盗撮jkアイアンボトム02
爆弾は無事に解除され、爆発は回避された。ボーイズ曰く、素人の出作りだったからおもちゃも同然だったらしい。ほんと、成哉のグループには優秀な人材が揃ってる。できないことは何もないんじゃないかな。トラブル解決も俺より優秀なやつがいるんじゃないかと本気で思った。
成哉には「うちのメンバーを勝手に使ったな。人件費を請求する」と言われたが土下座することでそれを回避した。
タカにはめちゃくちゃ感謝された。ついでに知り合いの弟はけじめと落とし前を付けさせたと報告を言った。子供みたいな青年には厳しいんじゃないかと進言したら、俺たちのプライドが許さない、子供でも容赦しないと言った。おそろし。
「そういえば、創。お前盗撮グループ追いかけてるんだってな」
タカはついでのように話を続けた。
「? 俺、そんなこと言ったっけ? どっかで聞いた?」
「ガキの情報網。成哉に関する情報は嫌でも耳に入る。ガキネットワークに掛かればお前の考えも生活も二十四時間まるわかりだ」
え、それは困る。自分の家なのに人目を気にしながら自慰しなきゃじゃない。
「ガールズが贔屓している女子高校生が被害に遭ったと聞いた。お前が依頼を受けたんだろ。何人かに掲示板使って情報を集めていると聞いた」
「それは筒抜けだわ。俺の行動も作戦も、これからは見透かされていることを前提として動かないといけないな。味方に周知徹底されているのは話が早くて助かるかもしれないけど」
「それで、どうするつもりだ」
「そうだな。客引きはどこに出るかわからないから情報が多くても捕まえられないと思う。その盗撮占い師はどこかのビルにどっしり構えて営業を続けているだろうから、そこを特定して証拠を押さえたいかな。カメラがたくさんあると思うよ。脅迫と巻き上げ、恐怖の植え付けに関してはプロのお仲間がいるから今回もお願いするよ」
「それは俺たちのことか?」
「まさかまさか。本業様に頼むことなんて、俺が生きているうちには絶対ない。何かしらのいきさつで一緒に仕事をすることはあるかもしれないけど」
「創、よく知っているとは思うけど政令が改正されて俺たちはショバまで取り上げられちまった。余計なことをして組を潰したくはないからほとんど期待できなくなった。表はスルー、アダルトは三割、裏店も半分ぐらいしか取れてない。昔と違って誰もが法律を逆手にヤクザに強気で強く出られるんだ。まったく、威厳も何もありゃしない。妖刀使いでも雇わないと駄目かもな。作られたときから息のかかっている店は別だが、こっちが強くでれないことをいいことに商売を好き勝手にやられてばかり。癪だな。あの店を潰すんなら多少手を貸してもいい。安心しろ、お前に貸しを作るようなことはしないよ」
「へえ、どうしてそんなに。不用意に協力的だな。まあ、最後の切り札ぐらいに考えておくよ。俺がひとりで潰せたらそれが一番だろ」
「成哉は金を巻き上げるつもりなのか」
「いや、今回はまだ成哉は関わっていない。依頼を受けたのは俺ひとりだ。オーガナイザーはいつもボランティアだからな。たまにはお金を稼いでもいいだろ。どうせ取るのは悪いことをして稼いだお金なんだから」
「それは俺たちに対する皮肉か?」
「いや、それは覚悟が違う。悪事を正当化するつもりがないことは前提として、悪に生きることを決めてきた人間とバイト感覚で悪に手を出した人間とじゃ天と地の差がある。紛い物の悪人なんて正義を振りかざす必要すらないぜ」
俺たちはとりあえず情報を共有することで合意して電話を切った。いつも最強のグループを仲間にして戦ってきたので今回もそのつもりだったが、どうしてか裏側世界最強のグループがバックにつくかもしれないという。これを機会に俺に対して理由とか因縁をつけて犯罪に巻き込む可能性があるのは面倒だなと思ったが、そもそも友人がそちら側にいるのでエンもユカリも大いにあり、運命の黒い糸で最初から繋がっていたことを思い出した。俺に逃げ場は最初からない。立ち向かう必要もないけどな。
※ ※ ※
それから少し日が過ぎた。街をなんとなく歩いていると路上で占いをやっている人を見かけた。ちょうど俺の生活における最近のトレンド一位だったので「すみません、お願いできますか」と声をかけた。普通の身なりの若い女性は快く笑顔で受け入れてくれた。小さな丸椅子に座る。占い師と向かい合うが、しかし水晶も木のじゃらじゃらも無い。どうするんだろうか。
「お名前をお聞きしても良いですか」
「本名じゃないとダメ?」
「いえ、何でも構いません」
「じゃあ、七草で」
「はい、七草さん。生年月日を教えてもらえますか。年はごまかしてもいいですけど、月日はきちんとお願いします。占いができません」
「ええと、千九百九十一年生まれ、誕生日は六月三十日。蟹座だ」
「ありがとうございます。ちなみに男性で間違いないですか? 最近は違う方もいらっしゃるので」
「ああ、男です」
「ありがとうございます。では占います」
「え? もうわかるの」
「ふふ。意外と色んなところを見ているのでわかることは多いんですよ。お洋服とか声とか、お肌に身長手足の長さに誕生日。他にもありますけど、秘密。少しメモをしてまとめてからお話しますね。少しお時間をください」
「ええ、もちろん」
