ちぃちゃんとお蕎麦

澳 加純

第1話

ちぃちゃんは、お蕎麦が大好き。


小さなお口で、麵をちゅるちゅるちゅると啜るのがとっても上手。




麵をどんぶりからすくうのも、お子様用の先割れスプーンなんて使いません。きちんとお箸で一口分すくい上げるのです。


そこは麵食いの美学で、お箸で食べなければ美味しくないのです。




おとうさんやおかあさん、お蕎麦屋のおじさんからも


「上手にお蕎麦を食べるね」と褒められ、鼻高々。ますますお蕎麦が好きになりました。




お箸でお蕎麦をすくって、お口に持っていくと、


ちゅるるるる……と今日も吸い込みました。




それを見ていた知らないおばさんが、




「まあ、なんて上手! こんな小さい子が、こんな上手に麵を啜るのを初めて見たわ!」




とびっくりしたので、うれしくなったちぃちゃんは、もっと上手に啜ってみようと思ったのです。




いつもより多めにお箸でお蕎麦をすくって、




ちゅるるるる、ちゅる




と啜り上げました。




「本当に上手!」




と、その隣にいたお姉さんも褒めてくれたので、ちぃちゃんはもっと上手にお蕎麦を食べられるところを見せたくなりました。




お蕎麦をお箸ですくうとお口に運び、思いっきり、




ちゅるる……るるるる……る






――げほっ




勢いよく吸い込み過ぎて、お口に含んでいたお蕎麦をリバースしてしまいました。




げほっ、げほっ!




お蕎麦が気管に入ってしまったらしく、ちぃちゃんは激しくむせ続けます。


それまで褒めていた大人たちは、「あらあら」と残念顔をして視線を背けました。




「もう! 調子に乗るんだから。ゆっくりと食べなさい」




お母さんにも叱られてしまいました。




お蕎麦をカッコよく食べるのは難しい……と感じた、ちぃちゃん2歳の秋でした。




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ちぃちゃんとお蕎麦 澳 加純 @Leslie24M

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