【一日ぶり】電気圧力鍋あってよかった【じっくりコトコト】

「ハロー、皆の衆。一日ぶりだな、ジョージだよ」

「――♪」

『ばんわー』

『おー、オーロラちゃんワンピース着とる』

『私服いいね』

『ジョージもおしゃれしろ』

「善処します^^」


 うんうん、オーロラの私服の掴みはばっちりだな。オーロラ自身褒められて嬉しいのか、カメラの前でスクショタイムとばかりに色々とポーズを決めている。その間に俺は一旦席から離れ台所に本日の料理が盛り付けられた皿をトレイに載せ、カメラの前に置く。

 濃厚な香りが鼻孔をくすぐる。撮影会を行っていたオーロラも、匂いに気付いたのか、瞬時に自分の料理が置かれる場所に戻ると正座で待機しだした。


「はい、今日のメニューはマンガ肉骨改めティラノ骨スープとアカオオダイショウの唐揚げだ!」

『うわ美味そう』

『食わせろ』

『マジで骨まで食うんかw』

「そりゃ美味しいって聞いたからね。安心して、雑炊分のスープは残してるから!じゃあ早速食べるか」


 スプーンで少し黄色がかった透明のスープを掬う。キラキラとスープの中でマンガ肉から染み出た脂が輝いておられる。実はこのスープを作る際、新鮮な感動を配信で視聴者にお届けするために、味見は一切控えていた。それで味は大丈夫なのかと普通はなるが、今回はしっかりと指導してもらったからね。

 さて、それでは一口――っ!?


「味の暴力!?」

「――!?」


 口に入れた途端、キャンプの時に味わったマンガ肉の旨味が口内を、脳内を襲う。旨味に殴られるとはこのことか。風味付けのために入れた生姜やニンニクの風味も確かに感じるが、決して主張が激しくない。寧ろマンガ肉の旨味を引き立てている。


『この光景、一昨日も見たんですけど』

『牛骨スープの素とか無かったっけなぁ』

『くそっ、下手に食レポされるより美味そうに食われる方が腹に来るんだよ!』


 おっと、視聴者の事を忘れていた。だが、キャンプの時にマンガ肉を食べていたおかげか、耐性が出来たみたいだ。すぐに気を取り直すことが出来た。出来たが……もう一口飲ませて。


「あ゛ー、うめぇ。そんでビールを流し込む!最高!」

『ポカリ飲む感覚でビール一気飲みはやめてもろて』

『オーロラちゃんもよー飲んどる』

『飲酒は自己責任ってのは分かるけど休肝日作りなよ?』

「大丈夫、昨日は飲んでないから。カップ麺とかにしてるから」


 なんて言ったらコメントから「意外」だの「休肝日の概念なんてあったのか」って書かれてしまった。何?俺ってそんなに飲んでる印象ある?……まぁ酒飲み配信だなんて銘打ってるんだもんな。そらそう思われるか。


「さて、今回のこちらのティラノ骨スープですが、ぶっちゃけ作り方全く分からなかったんで、配信に来てくれてた千葉毅さんに聞いたレシピで作りましたー」

『マジかw』

『美味しく出来たようで此方も嬉しいですw<千葉毅@ラウンダーズ>』

『電話で聞いたん?』

「電話というよりディスコで」


 普通のスープならまだしもマンガ肉の骨を使ったスープだ。牛骨スープと同じ様に作って美味しいものが出来るとは限らなかったからね。ダメ元でTwitterのDMで千葉毅さんにメッセージを送って作り方を聞いてみた。千葉毅さんはすぐさま返信してくれてとても丁寧に教えてくれた。いまいち文章だけでは分からなかったので、通話は可能か聞いてみたらこれも了承。寧ろいいのかと言われたが、こちらが聞く立場なので通話で直接指導して頂いた。声を聴いて分かる、この人は内も外もイケメンですわ。


「んじゃあお次はアカオオダイショウの唐揚げ。これはね、マンガで見て食べてみたかったんだよね、蛇肉の唐揚げ」

『蛇と言えば肉よりもハブ酒とか思いつくなー』

「あぁ、作ってるよアカオオダイショウ酒」

『え!?』

『!?』

『!?』

『またまたそんなご冗談を』

「ほら証拠」


 疑われるのは勿論承知の上だったので、机の下に隠していたそれを机の上に載せる。それは押し入れの肥やしになっていた梅酒瓶になんとかオーロラから死守したスピリタス残り全てとアカオオダイショウの肉や皮や鱗をぶち込んだものだ。本来のハブ酒は丸々一匹を漬け込むが、そもそも入らないからね。瓶の中に沈んだ赤々とした肉や皮……中々にグロテスクな見た目だ。BANされないよね?


『えぇ……』

『あの、その鱗とか皮とか高値で売れるんですが……』

『酒に対する執着よ』

「十分な金額で買い取ってもらったからね、お金の方は十分なのよ。それよか未知のお酒をね?ほら、オーロラも楽しみだよね?」

「――♪」

『おかしいな、エルフと妖精の可愛らしい配信のはずなのにドワーフ2人の配信じゃったか?』

『オーロラちゃんは可愛らしいがジョージは可愛いか?』

「酷い言い草ぁ!え、俺可愛くない?」

『どっちかというと美人枠では?』

『酒カス具合見てると美人感薄れる』


 いやまぁ、そこら辺は別に可愛く見られたいという訳じゃないからいいんだけどね!

 さて、アカオオダイショウ酒の紹介はこれくらいでいいでしょう。それでは唐揚げを――ん?


「待ちなさいオーロラ!俺もレモン汁は好きだが、大皿に直接かけるんじゃあない!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る