第22話デート…?
「…い、いいお天気でございますね…」
「あ、はい。そうですね…」
「…魔法をぶっ放すのにはもってこいですね…」
「…へっ?ぶっ放す…?」
ティアさんの口からとんでもなく不穏な言葉が出てきたような…。
「ふぇっ…?あっ…ち、違います!?今のは言葉の綾というものでして!?ほ、本気でそんな事を思ったりはしませんので…その…うぅっ…」
「ええと…もしかして先程の事を気にして…?」
「えっ…と…その…お恥ずかしい話になりますが…これまで殿方とこうして歩くのも…ましてやお手を繋ぐなんていうのも初めてでして…それに…やはり先程の…その…」
やっぱりそうか…。先程通りがかりの幼い女の子からある言葉をかけられてしまい、これってやっぱりそうなるのかと改めて意識してしまったというわけか。その言葉を意識してしまうとティアさん程ではないが、内心意識しまくっているのはかくいう俺も同じなんだよな。手に変な汗を掻いてる気がするしな。気持ち悪いと思われていなければいいんだけど…。
どうして俺がティアさんと手を繋いで町中を歩いているのかというと、リーンとリカがユウショウ兎を狩りに行った後に時間は遡る──。
♢
今日も今日とて町中に出掛けようとしていた時だ。
「──本日はネネではなくわたくしがハヤブサ様のお供を致しますね」
「ティアさんが…?忙しいんじゃないんですか?」
「いえ…わたくしの仕事はすでに片付けておりますので。ネネは本日は別件でいませんので。それともわたくしではご不満ですか?」
「不満なんかあるわけないですよ」
「ふふっ…それなら良かったです。では、参りましょうか」
「あ、はい」
まさか、ティアさんがお供についてくれるとは思わなかったな。確かにリーンとリカが居ない時はネネさんが護衛についてくれるとは言っていたけども、そのネネさんが都合がつかないのなら一人で出掛けるか、あるいは屋敷内の侍女の誰かがついてくるものと思っていた。
『──そんな事よりもマスター』
『うん?どうかしたのサチ?』
『──ティアさんはこの地の領主でもありますし、マスターがなにより御世話になっている女性ですよね?』
『ええと…そうだな…。ティアさんが世話してくれなかったら今頃どうしてたかは分からないな。こうしてのんびりと過ごせてはいないだろうしな。それで…?』
『──もっと言うならティアさんは王族です』
『サチ…何を言いたいのか分からんから結論を宜しく』
サチは俺にどうしろと言いたいのかが分からない。いつもはそんな事ないんだけど…。
『──ティアさんをエスコートするべきです』
『…えっ?エスコート…?エスコートって言うと案内とか付き添いとかそういう意味だったよな?』
『──正確に言うと帰路や社交の場で、男性が女性に付き添うことを言ったりするのですが、言い換えるとそれで合っています。さて、ここで問題です。マスターのジョブは?』
『…ガイド…だな』
『──ではティアさんのエスコートをお願いします』
『俺がか!?リーンやリカと同じように一緒に歩くだけじゃ駄目なのか!?エスコートなんてした事ないんだけどっ!?』
『──先程マスターは認識しましたので【エスコート】のスキルを覚えていますよ?覚えたばかりですのでレベルは低いですが、スキルを使っていけば当然レベルも上がりますし、高度なエスコートが可能となります。ステータスを確認後、早速使って下さいな』
ええと…了解。とりあえずステータス!
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
名前∶隼 豊和 (はやぶさ とよかず)
年齢∶14
職業∶ガイド
レベル∶1
体力∶15
魔力∶200(∞)
力∶8
俊敏∶5
器用∶38
知力∶38
運∶25
装備∶学生服
パッシブスキル∶ガイド (サチ)オート戦闘(サチ) 指導者 上位互換 剣技LvMAX 質量0 杖技LvMAX 短剣技LvMAX 料理Lv1
スキル∶錬金術LvMAX アイテムボックス 付与 鑑定 言霊 加速 雷斬り パリィ 回転斬り ジャンプ斬り エスコートLv1
魔法∶クリーニング サンダー ハイサンダー ヒール ハイヒール ファイア ハイファイア ボム ハイボム ヌマヌマ アクア ハイアクア
❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉
おお…。本当に覚えているな。ステータスが少し上がっているのはリーンとリカと稽古している影響かな?まあ、細かい事はいいか。今はサチの言う通りスキルを使うとしよう…。
『【エスコート】!』
「ティアさん…手を」
スキルを使った瞬間、俺はそう言いながらティアさんに向けて跪き、スッーと手を差し出す…。えっ?大丈夫これ!?痛くない?精神的に痛い奴じゃない俺っ!?キザ過ぎて恥ずかしいんだけどっ!?
「…ふぇっ!?」
ティアさんは俺が手を差し出すとは思っていなかったみたいで、顔を真っ赤に染めながらアワアワしているし…
「俺にエスコートさせて下さい。ティアさんが可愛い過ぎるので道中他の男性に声を掛けられたら困りますので」
おい!?サチどうにかしてくれ!?このスキルヤバいって!?口から言葉がスラスラ出てくるんだけど!?ティアさんが可愛いのは同意するけども、今言う事じゃないよなっ!?俺も恥ずかしいんだけどっ!?超絶恥ずかしいんだが!?何でこんな大変な時に黙ってんのっ!?主のピンチなんだから助けてくれよサチぃぃぃぃぃっ!?
「かわっ…!?私が可愛いっ!?あにょう!?そにょぉ…ええと……よ、宜しくお願いしましゅっっっ…!?」
更に顔を真っ赤に染めながらも、俺が差し出した手にゆっくりと手をのせてくれたティアさん。感謝します…。これで断られたりでもしたら絶対に立ち直れていなかったぞ?
