第26話 僕と君との契約
「――う~ん,特に問題はなさそうね。骨が折れてもいなそうよ」
「先生,ありがとうございます」
バスケ交流会が終わった後,後のことを
「ふふっ,それにしてもびっくりしたわね。
保健室の先生に言われたことが恥ずかしかったのか僕の隣で話を聞いていた
――試合が終了した後,事態が色々と動き出したのは致し方ないと思ったが,会場にいた皆は
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「「ありがとうございました!!」」
交流試合が終了して僕達はお互いに挨拶をしたら終了だと思っていた。
「こんな試合を認められるわけないだろう!!」
挨拶が終わった瞬間,休憩席にいた
「
「
「そうだ!そうだ!絶対におかしいだろう!」
彼の後ろで反論する1年生達を見て試合に出ていたバスケ部の者達は呆れた顔をして溜息を吐いていた。
「お前等な――いい加減,諦めたらどうなんだ?それに,
「それが納得いかないんだよ!
今度は怒りの矛先をバスケ部のメンバーに向け始めたのだ。
さっきから気になっているのだが,彼等は本当に何がしたいんだろうか。
観客席の方を見ると先程と違って今度は僕達の方ではなく反論している1年生達に向かって蔑む声が聞こえて来たのだ。
「――バスケ部の皆さんに誹謗中傷するのはその辺にしてもらえますか?」
「
後ろから声が聞こえて振り向くとそこには
「
「だがな,
「
「なっ!?」
リスのように頬を膨らませて怒る
「皆さん,今の試合が彼の本当の実力です。それから,いい加減見苦しい発言をするをやめてはもらえませんか?」
「何だと!?」
落ち着いた喋り方をしていたがその言葉は彼等を煽っているのと同じであった。
「周りを見てください。星稜学園の皆さんが呆れた目で皆さんを見ていますよ。それに,先程まであなた達に賛同していた観客席の1年生達も冷めた目をしています」
「何を自分の味方のように言っているんだ!大体,俺達がこうなったのは全部……」
「だから注意して怒っているんでしょう!!」
「「!?」」
「何であなた達は関係のない星稜学園の学生達に平気で誹謗中傷ができるのよ!バスケ部の彼等だってそうよ。勝てなくなったと思った途端に彼等まで悪者のように。誰のために彼等は必死になって試合をしていると思っているの!?」
「「…………」」
「言いたいことがあるなら今ここで私がはっきりと聞いてあげるわ!文句がある人から出ていらっしゃい!」
彼女がそう言っても誰一人として前には出て来なかった――いや,出ることが出来なかったという方が正しいだろう。
彼女の怒った姿――素の彼女の姿を見たのは彼等に取ってはあの事件後に全校生徒の前で
「――
「
「
「約束だと?不正をした君の約束など……」
「
審判席で見守っていた
「
「残念だけど僕ではもうどうしようもなくなってね。一度,実家に電話を掛けてみるといいよ。それから――
「――何のことでしょうか?」
ニコニコと笑う義妹を見て
その顔を見て,僕はまさかと思ってしまった。
「ユフィ,何かしたの?」
「ふふふっ,秘密です♪それよりも,そろそろ兄さんは限界なのでは?」
「限界?」
義妹の言葉に不思議そうにしながら
「これくらい大丈夫だよ。使ったのは10分程度なんだ――あれ?」
そう思っていると目の前がくらっとして片膝を付いてしまった。
「
「へ,平気だよ。でも,どうして……」
「兄さん,
言われて見れば義妹の言う通りだ。
無理をしたのかもしれないと思い立ち上がるとまだ少しだけフラフラとしていた。
「保健室に行ってくるよ。後は任せてもいいかな?」
「大丈夫ですよ。それよりも,本当に大丈夫ですか?」
「
ご心配に及びませんと言い掛けようとしたが,片膝をまた付きそうになった――と思ったが,僕は倒れることはなく誰かに支えられていたのだ。
「
「と,
隣を見ると男性恐怖症であるはずの
「嘘でしょう!?
「本当にどういうことなんだ!?彼氏だから大丈夫なのか!?」
彼女の姿を見て信じられないような目をした学生達が大勢いたが彼女は気にする素振りも見せずに
「
「ふふっ,大丈夫よ」
「任せておいて。後はこっちで全部片づけておくから」
笑顔を向けてくれた二人にお礼を言うと
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「二人とも,青春してるわねぇ」
「うぅぅ……」
事情を聞いた保健室の先生に言われて
「でも,どうして
「いえ,
「えっ!?
