回顧2
「おっにく~おっにく~」
熊の死体は己を解体していた。
血液が空中へ抽出され、毛皮がキレイに剥がれ、肉が刻まれ、骨が砕けて地面に撒かれる。
もちろん死体が動くはずもなく、そのすべてがルクシィの指の動きに連動している。
作業をしながら生い茂る植物を摘む女主人を、クルスアイズは棒立ちで眺めた。
「おーい、そんなとこで立ってないでおいでよ。喉乾いたでしょ? お茶しようよ」
「……えっ。あっ、あぁ」
まるで木々がそのまま組み合わさったような家。
または、とてつもない大樹の幹をくり抜いたような住処。
緑の世界に同化した魔女の家は、遠目からは家とはわからなかった。
つい数分前のやり取りですら夢のような感じる心地のまま、クルスアイズは歩む。
手招きする女が、魔女であると知ったうえで。
◇
十分前――
森の中でルクシィと衝撃的な邂逅を果たしたクルスアイズは、突然ぶちまけられた大量の水で顔と口を洗われた。そしてルクシィが指を鳴らすと、髪や肌が一瞬で乾いた。
「あんた、迷子? 家に帰りたいなら送ってあげるけど」
「まっ、迷子なんかじゃない! 俺は自由を求めてここに来たんだ!」
つまらない意地を張っていることを自覚しつつ、内心でクルスアイズは混乱していた。
どうやって熊を退治したのか。いまの水はどこから出てきたのか。濡れた髪を乾かした奇妙な温かさの正体は。
「自由ねぇ……。なら、お好きにどうぞ。ああでも、ここで私と会ったことは誰にも言わないでね。あー……やっぱり記憶消し――」
「ま、まってくれ!」
命を救ってくれた女性の言葉を遮り、クルスアイズは手の平を突き出した。
熊との遭遇によるものとは別種の緊張感。より正確な名前がわからないまま、しかし彼は本能的に、直観的に動いた。
「君は、何者だ。なぜこんなところにいる」
「えー……知りたい?」
風が唸り、枝葉が囁く。知りたいの。気になるの。
揺れ動く木々のように上半身をしならせる女性の笑みに影が落ちたような気がした。頭上を覆う大自然の天井が落とすものとは、質の異なる暗闇が。
「普通の人なら今のでびっくりして、私から逃げるはずなんだけどね。あんた変わってるね」
「……君は、人間なのか?」
「…………」
はぐらかそうとする相手に質問を重ねてしまうのは、若者の特権だ。
それが通じるのは人間に限るが。
「違うよって言ったら?」
「っ……!」
笑みを笑みのままに、女性は答えた。
知られたくない秘密を知られてしまった、物語の魔女のような、試すような笑み。
クルスアイズは、心臓が肋骨を打ち付けたかのような高鳴りを覚えた。
その高鳴りは腕にまで影響を及ぼし。
「そうなのか!? な、なら」
「えっ、あ、ちょ」
「人間じゃないならどうして俺と同じ姿をしているんだ? それにどうして俺と普通に喋れるんだ? というか」
掴みかかる勢いで迫るクルスアイズに両手が突き出される。
「あーちょっと。待って。止まって。落ち着いて」
相手の反応が予想の斜め上を超えたのか、女性の方こそ軽く身を引いていた。
心も引いていた。
あーやらうーやら言いながら腕を組み、やがて、
「……じゃあウチで喋る?」
「ぜひ」
こっちだよと誘われるまま、クルスアイズはその青い背中を追った。
すぐ傍に熊の死体を宙に浮かせる、青い髪の女性を。
「なあ、君、名前は?」
もしかすると、殺されるかもしれない。
しかしそれなら、なぜ自分を助け、熊を殺したのか。
そもそもどうやって熊を浮かせているのか。
「ルクシィだよ。んー、あんたら人間の言葉でなら……」
打算もなにもない、純粋な興味。