『──大丈夫ですって!ティアさんの好感度ゲージなるものがあるとすれば現時点で結構高いと思いますので♪』
それは…喜んでいいのか?
『──何言ってるんです?女性からの好感度ゲージがゼロ以下じゃなければ喜んでいいに決まってるじゃないですか!』
ゼロよりって…ゼロより下は最早嫌われてるどころか視界にも入れたくないってレベルじゃないか…?例え1でも喜ぶべきなのか?
『──さあ、マスター!そんな事よりもティアさんを待たせてはいけませんよ!?』
なんか誤魔化されたような気がしないでもないが…確かにティアさんを待たせる訳にはいかないな。
「じゃ、じゃあ…行きましょうか」
「は、はひぃ…」
そして…俺達は町へと繰り出したんだ。まさか女性とこんな風に手を繋ぎながら町をぶらぶらする時がくるとはな…。女性と手を繋いだのって小学生の遠足以来じゃないかな。そんな事をふと内心思いながらも、お互いぎこちないながら会話をして歩いていると、道行く人が領主であるティアさんに気がついた。会話を聞くとティアさんが慕われている事が分かるな。
「あら、領主様。こんにちは」
「こ、こんにちは」
「領主様!先日はありがとうございます」
「い、いえ。あ、あれは私がすべき事でしたので…」
「領主様!新しい商品を入荷しましたのでお時間がある時にでもまたうちに寄ってくだせぇ~」
「は、はい。そ、その時は宜しくお願いします」
『──マスター気がついてます?ティアさんが慕われているのは間違いありませんが、それとは別にみなさんが気を遣っている事に。その証拠にティアさんがマスターと手をガッツリ繋いでいる事には触れもしませんしね♪』
言うな…。言わなくてもみんなの視線が俺達の繋いだ手に注がれてるのは分かってるし、すれ違う人達がみんなニヤニヤしてるのも分かってるから。
『──ですね♪ですが──』
ですがで言葉を止めるなよ!?その言葉の後が気になるだろ!?そうサチに言おうとしたところで幼い女の子がティアさんに話し掛けてきたんだ。
「りょうちゅしゃまこんにちわっ」
「こ、こんにちはサミーちゃん」
「おててつないでるきゃら、きょうはでーとなの…?」
「デデデ、デートっ!?」
「ちがうの…?」
「そそそ、それは…その…」
なるほど…幼い子の言動は止められんわな…。
『──まあ、そういう事です。無邪気というか思った事を素直に言いますからね♪』
まあ…俺も今更ながらに思ったんだが…男女でこうして手を繋いで町中を歩くのは一般的にデートと言うよな…。ティアさんに迷惑がかかるんじゃないか?エスコートする為とはいえ、俺なんかが…その…ティアさんの彼氏と間違われるのは…
『──ティアさんは迷惑とは思っていませんよ?』
だけどなぁ…。
『──ほら、サミーちゃんのお母さんが来たみたいですよ?』
んっ…?
「──こ、こら、サミー。りょ、領主様のおデートの邪魔をしてはいけませんよ!うちの子が本当にすいません領主様」
「い、いえっ…」
サミーちゃんのお母さんはそう言いながら慌てて娘に駆け寄ると抱き抱えてその場を離れていく…。
「おかあしゃん!?はなしてぇ!まだりょうちゅさまにあのしとチュッチュッしてるのかきいてないのにっ!」
「こ、これ!サミー」
最後もしっかりと爆弾を落としていったな。ティアさんはそれを想像してしまったんだろうな…。リンゴ飴よりも紅く染まってるしな…。なんなら首筋も染まっている…。
「お、幼い子の言う事ですし…き、気を取り直して…い、行きましょうか…」
「は、はひぃ」
♢
──と、いうわけで冒頭に至るわけだな。
「ティアさん」
「は、はい!?なんでしょうか!?」
「恥ずかしい話を俺もしますけど、俺もこういうの初めてなので…」
「そ、そうなのですか…?エスコートも手慣れていらっしゃるみたいたったので…その…女性慣れしてるのかと…」
「いえ、全く…。エスコートは俺のジョブのお陰でもあるんですよ。俺のジョブはガイドなので」
「ふふっ…ふふふ…」
「ティアさん?」
「あ、いえ、すいません。お互い初めてで緊張していたんだなと思ったら、自然と笑みが」
「…ですね。なので…ティアさんもそんなに緊張しないで下さい。俺も緊張してしまいますので」
「…分かりました。それと…」
「どうかしました?」
「そろそろ…リーンさんやリカさんみたいに…私も名前で呼んでもらいたいです」
「えっ…と…ティア」
「っ!?こ、これは…かなり効きますね…」
大丈夫かな…?小声で何か言ってるみたいだけど…急過ぎたかな?
「私も…と、トヨカズ様と…お呼びしても…?」
「勿論です。ですが俺に様はいりませんよ?」
「これは癖みたいなものなので気にしないで下さいトヨカズ様…」
『──こういうのイチャイチャって言うんでしたっけっ?バカップルでしたけっ?』
『──うるさいよ』
まあ、なんにせよ。少しだけティアと仲良くというか打ち解けたみたいだ。会話もスムーズになってきたので恥ずかしさというか緊張が和らいできたんだろうな。
「おい!早く歩かないか!この愚図が!」
「痛いっ!!」
「お前が早く歩かねぇからだろうが!」
「…あうっ!」
そんな時だった。近くから男の怒鳴り声のようなものとビシッ!っと何かで叩いた音。そして痛みを発するような訴えるような声が聞こえてきたのは…。
「ティアっ!」
「はい」
俺とティアはその声がした方へ急ぎ駆け出し向かったんだ…。
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