021. 活況の町道




通行人は獣人達が闊歩し、


リリナは物珍しそうにキョロキョロと顔を動かす。




犬、猫、兎や牛と、様々な獣人達が往来しており


見たことのない獣の獣人もいる。




ラウルの服を握っているリリナを見て、


手を振ってくる獣人に照れ臭そうに手を振り返している。




 ―――




何件かの民家を通り過ぎ、広場に近付くにつれ


賑わいを見せ始めた。




談笑をしている獣人、ひと仕事を終えたであろう獣人、



そして子供達が追いかけっこをして遊んでいる。


遊んでいる子供達を羨ましそうに眺めるリリナ。




まだ人間の姿は見かけていない。




広場の手前は店が多く並んでおり、


飲食、家具や小物、薬屋といった生活に寄り沿う店から



旅人向けの衣服や装備を提供する道具屋に、


鍛冶屋、修理屋などもあるようだ。




他にも…




「遺物屋もあるのか。助かるな。」



「いぶつ屋?」



聞き慣れない言葉を聞き返す。




「あぁ、いわゆる【】だな。


 現在の技術では到底成しえない構造や機能を持ったものはそう呼ばれている。


 『星の道』が発生する付近で極稀に見つかるんだが、遺物屋ではそれを高く買い取ってくれる。」



「昨日の『星の道』にはあったの?」




顔を少し渋らせ、



「いや、あれは移動してきたからか見当たらなかったな。


 貴重な収入源ではあるから何か見つかると良かったんだが。」



「でも、ほとんど見つからないんでしょ?」



「あぁ……ならな。


 遺物も大概匂いが独特でな。俺は鼻が利くからその辺り有利なんだ。」




話しながら歩いていると、やがて円形の広場へと辿り着いた。




来た道を含めて三叉路になっており、


少し年代を感じさせるが立派な造りの建物が軒を連ねている。


その中央前方に位置しているのが宿屋で間違いないだろう。




「ね。ね。ラウル。」



ラウルの服をクイクイと引っ張る。



「あそこにいる人。


 人間? 獣人?」




広場の片隅で談笑している人物がいる。



「ほう……これはまた珍しい……。」




ぱっと見は人間のようだが、



人の耳の位置からは獣人特有の毛並みを持つ耳が生えている。


猫の尾を持ち、手袋をしているが肘から手にかけて薄っすらと体毛が見える。






「【半人ディフテシュモ】だな。本来、獣人と人間は子を成さないんだが――。



 ……あ~……いや。



 まぁ、より人間に近い、獣人の血を持った人だな。


 俺も見るのは初めてだが『星の道』の影響で生まれたんだろう。



 そういう意味では人間より珍しい存在だ。」






視線に勘付いたのか、ちらりとこちらを見るが


談笑相手に話を振られ、また笑顔で話を続け始めた。




「ひとまず宿屋で部屋を借りるとしよう。


 半人がああやって普通に道中で話をできているというのは


 この町は本当に安心できるという証拠だ。」




「お馬さんも良い人だったぁ。」




思い出すようににっこりと返事をするリリナ。


それに微笑み返すように



「そうだな。


 さぁ、行くとしよう。」






――宿屋に入っていく二人組を追う視線がそこにはあった。



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