毎年同じことの繰り返しで見飽きた日常のすぐ傍に、まったくの未知が平然と暮らしていた。その事実に刺激されるまま、促されるまま、ついていく。
「魔女っていえば、わかるかな?」
クルスアイズは生涯、彼女のことを忘れないだろうと思った。
呑気なまま。
◇
「嘘だろ……俺の先祖はそんな理由でこんな田舎に飛ばされたのか!?」
「何回言えばわかんのよ。私はぜんぶこの目で見てきたって言ってんでしょ」
「いや、君を疑ってるわけじゃなくて……先祖を殴りたくなってきた」
集まった当主たちの中で服のセンスが最も低かった。
自分の先祖がそのような理由でここヴァントでも特に端っこの地域を与えられたという話を初めて知ったクルスアイズはなんともいえない表情で天井を仰いだ。
「でもここで暮らしてる人たち、けっこう楽しそうじゃん」
「住めば都、なんて言葉はあるが……俺はもっと、王都の近くで暮らしたかったよ」
「えー、そう? 人が多いとこってごみごみしててやだなー。あとあれ、煙突から出る煙が臭くてやんなっちゃうよ。この辺にはアレがないからいいよね」
「工場は技術の結晶だ。あれを建設できるのは王族に認められた貴族の領地だけ。……はぁ。畑ばかりのここは見放されてるんだよ」
「ふぅん。……お家のごたごたが嫌だーって言ってた割にはよく考えてんじゃん」
「単なる不満だ。俺がここで愚痴を垂れてもなにもかわらない。それが余計に腹立たしい」
「そうなんだ? ちなみに、私に拾われなかったらこれからどうするつもりだったの?」
「別に……。せっかくだから、王都に行ってみようと考えてはいたが……」
「あのままだと隣の国に行ってたよ?」
「……なんだと?」
ルクシィが指を弾く。するとテーブルの上で煙が躍り出し、いくつもの起伏を為す。
この辺の立体地図だよ、と説明されるも、クルスアイズにはさっぱりだった。
まるで鳥になって空から国を俯瞰しているような光景だ。けれども地理が苦手なクルスアイズにはなに一つ読み取ることができない。
「あんたと私が出会ったのがこの辺。で、あんたはこっちに向けて歩いてた。ほら、どう? どんどんあんたの大好きな王都から遠ざかってるのわかるでしょ?」
「……自分がここまで方向音痴だとはな」
王都に行ったことは何度もある。国の祝賀会などのパーティーに参加するのは貴族の義務である。だが移動はすべて馬車で、道中の景色を気にしたことはない。
クルスアイズは気恥ずかしさを紛らわすようにティーカップを仰ぐが、中は空。
「美味しいでしょ?」
「……初めて飲む味だ」
空中に浮かぶポットが気を利かせたようにお茶を注ぐ。ついさっき魔女が摘んだハーブは良い香りで、普段口にする紅茶よりも品が良い。
そのハーブの名前をクルスアイズは知らなかった。
「あんたみたいに家出する人は結構見てきたけど、大抵は親に見つかるか、どこぞの悪い人に捕まって売られたり殺されたりするかのどっちかだよ?」
「俺はそう簡単に負けたりしない」
「まあ熊よりは勝ち目ありそうだね」
魔女が指先を空中に向けたまま動かす。地図は霧散し、煙は円状となって鏡となった。
鏡の中は動いており、
「俺の家……」
クルスアイズを探しているのか、屋敷の周辺で使用人たちが声を張り上げていた。
「で、どうする? 帰るなら送ってあげるよ。私と会った記憶は全部消して、町のそばに転送することもできるけど」
「……まだ、帰りたくない」
「ふーん。じゃあどうしよっかな。可愛くて優しい魔女がここに住んでるって言いふらされたら困るんだけどなー」
「…………」
このテーブルに座ってからどれほどの時間が経ったのか。
クルスアイズにとって時間とは、時計が指し示すもので、それは常に鈍足だった。