詳しく聞くと祖父や父親は他の男性と同様に触れられるのは駄目であるらしいが,1つ下の実の弟だけは触れられても大丈夫であるみたいなのだ。
「となると,男性が全員駄目って訳ではないってこと?」
「はい。あと幼い男の子も特に問題はないと思います。触れられたことがないので大丈夫だとはっきりと言えませんが……」
その言葉を聞いて保健室の先生は顎に手を当てて何やら思い詰めた顔をした。
「もしかしたら,
「「えっ!?」」
「まだ,はっきりと言えたわけじゃないんだけどね。あと,ごめんなさい。この後,少し用事があって保健室を外すからゆっくり休んでおいて構わないわ」
そう言って先生は立ち上がり保健室を出ようとした。
「あ!?でも,誰もいないからと言って不純異性交遊はしないようにね」
「「しませんから!!」」
笑いながら出て行く保健室の先生に揶揄われてしまい保健室に残った僕達は非常に気まずい雰囲気になってしまった。
だが,しばらくすると
「
「気にしなくていいよ。体育館の様子が気になるけど
「そうね。ところで,
「うぐっ……」
「あの時の男の子って
「え~っと――はい,そうです……」
既に僕の素顔を見て髪型もあの時と同じなのだ。
髪の色だけ違うからと言ってごまかせるわけはないだろう。
「やっぱり――じゃあ,あの時,私に痴漢したのも……」
「あ,あれは車に轢かれそうになっていたから仕方なくああするし…‥か……」
僕が慌てて弁明しようとすると彼女は何故か笑いそうになっていた。
「
「ご,ごめんなさい。あまりにも
「……怒ってないの?」
「勿論,怒っているわよ?胸を触られたんだから」
――デスヨネ……何か彼女の背後に白装束を着て般若のお面を被った銀髪の女性が小太刀を持ってこちらを見ているんですけど……見えているの,僕だけかな?
「まあ,助けてもらったのは事実だから今回は怒らないでおくわ。ただし,あの時のことは忘れること。いいかしら?」
「あの時のこと?それって,胸のかんしょ……」
「か・み・じょ・う・く・ん?お喋りな口はこれかしら?」
「ほべんばさい!づくにばすれます!(ごめんなさい!直ぐに忘れます!)」
僕の両頬を摘まみながら笑顔で問い詰める彼女に逆らってはいけないと思い,素直に忘れるとはっきりと答えた。
「まったく!
「男の大半は煩悩の塊だと思うよ。ところで,
さっきから思っていたのだが口調が少しきつめになっているような気がしたのだ。
「もうね,仮面を着けるのは止めようと思ったのよ。やっぱり,あの子達にはっきりと言わないと駄目だって改めて思ったから」
「そっか。でも,僕はそっちの
「ありがとう――それで,
真剣な目で彼女は僕を見つめた。
「今回のことで分かったと思うけど今の私には敵が多いわ。それに,実際に何とかしないといけないのは彼等ではなく
彼女から語られる話を僕も真剣に聞いた。
たしかに,彼女に敵は多い――だけど,彼女が悪いことをしているわけではない。
だからこそ,今日のこともあって彼女のことを守りたいと思ってしまった。
「それを踏まえた上でお願い――私の偽装彼氏になってくれないかしら?」
彼女は僕に右手を差し出した。
――これはおそらく契約……彼女に取っては恋愛感情ではないのだろう。
そして,その手を取れば僕のこれからの学園生活は安寧とは遥かに遠い生活を送ることになるだろう。
それでも,僕は彼女の手を取ることに迷いはなかった。
「
「本当に!?ありがとう!これからよろしくね!」
彼女は笑顔を向けて喜んでいると僕がその手を握ると思ったのだろう。
だが,その手を取ると彼女の前に跪いた僕を見て不思議そうな顔をした。
「
「偽装とはいえ恋人になるからね。だから――」
彼女の友人達から聞いていたこと――男性恐怖症であった彼女も年頃の女の子と同様に恋愛には興味津々であるらしい。
そして,意外にも彼女は少女趣味であるという。
「――
その光景はまるで1枚の絵のように彼女が憧れるシーンとそっくりであり,そんな綺麗な夕焼けに染まった保健室で僕達は
~ 第3節 誠央学園と星稜学園 完 ~
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