オタク女子中学生がメイクを覚えたらちょっとだけ人生が変わった件について

毛利

第1話 メイクの覚悟

 小川鈴菜おがわすずな、14歳。中高一貫の女子校に通ういたって普通の中学2年生。普通というかまあ、オタク。


 アニメや漫画はもちろんだが、最近一番ハマっているのは歌い手だ。元々好きなボカロをカバーして歌っている歌い手が、イケボでしかも優しいしめっちゃ面白いときたらハマらない理由なんて無い。

 中でも1番の推しは、マリネくん!大人っぽい色気のある歌声で界隈内では「歌う18禁」とも呼ばれるマリネくん。どの歌みたもめちゃくちゃエロ…おっと誰か来たようだ(白目)

 そんなマリネくんの所属するグループであるSHINING☆DREAM、通称シャイドリのライブが11月に開催されることが決定した。私がマリネくんにハマってから初めて開催されるライブだ!


 SNSでは発表直後から既に大盛り上がりで、同じシャイドリのファンであるシャイリス達からDMもいくつか来ていた。


 「スズてゃんライブ行く?!?!」

 「スズちー!!ライブ申し込むの?」


 いやー、申し込みたい気持ちは山々だが、私の母親はそういうの厳s……


 「良いじゃない。一人で行けるなら良いわよ。」


 マジか!?そうと決まれば申し込むしかない。DMには申し込む、という内容の返信をしてシャイドリ公式SNSからチケットサイトのURLに飛び、抽選申し込みの手続きをする。


 そのとき、スマホの上部から通知が下りてきた。


 「やったー!!スズちに会えるてことじゃん!」


 そうか。ライブに行くということは、普段SNSで絡んでいるシャイリス仲間に会えるということだ。顔も見たことのない同世代の仲間と、私は堂々と顔を合わせられるか……?


 追い打ちをかけるようにさらに通知が届いた。


 「スズち絶対可愛いんだけど()てか参戦服どんなの着る?!スズちって量産とか着るの?!」


 何をもって彼女は「絶対可愛い」などと言っているのだ。私は正真正銘オタクであり、ブスだと言われたことはないが決して可愛くもない。

 もちろん量産服など一度も着たことはないが、このDMを送ってきている『まうリリ』が量産服を普段から着ているのは知っていた。同い年なのにすげぇや……


 部屋の隅に置いてある姿見の前に立って自分の顔を見る。何の変哲もない一重まぶた、鼻は同世代の中では大きいだろうか。唇はおそらく分厚い方だ。


 「まずいな」


 SNSで繋がっているシャイリスのみんなは、コスメを買っただの量産服を買っただのを投稿している。メイクをしたことがないのは私だけかもしれない。


 SNSを開き、先程のDMを開く。


 「着ない() でもライブとかだとメイクとかしたいしコスメ買おかな(((今更」


 そう打ち込んで、送信ボタンを押した。


 よし。覚悟は決まった。シャイドリのライブに人生初のメイクをして行く覚悟が……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る