速足で過ぎ去っていった時間の中で、悠久を生きる魔女はその欠片を語ってくれた。
クルスアイズはなにをどういうべきか咄嗟に思いつかず、テーブルを凝視したまま押し黙ってしまう。催促はいっさいやってこない。
鳥の鳴き声がどこからか聞こえる。まだ夜でもないのに虫が鳴いていた。木々や植物が放つ、生い茂った香りが濃い。ここは一切の束縛が存在しない。
「……俺は……」
屋敷に戻るという選択肢が芽生えることはなかった。
むしろ逆に。
止まり木を見つけた気分でさえあった。
「君のことをもっと知りたい」
「ふぅん?」
「迷惑でなければ……数日でいい、ここにいさせてくれないか」
青く透き通った瞳から、目を逸らすことができなくなっていた。
◇
屋敷での暮らしは規則正しさに満ち満ちていた。決まった時刻にメイドが起こしに来て、習い事が始まるまでに食事を済ませなければならない。解放されるのは夜で、やりたいことがあっても、次の日の予定が脳みそを駆けずり回って楽しめやしない。
魔女の生活は自然と共にあった。秒針が時間の流れを刻むことはない。朝日によって柔らかく眠気が剥がれ落ちる。その日にしたいことは朝食を食べながら決める。ほとんどがお茶と昼寝だ。その日の食料を確保さえすれば、残り時間はすべて自由だった。
太陽と月の交代を七度見届け、規則正しさに塗り固まっていた体はほぐれた。
「なんだかんだで一週間くらい経ったんじゃない?」
「う……迷惑か?」
「別に~? あんたみたいな人間は初めてってだけだよ」
樹海の一角、陽の光が降り注ぐ開けた場所で、寝転びながらルクシィは語る。
クルスアイズは不思議な感覚に包まれながら日を浴びていた。なにもせず空を見上げることなど、彼にとって無意味なものでしかない。
そうだったのに。
隣にルクシィがいるだけで、自分の一挙手一投足のすべてに意味が宿るような気さえした。
「私が魔法を使えるのは魔素のおかげよ」
「魔素?」
「そうそう。人間にとっての酸素みたいな。空気には魔素が散らばってて、私はそれを取り込んで、体の中で魔力に変換するの。で、その魔力を使って頭の中のイメージを具現化するの」
こんな風にね、と言うや否や、ルクシィの体が浮かび上がった。
「魔力ってのはいくらでも作れるのか?」
「魔女の体は特別だからね。ほんの少しの魔素で大量の魔力が練れるし、こういう人の少ない自然にいればまず魔力が尽きることはないよ。太陽の光と月の明かりがね、魔素を潤沢にしてくれるんだ」
ああでも、とルクシィは言う。
「眷属は魔力切れしやすいかも」
「眷属?」
頭上を泳ぐように揺蕩うルクシィは、全体を構成する青色も相まって、本物の人魚のように見える。
クルスアイズは首を動かしながらその姿を視野に入れ続ける。
「魔女の血を飲んだ人間はね、魔女の眷属になるのよ。疑似家族っていえばいいのかな」
「まるでヴァンパイアだな」
「あはっ。吸血鬼みたいに怖くはないよ。無理やりにはしないから」
「俺にも魔法が使えるようになるのか?」
「そうだよ。なに、使いたいの?」
「…………」
クルスアイズが魔法の利便性を理解するのに時間はかからなかった。
手をかざすだけで燃え上がる炎。翼を得たような飛行を可能とし、飲み水を得るのに井戸を使う必要もない。
さらにルクシィは博識だった。踏みしめてきた歴史の道のりが長く、クルスアイズの知識欲を洪水のように満たしてくれる。
居心地の良さ。
貴族という階級がもたらす利便性にはない、どこでも無条件に手足を伸ばせる特権。
クルスアイズは、ずっとここにいたいとさえ思っていた。
より正確に言うならば。
目の前を漂う青を、ずっと見続けていたいと。
