盗撮jkアイアンボトム06
「オレは金を稼いだだけなんだよ! 何が悪いんだよ! 早くほどけよこれ! お前ら全員殺す! うちの組織舐めんじゃねえぞ!」
ボーリング場に最初の依頼人であるグループのガールズ、美術大学のお姉さんを呼び出す前に女子高校生のガキを拉致した。写真と少しの情報があれば道を歩いているところを捕まえることことなど日常風景に馴染んでしまうに違いない。幾ら最強の超能力者を切り札に持っていてもこれはできないし、たぶんうちのグループが攫うときより百倍は怖いと思う。
彼女の仲間がたくさん運ばれ、よく見えるところに転がされた。
「ふざけんなよ、てめえら! オレに何かあったら海外のボスが黙ってないぞ!」
「そうか。海外か。いいことを聞いた。しかしそれにしても元気なお嬢さんだな。最初に俺の家に来て会ったときはあんなに被害者ヅラしてしおらしかったのに」
彼女は俺のことを睨んでいた。すべてを壊したことに対する憎しみだ。今までのすべてを奪い去ったことへの憎しみだ。続けてきた復讐を台無しにされたことへの憎しみだ。それでいい。すぐにそれすら失う事になる。
「呼んでくれ」
すまないな。ただ椅子に縛り付けて眺める性癖はないんだ。手を出すにはまだ幼い。だからといってカツ丼片手にお話を聞くだけで済ませるほど優しくもない。悪いな。俺は悪人じゃないけど善人でもないんだよ。
彼女のお仲間が何人か追いかけてきたらしいが、黒い人たちが木っ端微塵に沈黙させてやったらしい。あってるか、この表現。
「ふざけんなよ! このクソ野郎」
なんて言葉を。女の子が口にするような言葉じゃないぜ。まあ、心配するな。おもてなしの準備はばっちりしてあるから。とっておきの切り札が待っているから楽しみにしておけ。それに仮にイマドキの女子高校生とお話するなんてことになったら、それこそ何を話したらいいかおじさんわからないよ。
だから俺は面白い物語の始まりの文章を読み上げるように、答えを求めない質問をした。
「実は世の中には超能力者が実在する。知っていたか? まあ、信じられないだろうけど」
うちのグループにはキエン・マツシマという炎を操る超能力者が役活躍しているんだが、実は彼には妹さんがいる。その妹さんももちろん超能力者。彼女は簡単に言うとエスパー。エスパー超能力者。詳しいことは分からないけど、俺が聞いた話だと幽霊や怨霊の類を駆使して人間の精神を自由に操れるらしい。精神に眠る本人は言いたくなくても言えないことを、こちら側が聞きたいように聞き出したり、精神を壊滅、ぐちゃぐちゃにして人間に戻れなくすることもやろうとすればできるという。おそろし。能力の使用には代償がつきものなので頻繁には使えないと言うが、今回は快く協力してくれた。まあ、成哉の一声には逆らえないからな。それこそ超能力者をもってしても謀反も反逆も無理だろうよ。
盗撮師の彼女がその減らず口を減らし、自供始めるまでに三十分もかからなかった。最近のガキは生ぬるいなと思ったが、相手が超能力者じゃあ大の大人でも秒殺かもしれないと思った。これじゃあ恐いだけのヤクザはいらなかったかもしれない。彼らとしてはけじめをしっかりとつけなければいけないという責務があるかもしれないから嫌でも同席して手柄が欲しいだろうけど。
彼女が盗撮されたのは小学校三年生の時、学校の更衣室に仕掛けられていたカメラでだという。犯人は女性教師。信じていたがゆえにその驚きは大きく、最初は何のことだかまったくわからなかったという。中学に入るとその意味も理由もわかるようになり、自分を恥じた。真似をするように、同じように無知な同級生を嘲笑うために同じクラスの女子の下着姿や裸を盗撮した。高校生になるまではそれでお金を稼ぐという考えがそもそもなく、そのためにやっているのではなかったからそのつもりもなかった。盗撮画像をネットにばらまいていると多くの知らない人から連絡が来た。そしてある日大金が振り込まれた。ものすごいびっくりして怖くなったという。しばらく活動をやめていたが、ある日あっという間に悪い人に囲まれて連れて行かれたという。怖くてずっと泣いていたが、その予想に反してとても優しくされたという。そしてその手にしている画像と動画がいかに貴重なものでお金になるかを教えられた。頷く以外の選択肢がなかった当時はそのまま命じられままに盗撮を繰り返した。そして高校二年生のときにカメラが見つかった。先生たちの調べでは犯人の特定まで至っていなかったようなので、すぐに組織に助けを求めた。その翌日に告発した教師が学校を辞めた。生徒への追及がなくなった。彼女はこの件を境に恐いものはなくなったという。恐くて悪い大人たちは自分のために使えると、そう判断したのだ。それからあっという間に組織で重宝されて使われる側から使われるようになった。今年が高校生三年目。卒業する来年からは本格的に仕事をしていくつもりだったらしい。まあ、今日俺たちに捕まっちゃったわけだけども。組織解体、壊滅。解散だけど。あと本当のアジトの場所もあっさり話した。どうも。
「いい話が聞けた。ありがとうよ」
無論、どんないきさつがあっても、環境や背景があってもどうしようもなく犯罪者であることに変わりはない。俺は警察官でも裁判官でもないから処罰したり裁いたりできないし、正義を振りかざすつもりもない。そんなことのために捕まえたわけじゃない。もっと大事なことがある。
「もうひとつ教えてくれ。これは答えを拒否してもいい。どうして俺に接触してきたんだ。まさか、自分たちの悪事を暴いてほしかったわけじゃないだろ?」
ひとつ、返事をした。
「そうか。ガキのグループに因縁つけて潰したかったのか。俺を選んだのは間違いだったな。厳密には俺はあのグループのメンバーではない。業務委託だ。仲間ではあるが組織の話とは無関係の管轄外だったりする」
「…………」
やはりあのガールズに近づいたのは俺を経由して成哉に近づくためだったか。エスパーに頼んで精神を八割ぐらい戻してもらった。タカのお友達も精神崩壊した犯人を相手にしても楽しくないだろうからね。
「じゃあ、これから本当に悪い大人たちが、本当に悪い人間というのを教えてくれるら。超能力者の精神攻撃よりも恐いから。悪人を気取った生温い連中とはわけが違うから覚悟しておけよ。そうだな、まあ、本物を知るいい機会になると思うぜ」
既に泣きそうであったが、仮にも悪の組織にいて悪いことをしていたんだ。きっとどこかでヤクザの掟みたいなもの聞いたことあるんじゃないかな。それなら理解が早いだろうからすぐに終わるよ。
ちなみに、俺も一回それを受けたことがあるんだ。タカが組に入ったか入らなかったぐらいの頃だったかな。江戸の頃から受け継がれた知識と伝統。人間の仕組みを調べ尽くして医学者よりも理解している人間の約束。自分たちの掟と規則にを元に不埒者を成敗する。いや本当に、殴る蹴るがいかに野蛮で雑な罰だと言うことがわかるよ。もっと賢く効率よく追い込まれるから感心するぜ。超能力者もびっくりだろうよ。
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