044. 狼猫の会話
――食事を終え、その席で一息をつく三人。
「ふーっ! 美味しかったー!」
アシュリィが満足気に腹を
「こんなご馳走にありつけるなんて思わなかったよー。
ありがとーっ!」
「喜んでくれたのなら何よりだ。」
肉の最後の一口を飲み込み、返事をするラウル。
「リリナちゃん、眠いならこっちおいでー。」
横でうつらうつらと船を漕いでいるリリナを膝の上に招く。
既に
「この子の人気凄かったね。びっくりした。」
食事前に周りの獣人達に声を掛けられて
握手会が開かれていたことを思い出すアシュリィ。
当のリリナは、膝の上で落ち着く姿勢を見つけたのか既に寝息が聞こえ始めている。
「今日はまだ朝も早いから昨夜ほどではなかったがな。
リリナにとっては良い環境だと思う。」
「リリナちゃんにとってって……。
……本当に連れて行ってあげられないの……?」
寂しそうな顔をし、
膝の上で眠る少女の頭を優しく一撫でする。
「こいつはもう俺にとっても大事な存在だ……。
だからこそ危険な目に遭う可能性は極力減らしてやりたい。」
「そっか……。
……。
何人かに聞いてみたけど、皆さすがに世話をするとなると難しいみたい。
……って、そもそもこの宿といい、この豪華な食事といい、
お世話代の資金も出すって……。
もしかしてラウルお金持ち? 旅をしてるのに?」
「声を掛けてくれたことに感謝する。
資金については……まぁ、やり方は色々とあるものだ。
だが真っ当な金だ。そこは心配しなくていい。」
口を拭い、アシュリィの目を見る。
「……それでだアシュリィ、聞きたいことがあるんだが。」
「うん、なに? 改まって。」
空になった皿が従業員により片付けられていく。
「さっきの……。
俺が幼い頃の話で、集落を壊滅させたやつの話をしたな?」
「あ……うん……。実際に出会いたくはないね……。
……。
……あ~……。それで食事が終わってからって言ってたのね。」
食事の途中、ラウルが何か話しかけていたが
食事の後で。と、ひとまず後回しにされていたことを思い出す。
「まぁ……そうだな。気分が良いものではないからな。」
申し訳なさそうな顔をして呟く。
人の内臓や肉片を想起させる話題となる。
食事時にするような話ではない。
「でだ。単刀直入に聞くんだが、
もう世間では『星の道』の効果や影響を意図的に利用する技術が開発されてたりするのか?」
「え、どうだろ。
『星の道』の影響でできた特殊な鉱石の産物とかを指すのならそうかもだけど……。
……え? 『星の道』と何か関係してるの?」
「いや……可能性の域は出ないんだ。
嫌な思い出であった分、普段は思い出さないようにしていたんだが、
今考えてみれば、どれだけ考えても物理的に不可能じゃないかという
動きをしていたように思えてしまってな……。
仮に『星の道』の影響、またはそのものを自由に操作できるとしたら
あれほどの脅威であっても違和感がないというか……。」
「なるほど……。
……。
うーーーん……。」
口を結び、目を閉じ上を向いて考え事をしている。
「……可能性として、あるかないかで問われると……。」
ゆっくり目を開き、ラウルの方を向く。
「……あるね。」
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