「言っとくけど、眷属は主に逆らえなくなるよ? 私が死ねって言ったら、あんた死ぬよ」
「物騒だな」
「でしょー。だからはい、今のはナシ」
「……もし眷属になったら、ずっとここにいられるのか?」
「まあそうだけど。……でもほら、眷属になったら人間じゃなくなるよ。二度と元の生活に戻れなくなるよ」
「俺はその生活が嫌で飛び出したわけだが」
「あー……」
ルクシィは地面に座ると、髪の先端を指でくるくるしながら空を仰いだ。
答えを探すように言い淀む横顔が、クルスアイズの不安を煽る。
「……俺は、相応しくないか?」
「いや、違う違う! そうじゃなくてさ…………。人間の眷属なんていたことないし、よくわかんなくて。例えばほら、喧嘩してつい死んじゃえって命令しちゃうかも」
「そりゃたまったもんじゃないな」
「それに、さ……言ったでしょ。私は色んな人間と出会っては、魔女って伝えたら怖がられて。あんたと一緒にいられるのかって考えると、自信ないからさ……」
「…………」
慰めや励ましの類が出ることはなかった。
「……はははっ」
代わりに空気を読まない笑い声が自然と喉から零れた。
「ちょっと、そこで普通笑う!?」
「いや、悪い。馬鹿にしてるわけじゃないんだ。意外だったからさ」
人間の寿命とは比較しようもない年月を歩んできた魔女にも。
魔法で自由気ままに生きる魔女にも、不安を覚えることがある。
自分がまだまだルクシィのことを知らないことを、知る。
「なら、もしもの時は殺してくれ」
「は?」
「あの時、君に助けてもらえなかったら俺は熊に食い殺されていた。だから俺の命は君の物と言ってもいい。だから、殺したくなったら一思いに殺してくれ」
「……あんたって、やっぱり頭のネジ抜けてない?」
「かもな。でもこんな自由を味わった以上、もうあの屋敷に戻るつもりは微塵もないんだ」
ルクシィの手に、手を重ねる。
初めて会った時のように問いを浴びせかけることはなかった。
湖の底を切り取って宝石にした輝きを、クルスアイズはじっと見つめる。
ルクシィもなにもいわず、けれども逃げるように上半身を軽く引いた。
その頬は食べごろの林檎のように赤い。
「……私、もうずっと独りで生きてきたからさ。共同生活なんてよくわかんないんだよね」
「君の暮らしぶりがいい加減なことはよくわかったよ」
「私の年齢聞いたらびっくりするよ?」
「だろうね。でもお互いの見た目はぜんぜん変わらないだろ」
「私なんかのどこがいいの?」
「……一番はやっぱり見た目だな」
「すけべ」
「男ってのは綺麗な人が好きなんだ。神様だってどうせそうだったんだろ?」
「へんたい」
「でも君の隣が居心地良い理由はそれだけじゃない」
「ふーん」
真っ赤に色づいたトマトをぐつぐつ煮込んだような顔色のまま、じっとりとした視線を投げつけるルクシィ。
「俺は君の笑顔が好きなんだ」
「…………」
彼女はふいっと顔を逸らした。
クルスアイズから見える横顔のほとんどが髪に隠れる。
「……ほんとにいいの?」
「ああ」
観念したように、ルクシィは彼を見据えた。
眼窩は決壊しそうなほどに潤んでいる。
「俺を、君の眷属にしてほしい」
ルクシィはくすぐったそうに首筋を掻いている。
まるで誰かの視線を感じるように。鳥や植物に祝福でもされているかのように。
「……じゃあ、目瞑って」
わかった、と応えてクルスアイズは瞼を降ろした。
これでずっと、ルクシィの傍にいられる。
次に彼が感じたのは、その高揚感を裏切る、まだ慣れることのない、肋骨が優しくせりあがる緊張感だった。
「え、あ!? おい、なんだこれは!」
「あはは。大丈夫だから。ただ血を飲ませるだけじゃないの。ちょっとした手間が必要なのよ、儀式にはね」
