第1章 第1節 星稜学園での新たな出会い
第1話 誠央学園の天才少女
「おはよう~!」
「おはようー!ねぇねぇ,昨日のドラマ見た~?」
朝の教室,学生達は各々に集まり挨拶を交わしたり,昨日の夜に上映されていたドラマの話に花を咲かせていた。
そんなクラスメイトを他所に前顔まで伸びた黒い髪に眼鏡を掛けた如何にも陰キャと間違われそうな男子生徒はひっそりと読書をしていた。
「おっはよう~,
「うぐっ……おはよう,トミー」
朝っぱらからテンションが高いクラス委員長――
「
「また,忘れたの?いい加減,自分で何とかしないと小テスト苦労するよ?」
そう言いつつ,鞄からノートを取り出して手渡した。1学期の頃から友人である彼は課題を忘れて来る常習犯であったが,クラス委員長の仕事はそれなりにちゃんとしてクラスメイト達から支持されていたりする。
――が,テンションがやたら高くうるさい。
そして,一番問題なのがこれだ。
「それにしても,誠央学園の学生達が編入して来るのって今日だろう?一体,どんな可愛い子が来るんだろう!お前だって楽しみだろう?」
――彼の問題点。
それは,女の子に目がないことである。
こんな性格だが,彼は女子生徒からの受けはよく,意外にも評価もいいのだ。
しかし,今まで僕が紹介した女の子,全てに玉砕しているのだ。
女の子達に話を聞くと,彼のことが嫌いだからという理由ではなく何となく恋人というよりも友達感覚になってしまうという嬉しいような悲しい理由だったりする。
「ごめんね。僕はあんまりそういったことに興味はないんだ」
「何でだよ!!男なら可愛い女の子と薔薇色ライフを歩みたいのが本望だろう!!先輩達を見て見ろよ!!一体,何人の先輩達が薔薇色ライフを歩んでいるか……」
トミーの言いたいことは分かる。
だが,それは全て先代会長の手腕の影響だ。
現会長も先代会長の意思を継いでそのスタンスは貫くつもりだが,今はそれよりもあっちのことで忙しいはずだ。
「まあ,恋愛に興味がないわけじゃないけど僕はまだいいかな」
「そりゃあ,お前にはあんな可愛い義妹がいるからなぁ」
「あの子は関係ないでしょう?言っておくけど,トミーにも渡さないよ?」
「……
――シスコン上等!
残念だが,今まで出会った女の子の中で義妹に並ぶ女の子はいないだろう。
そう思っていたが,先日の雨の日――義妹に並びそうな女の子と出会った。
「(本部長の話では彼女は今日の編入で星稜学園に来るはずだ。護衛対象の件があるから出来れば同じクラスになってくれた方が有難いのだけど)」
だが,今になって一つ,大問題があることに気付いた。
どうやって,彼女と親しくなればいいんだろう?
「ねぇ,トミー」
「どした,
流石の親友も普段と違う自分の態度に首を傾げた。
「男の子が嫌いな女の子と仲良くするのってどうしたらいいと思う?」
「はあっ!?」
「そんなに驚かなくても……結構,真面目な話で……」
真面目な顔で言うと察してくれたのかトミーも真剣な顔を悩んでくれた。
まあ,いくら男性恐怖症だからといって行き成り刃物でザクッと刺されて,グフっと吐血をしながら
僕もまだ何処かの彗星さんのように真っ赤に染まりたくないし。
義妹なら喜んで?ヤンデレヒロインみたいなことはしてくれるかもしれないけど。
だけど,先日の僕って刺されてもおかしくないことしたよね――うん。
「すまん,
「そうしたいんだけど……」
正直,
あの子は未だに僕のことで深い傷を負っているのだ。
――その反動なのか,今では本当の恋人のように甘えてもいるが。
「まあ,間違いなくユフィちゃんならお前に彼女が出来たら卒倒すると思うぞ?」
「だろうね。案外,喜んでくれるとは思うけど」
克服した僕の体質――義妹の献身的な気遣いの御蔭か,僕は小さい時に抱えていた体質を克服をすることができた。
今にして思えば,過剰ではなかったかと思うけどそれでも感謝はしきれない。
何せ,僕に恋人が一生出来なければ責任を取って結婚するとまで言い出すほどだ。
しかも,義理の妹だからやろうと思えば結婚することができるという。
両親も反対してないから本当に困ってもいた。