しばらく何かを書いて、話すことをまとめているようであった。この短時間でどこで何をしているかもわからないような人間を観察し、的確に見抜いて、現在と未来を教える。なるほど、これはハマる人はハマるかもしれない。あっという間に、騙せるように信じ切ってしまう人は信じてしまう。それが多感な高校生となれば、なおさらだと想像できた。俺も成哉の下で仕事をしているから人を見る目はあるつもりでいたけど、占い師という仕事に対しては漠然とした押し付けのイメージがあり、それを信じていた自分を愚かだと思った。彼女からノウハウとかの話を聞くこができればとても勉強になるだろうと思った。軽い気持ちで見ていた占い。侮れないな。
「はい、できました。では占いの結果を教えますね」
「はい、お願いします」
「まず七草さんの今のお話ですね。今年もいくつか仕事が断続的にやってきます。とても困難なものばかりですが、仲間と一緒なら乗り越えられます。大きく分けて白と黒の星があるのですが、七草さんは黒の星にいい星がでています。星の色はそれぞれ二十六色あるのですが、七草さんは黒星の青い星なので足元にワンポイントあるといいですね。青いスニーカーとか黒い革靴とかいいかもしれません。次に未来のお話です。未来と言ってもニ、三年後のお話ですが。近い未来、七草さんは優勝します」
「優勝?」
「それは未来をお楽しみに。とても良いことだと思いますよ。あまり詳しく話せないのがもどかしいですが。未来のことをたくさん話しすぎてしまうと未来が変わっていい未来がこなくなってしまう。未来の情報を知ったことで今という時間そのものが大きく変わってしまい、今を生きている時間が本来の未来の世界から外れてしまうんです。だから教えられるのはここまで。すみません、もったいぶるような言い方で。それと、これは今月の話ですが、必ず愛を言葉やハグで伝えてください。友達でも家族でも仲間でも恋人でも構いません。それが今年一年の幸運に繋がります」
「愛の言葉? ハグ?」
「はい。愛を伝えてください」
俺にはどうしてそれが一年の幸せに繋がるのかわからなかったが、なにか伏線になるのかもしれない。物語は伏線を敷いて回収するのが仕事だからな。前振りとオチ。起承転結よく楽しく作っていこう。
「なるほど、面白いですね。ちなみに占い師さん、失礼ですがお名前は。その、占い師としてのお名前は」
「私はこの街の生まれなのです。なので『すすきのノノ』と言います」
名刺をもらった。ふむ、なるほど。
「ありがとう。いくら払えばいい」
「千円です」
「え? それだけ? そんな安いの?」
「ふふ。ええ、千円です」
「実は俺人生で初めて占ってもらったんだよ。知り合いに好きな奴がいてな。そんなに言うならものは試しに、て思っていたらたまたま見かけて。けっこう面白かった」
「それはよかったです」
「いつもここにいるのか?」
「いえ、外に出るのは週に一度で不定日です。他の日は名刺の住所のところで占いのお仕事をしています」
「ふーん」
俺は千円を財布から取り出し、丁寧に渡した。こうして俺は簡単に敵のアジトを見つけることに成功した。盗撮師が女性だったというのは、よくある話だ。女風呂も更衣室も女性なら容易く入れて取り放題。ネットで売れば大儲け。男が下心で学校とかでやるのは素人。すぐにみつかって捕まる。そんなことをするような人には見えない人が一番そういうことをするもの。本人は指示に従っているだけでそんなつもりはないなんて、三十年前でもあった話だ。闇バイトとか、そんな名前が今はつけられているけど。目に見えなかったものが分かりやすく見えただけで、それまで誰も覗こうとしなかっただけ。まったく、世の中はくだらないね。自分の都合の良いようにしかモノゴトを考えられないんだから。
俺もこの街でずっと犯罪者やら不良やら化け物やらを追いかけてきた。だからよくわかる。犯罪に加担している人間のほとんどは待ち行くどこにでもいる人と変わらなくて、ガタイがいいとか、黒服にサングラスとか、マスクに黒サングラスでナイフとか、そんなわかりやすい人はいない。泥棒も詐欺師も暴力団もみんなこの街に住んでいる人間だ。その正体が分かったときに初めて人間はその人にを恐れ始め、怯える。相手を見抜いてやろうなんて最初から思っているやつは百小物だし、見抜けない人がほとんどだから世の中から犯罪がなくなることはない。見つかって捕まることはあるかもしれないけど。
ついさっき占いを見てもらった机の下に、見事に小さいやつが張り付いていたぜ。普通の人にはたぶんそれがカメラだとはわからないだろう。実はこれはカメラですって見せて説明しても「え〜?」と言って信じないだろう。軍事転用の悪例のひとつ。昔からあるやつの進化版。変なところで進化しなくて良いのにね。しかし千円札を引き換えにこんなにも簡単に探し物が見つかるとは。仮にこのまま何もなく進んで経費千円で済むのならば、なんて安いことだろう。一万円でも手に入れば大儲けである。警戒を怠らずに嬉々として事を進めるとしよう。何事も旬とか鮮度、勢いと流れが大事なんだよ。俺が相手にしているのは人が作るイキモノなのだから。
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