学されるのは再来月頃だと聞いておりましたが?」
『……近い内にあの子には
「心中,お察しいたします」
私の言葉に幹事長は溜息を吐くと通信を切った。
幹事長の御子息は頭の良い子で
「やはり,あの学園は何かあると見て間違いないだろう。
かといって,あの誠央学園だ。
藪を突いて蛇だけならまだいいが,それ以上の物が出ないとも言い切れん。
「それにあの子にはあまり誠央学園のことを関わらせたくない。
考え事をしていると誰からか通信が入っていることに気付き繋げた。
「
『……久しぶりだな,
「!?――お前から連絡を寄こすとは珍しいな,
連絡が来るはずのない人物からの連絡に自分は笑みを浮かべると共に要件はおそらく
**************************
「ふぅ~……」
「先生,お疲れでしょうか?」
「そうだな。息子のこともそうだが,今後のことも色々とある」
――
元々は諸外国の諜報員や国内で暴れ回る日解連に対応するために設立した超法的処置を有したエージェント。
政府関係者達から政府の犬と言われているが彼等の御蔭で国内が守られていたことも事実であり,彼等に重荷を背負わせ過ぎていたことも事実だ。
そして何より――我々は若い世代を使い捨ての駒にしてしまったのだ。
「昔と違って情勢は落ち着いた。日解連もほぼ壊滅したと見ていいだろう。もう,彼等には普通の生活を送らせてやらねばならん」
政権が変わり
――祇園で起きた事件を二度と繰り返さないためにも……。
「
「話には応じると。ただ,
「老害共が――未だに自分達が行ったことを認めない上に若い世代を食い潰すつもりか!?出生率の減少は止まってきているとはいえ状況を理解しているのか!?」
自分も老害の一員であるため他人事のように言えないが,何故そこまでして自分達の保身のために動こうとするか理解ができなかった。
それに,自分達の下の世代も
――未成年の
――プルルルルルル
「……少し失礼します。……もしもし……えっ!?坊ちゃんが!?」
「どうした?馬鹿息子が何かあったのか?」
電話を切った秘書が眉をひそめて私にとんでもないことを言った。
「坊ちゃんが先生とお話がしたいと言っております――
「何処から情報が漏れたんだ!?また,馬鹿息子の取り巻き達からか!?」
こちらから話を切り出す前に情報が行き渡るとは……。
何故,息子の周りに馬鹿共の息子が集まったのか理解が出来なかった。
「……家に戻り次第,話をすると言っておいてくれ」
「かしこまりました」
溜息を吐きながら執務室に置かれている椅子に深く腰掛けると頭を抱えた。
本当に何故こうも頭の痛い問題が続くのか――
**************************
「――
「おつかれさまです,
とあるカラオケ店のソファーに深く腰掛ける誠央学園の男子生徒,
そして,その周りには大学生ぐらいの女性二人が彼に抱き着いていた。
「ねぇ,次はそっちが歌ってくれてもいいでしょう?」
「そうそう。カラオケに来たんだから歌わない――キャッ!?」
だが,彼は彼女達を振り払うと蔑むような目線をした。
「……金はやる。早く失せろ」
「!?そんな言い方ないでしょう!?そっちが誘ってきた――ヒッ!?」
扉付近にいた男性が二人を睨むと彼女達は怯えたような顔で震え出した。
しばらくすると,彼女達は言われた通り部屋から出て行った。
「お前も外に出ていろ。スタッフが来ても中に入れるな」
扉の前にいた男性は何も言わず,そのまま部屋を出て行った。
「……なぁ,
「あんな下等市民なんて興味ねぇな。狙うなら誠央学園の美人か,星稜学園のあの青髪の女も悪くないな。あの時は驚いたがあれはかなりの上玉だぞ」
厭らしい笑みを浮かべる彼を見て周りにいた彼の友人達は肩をすくめていた
――
そして,父親と同様――彼もまた誠央学園のこの国を導く存在という呆れた校風によってエリート思考が植え付け垂れた哀れな男子生徒でもあった。
「それにしても,
「あいつのダチから動くなと言われているだろう。何か言われてもあいつらの責任にすればいい。にしても,星稜の奴等には感謝しかないな」
自分達が何もしなくても今回の件であちら側が相当な痛手になっただろう。
これで自分達が動いてもあまり目立つことはなくなったのだ。
「それで,お前が言うには今はまだ動かない方がいいと?」
彼だけでなく周りにいた友人達も自分を見た。
「動くのは
「はっ,たしかにその通りだな。――くれぐれも
「わかっております。では,自分はこれで」
彼等に頭を下げると自分は部屋を出て行った。
「――何処へ行ってもああいった連中は馬鹿共ばかりだな。まあ,こちらは手に入る物さえ手に入ればそれでいい。それよりも,今度はあちらに動いてもらおうか。そろそろあのお嬢様がしびれを切らし始める頃だろうからな」
微かに笑うとある人物に電話を掛けるために自分はカラオケ店を出て行った。
**************************
「何であの二人が星稜学園にいるのよ!!」
部屋に置いてあった花瓶を投げつけるとガシャンと物凄い音で割れた。
「……お嬢様,落ち着いてください。また,旦那様に叱責されますよ?」
「うるさい!あんたは私の側仕えでしょう!命令を聞いておけばいいのよ!」
「……かしこまりました」
私に注意をしたスーツを着た男性は溜息を吐いた。
何であなたまでそんな顔で私を見るのよ!?
私が一体,何をしたって言うの!?
色々なことが重なり,私のイライラは今にも爆発しそうになっていた。
――プルルルルルル
「……少し失礼します。もしもし,私だが……」
男性が電話を掛けに外に出ると私は部屋にあった椅子にドカッと座り込んだ。
――何で私の人生を狂わせたあの2人が星稜学園にいるのよ……。
あの2人を見掛けたのは本当に偶然であった。
2年生の
そして,私が可愛がっていた彼が選手として試合に出ていることにも。
「でも、まさか彼があのツンツン女の彼氏だったなんて……どうなっているのよ!」
あの2人が原因で私のあの後は散々な人生あったが,お爺様の助力で伯母様の養子としてに引き取られたことで人生は好転すると思った。
だが,伯母様……お義母様と再婚したあの義父の影響であのツンツン女と毎日のように競わされる日々は本当にうんざりであった。
「来る日も来る日も勉強だの,お稽古だの,何でこんなことばかりしないと駄目なのよ!あいつは私のことを何だと思っているのよ!」
誠央学園に入学してからは仕事が忙しくなったのか私のことを無視し始めた。
今までの憂さ晴らしも兼ねて色々とやりたい放題をしていたが,
「何が今度同じことを起こしたらただでは済まさないよ!血の繋がりもなく婿養子で来ただけなのに!お爺様もあんな奴とお義母様を何で結婚させたのかしら」
教師達にも目を付けられて動けない,グループは
本当に色々と重なって鬱憤が溜まって行くばかりであった。
「――そうだわ。
卑劣な笑みを浮かべる私は今まで溜まっていた鬱憤を晴らすために何をして彼女を遊んであげようか楽しみながら考えた。
そんな顔を見て部屋に戻って来たスーツの男性は私のことを呆れた顔で小説に出て来る皆に嫌われた悪役令嬢のように思ってしまったようだった。
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