「皆~,おはよう~!席に着いてね~」
「あ,しおりん先生,おはよう~」
「先生,おはようございます!今日もちっちゃくて可愛いすね!」
我等がマスコット担任教師が教室に入ってきたようだ。
「こらぁ~!ちっこいは余計だって言ってるでしょう!早く席に座る!」
「っと,我等が担任は仰せだ。皆,席に着こうぜ~!」
「「は~い!」」
頬を膨らませてムスッとした態度をしていた先生に対してトミーが手を叩いて促すとクラスメイト達は素直に席に着いた。
この学園の生徒達は子供のように燥ぎ過ぎる生徒が多いが,意外にも真面目で素直な子達が多かったりする。
先生達も面白い人や気さくな人がいるため,学生との仲も非常に良い。
流石に体育の担当の先生が元外国特殊部隊の軍人さんだったのは驚いたけど。
「皆,席に着いたかなぁ?」
教壇に置いていた踏み台に乗って先生が教室を見渡した。
「しおちゃん,見渡しても20人ぐらいしかいないよ~」
「先生~,本当に半数も誠央学園の学生達が編入して来るんですか~?」
クラスの状況を同じように見渡した男子生徒や教室内に空いている席を不思議そうに眺めていた女子生徒達は先生に尋ねた。
実は今回の編入,かなり異例な出来事であったりする。
――というのも,編入して来る生徒の数が異常であったのだ。
「
「間違いないよ?
自分は現在の生徒会長に気に入られて生徒会の仕事を手伝っていたりもする。
元々は風紀委員会に所属していた義妹やとある伝手で知り合ったのだが,今では毎日のように生徒会に入らないかと打診されるほどだ。
そんな生徒会長に相談されたことが,2学期に入って我が星稜学園に編入してくる誠央学園の生徒達のことであった。
「皆も知っていると思うけど各クラスに15名前後は来る予定だよ~。2年生は少ないけど1年生は多いから~」
もう1点,不思議なこと。
編入して来る1年生と2年生の数が圧倒的に差があり過ぎるのだ。
2年生は100名前後であるのに,1年生はその倍以上の200名以上という。
あんな事件があって生徒数が少なくなったのは当たり前だが,それでも1年生は圧倒的に数が多いような気がした。
「誠央学園の生徒達は多目的ホールで待っているはずだよ。7組に編入する子達はそろそろ教室に来るはずだけど……」
「
薄い黒髪にスーツを着こなした優しそうな雰囲気をした男性が教室の扉を開けた。
一言で言うと,超絶イケメンで教室にいた女子生徒達は黄色い声を上げた。
――だが,彼女達とは別に僕はその姿を見て顔を引き攣らせていた。
「あ,
「一緒に連れて来ていますよ。入らせていいでしょうか?」
何故か男性の先生は
星稜学園が白に青を基調とした制服に対して真逆のデザインだと思った。
「あれが誠央学園の学生達か……」
「ねぇねぇ,あの金髪の長身の男の子。物凄くカッコよくない?」
「あの金髪碧眼の女の子って誰だ!?隣のショートカットの子も可愛いけど,無茶苦茶可愛い子が多いじゃないか!」
定番であるが,目の前にズラリと並んでいる生徒達を見て皆は騒いでいた。
そんな様子を見て苦笑していた
「それじゃ,紹介するね。まず,こちらの先生が……」
「
軽く男性の先生が挨拶すると教室の皆,特に女子達は盛大な拍手をした。
「――じゃあ,次は生徒を代表して……」
今度は中心にいた女子生徒を見るとその子は皆より一歩前に出た。
真紅のような艶やかで長い髪を今日は黒いリボンでツインテールにしており,虹色に輝くアースアイの瞳の少女がふと笑みを浮かべると皆は目が離せなかった。
――あの時の女の子だ。
同じように目を離せなかった僕は彼女と同じクラスになったことを安堵した。
――だが,彼女の挨拶を聞いて,その気持ちは一瞬にして何処かへ消え去った。
「皆さん,初めまして。誠央学園からやって来ました,
おぉぉぉぉぉぉ!!!
先程よりも満面の笑みを浮かべると男性の先生の時とは反対に男子生徒達が今にも雄叫びを上げそうなぐらい喜びの声をあげた――たった一人を除いて。
「(誰ぇ!?!?)」
この日,
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