第三次すすきの抗争03

 夜。


 一台の車が止まった。緑の軽自動車。四人乗り。バタバタと扉を開け閉めして降りてきた。彼らはスマホのライトを使ってテント張りの間を探るように通り始める。そこにはテントの下にルーレットやベットのためのコインなんかが積み上がっていた。一目見ればそこはカジノ場だと素人でも分かるようなそんな場所だった。テントの下であるのは移動式だからだ。場所を固定しないことで、摘発を逃れているのだ。彼らは真ん中まで来たところで、被っていたダウンのフードを取った。息が白く広がり、薄暗い中彼らの中に笑みがこぼれる。



「なんだ、誰もいないじゃん。ガセかよ」



 カジノのコインを持ち上げた次の瞬間。その途端、一気に照明がついて人が一気に現れた。どこに隠れていたのか、百人はいるのではないかという大人数である。そこには茨戸創も、キエンも、そしてタカもいた。



 ガキ共は慌てた。後退りしようにも、逃げようにも囲まれている。黒服の男たちに。もちろん、リバーサイドの男の子たちではない。



 そしてその時、さらに事は起きる。ハイエースが次から次へと猛スピードで軽自動車に突っ込んできて、急ブレーキを掛けて五台も止まった。軽自動車はもう動けない。



 バタリバタリとドアを開け閉めして、次から次へと、人が降りてきた。男も女もいる。全員黒い革のグローブをはめて、ぎりぎりと言わせている。こちらはリバーサイドの男の子と女の子だ。



 そして、ど真ん中に一人の男が登場。フードは被らず、われこそが主人公であるかのように颯爽とやって来た。それを見て、犯人グループの若者の一人が、隙をついて「なんだてめぇ」と殴りかかったが、その前に放たれたジャブ一発で意識を飛ばされた。その動作に、誰もが動揺した。しかし、その仕草に安心したのは俺と、そしてタカだろう。



「よお、タカ。久しぶりだな」


「成哉」


「あとは始末しておく。本職の方々が出るまでもない」


「おい、待てよ。こっちとしてもやられっぱなしってわけにはいかない。そいつらを渡せ」


「こんなの、チンピラ。三下にもなれないただの若者。運が良ければ俺たちの仲間だったろうに。本来なら、俺が手を下すまでもないが、コイツラは俺の仲間を襲った。最初の被害者はうちだ。理解わかれ、タカ」


「それなら、最後まで見届ける。俺を同行させろ」



 成哉は承諾した。



 若者たち犯人グループは全員が意識を奪われ、後ろ手で縛られ、黒い布で目隠しされて、ハイエースに全員連れ込まれた。そして車は、軽自動車を残して走り去った。残ったのは賭場理場と、黒スーツの男たちと俺とキエン。



 そこにハイエースがまた一台止まった。



「創さん、キエンさん。遅れてすみません。お二人をお迎えにあがりました」


「成哉の見物会にでも連れてってくれるのかな」


「まあ、そんなところで」



 その後、アウトサイドパークに連れ出し、犯人グループ全員を強制的に起こした。そして成哉とタイマンマッチを行った。もちろん結果は一撃全で終わり、全員が何メートルも吹き飛んだ。それをみんなで見届けた。いい憂さ晴らしになったのではないだろうか。結果的にその勇姿が口コミで広まり、社長様の伝説がまた一つ作り上げられることになった。しばらくはその武勇伝がガキ共の間で盛んに語られた。その伝説の一夜に。




 犯罪者グループは翌朝、再び意識を奪われ、一同手足縛られた状態で告発文と共に警察の前に転がされた。その後どうなったかは、連日のニュースで連続暴行犯逮捕をやっていたから、ご存知の通り。警察に転がされる前、タカサイドからも散々に絞られたらしいから、もう二度とこの街は歩けないだろうね。ヤクザに喧嘩売って命を取られなかったんだ。温情な世になったものだよ。全裸で雪の中に埋められるとか、そんな映画もあったけど、その程度で済んでよかったねとそう思った。

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