お隣の女優と嫉妬の話 二
「動画、水野さんもそのお友達の方もとても面白かったですし、ゲームの方もとても為になりました」
やがて動画を全部観ると、僕は水野さんに感想を伝えた。
動画に出ている水野さんは流石芸能人といった雰囲気で、お友達とのトークも上手だった。
改めて、すごい人とご飯を食べたり、ゲームを一緒にプレイしているのだな、と僕が思っていると、水野さんは嬉しそうに口を開いた。
「そう言って貰えると嬉しい。それに、色々な大会に出ているから、私もとても勉強になったよ」
「そんなすごい人と友達で教えて貰えるなんて羨ましいですし、流石芸能人って感じですね」
「……隼人君だったら、別に紹介しても良いよ?」
僕の言葉に水野さんは、しばし考えた素振りを見せた後にポツリと呟いた。
その言葉を聞いて僕はそれは難しいだろう、と思った。
ゲームの腕もそこそこのただの一般人であるし、そもそも実際に会う事になったとして、水野さんは僕の事をどう紹介するのだろう。
いくら友達が相手とは言え、時々夕食を共にする仲です、とは言えないだろう。
そう考えた僕は、「その友達の方もとても綺麗ですし、実際に会うと緊張してしまうので、嬉しいですけど遠慮しておきます」と、遠回しに水野さんに伝えた。
これで大丈夫だろう、と僕が思っていると、水野さんが不満そうな表情をしている事に気が付いた。
一体どうしたのだろう、と僕が不思議に思っていると、水野さんが口を開いた。
「……私、隼人君に一度も言われた事ない」
不満そうに呟いたその言葉の意味がよく分からなかった僕は、「……何をですか?」と、慎重になりながら水野さんに尋ねた。
僕の言葉に水野さんは、さらに不機嫌そうな様子になると、「綺麗だって言われた事がない」と、ぶっきらぼうに呟いた。
「確かにあの子はとても綺麗だけど、目の前にいる私が言われないのはなんだか悔しい」
その言葉を聞いて、ようやく水野さんが不機嫌になっている事を理解した僕は、「勿論、水野さんも綺麗だと思っていますよ」と、慌てながら言った。
「……なんか、取り敢えず言ったって感じ」
しかし、僕の言葉は響かなかった様で、水野さんは口を尖らせて、そう言葉を返すだけだった。
その態度にどうしたものかと思った僕は、真剣な口調で、「水野さん」と、呼び掛けた。
すると、僕の口調が変わった事に気が付いたのか、水野さんがチラッとこちらに視線を向けた。
僕は今の口調を再度意識しながら、「水野さんの事は出会った時からずっと綺麗だと思っていました。ただ、直接言うのは恥ずかしかったので、今まで言えないでいたんです」と、水野さんの目を真っ直ぐに見ながら伝えた。
すると、水野さんは引き続き表情は不満そうだったが先程よりも柔らかい口調で、「……本当?」と、呟いた。
これはチャンスだ、と思った僕は、ここぞとばかりに頷くと、「本当です。本当に綺麗だと思っていますよ」と、勢い良く言った。
すると、水野さんは嬉しそうな顔になると、「……リクエスト」と、呟いた。
その言葉の意味がよく分からなかった僕が、「なんのですか?」と、尋ねると、「……今度会う時に私のリクエストした料理を作ってくれたら許してあげる」と、呟いた。
僕は、そんな様子の水野さんを可愛いらしいな、と思うと、「分かりました。決まったら連絡下さい」と、微笑みながら水野さんに言葉を返したのだった。
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