何度もそうしてもらったように、クルスアイズは手を繋いだまま宙を飛んだ。風と一体になったように。そのまま二人で一緒に家に帰る。
二人の家に。
◇
「はい、この中に立って」
家に着くなり、ルクシィは地面に奇妙な円陣を描いた。クルスアイズは一度も見たことがない。言われるまま踏み入るも、特に変化はなかった。
「魔女の血はね、刺激が強すぎるのよ。そのまま飲んだら死ぬぐらいにね」
「おいおい」
「大丈夫、足元の魔法陣を見て。この中で血を飲めば安全よ。魔法陣はね、内側に立つ命を守る役割をするの。あっ、血を飲んでもすぐに中から出ちゃ駄目だからね。私がいいって言うまでそこにいて」
「わかった」
ルクシィはなんてことないように指先を風で切る。傷口から鮮血が溢れる。
「えー、こほん。……汝、我が眷属になる意志に揺らぎはあらんか?」
「もちろんだ」
「さすればわが命の片鱗をその身に受け入れたまえ」
眼前に突き出された指を遠慮なく咥えると、クルスアイズの咥内に錆の味が滲んだ。魔女も人間も、血の味は一緒だな。赤子のようにちゅうちゅう吸いながら、内心でそう思う。呑気な思考に耽られたのは数秒だった。途端に体が熱くなり、口を離す。
しかし直前に告げられた警告を思い出し、悶えながらもその場に踏みとどまった。
酩酊に似た感覚不全の中、地面につける足の感覚だけを必死に掴み続けているうちに、熱はゆっくりと引いていった。
「はい、もう大丈夫だよ」
「これで、俺は君の眷属に……?」
「えぇ。あっ、すぐに魔法を使おうとはしないでよ。魔素の取り込み方とかはこれから教えるから」
膝をついたまま立ち上がれないクルスアイズの腕をルクシィが引き上げる。
使い方を教わるのは明日からになりそうだ。
「今日はゆっくりしましょ。……一応私がご主人様になったんだし、こういう時ってなにかご褒美でも上げた方がいいのかしら?」
「俺は犬じゃないぞ……」
「眷属にくせに生意気ね」
褒美。
口の中は甘ったるい血の味と、目の前にいる魔女の指の感触が生々しく残るクルスアイズは、ずっと前から胸の中で燃えていた衝動の火に、石炭を投じていた。
例えばそれは寝顔を眺めたり、水浴びに向かう後ろ姿を見送ったりする中でゆっくりと燃え広がる、眩しく、公にしがたい熱。
「……じゃあ、キスがしたい」
「はい?」
「森をさまよってた時、死ぬ前にキスしたかったって考えてたんだ。なぜかいまそれを思い出した」
「ちょっと、キスしたら満足して死んじゃったりしないでしょうね」
「そんなわけ……」
笑いながら答えようとして、ルクシィの腕をゆるく引きながら黙る。
さっきの味の続きをねだるように、瞳の奥に希う。
「……なら、生意気な眷属を繋ぎ止めておく『鎖』が必要なんじゃないか?」
「……ほんと、眷属のくせに生意気」
彼女もそんな予感を抱いていたのか、滑らかに背伸びをした。背中に腕を回してクルスアイズはまた、知る。自分と彼女は意外と身長差があること。ドレスの奥は華奢で、柔らかくて、一度抱きしめると中々手が離せないこと。絡みつかない髪の艶。唇の柔らかさ。
「……これで繋がった?」唇と唇のわずかな隙間からそう訊かれた。
「これじゃあすぐ取れそうだな」その隙間を埋めながらそう答えた。
「ほんと、生意気」
今日はもうするべきことを終えた。
二人は白紙の予定において、ただ一つの行為に熱を注いだ。
太陽が眠り、月が起きて、また太陽が目覚めるまで――
それでもなお、彼は『鎖』を求めてやまなかった。
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