第7話 分かりました!エスケープ

現在、外の見えない透明なる監獄に閉じ込められております…



「あー、おにーさんも捕まってしまった感じですか…どうしましょ。」


本当にどうしましょ。だよ。助けに来て、無事

救い出す流れじゃなかったのか。

めっちゃ普通に捕まったじゃねえか。

魔法を使えないやつにレベルしかないスキルで

対抗しろって?異世界ものでもあるまいし…

ここは異世界で俺も向こうの世界から見ればれっきとした異世界人。なのだが、やはり上手くいくわけがなかった。主人公、ではなかったみたいで。


どうしたら風魔法でこんな壁作れるんだよ。

おかしいだろ。監獄は土魔法とかの役目じゃねえのかよ。あと、


アホほど狭い…


「うん、どうしましょ。」

そう返すことしかできない。


「あの、魔法の系統ってなんですか?」


「未選択だよ…」


魔法属性系統…魔法学校において、

に、第3学年(こちらの世界でいう、小学3年生と同じ年齢)に自身のスキルに適性の合った魔法の属性を選択する。という行事がある。ある意味ではここで、将来が大まかに決まるという事だ。俺は勿論、宣言通りの未選択だ。


魔法は魔力を消費する。

スキルは生まれた時に同時に付与され、

使う際は体力を、消費する。


「……、あ、お肉おいしかったですかっ?」


「ねえ、露骨に話逸らさないで…」


「なら、改めまして、私の話をさせないでいただきます。」     


「させないの?」


「まずはここを脱出しましょう!」


それはそうなんだけど

余裕で俺より冷静な判断を…


「でもこの子もまだ、魔法属性系統の選択、

 やってないんじゃ…」


すると、彼女は呪文詠唱の如く

「転移魔法なんて高度なものは流石に使われていなく、風魔法による特殊な結界といったところか…後から、おにーさんが入ってきた様子を見ると、一方通行極薄の風の壁か?空気ならばこちらから外が見えてもいいものだけど、ここまでの安定した足場と壁を保っている様子を見ると過剰な空気の捻じ曲げでこの檻を?そうなったら内側からの破壊?それには風を通さない実体化出来る木、土属性のものでトンネルを作る好ましいけど…」


あー、あ俺がどんどん惨めになっていく…

なんなの?この子のスペックは…

もう魔法とか使えちゃったりするのか?


「もしかして、もう魔法使えるんじゃ?」


あ、しまった、きれいに心の声が


「べっ別にそんなことは無いですよ〜。」


「そうか、

  じゃあヒスイちゃんのスキルは何かな?」


流石に魔法は使えないのか…

もしそうだったら俺萎えちゃうぜ。

物質精製系のスキルだったら話を聞くところ

脱出の余地はあるのだが、


王立図書館ロイヤル・ライブラリーのレベル1.5です。」


図書館?もしかして仮面ライダーWで出てきた

やつか?


「あの頭の中で知識を得られる?」


「すごいですね!全くもってその通りです。

ですが、私の図書館は、名前通り王立のものですから。実体をしっかりと待ってます。いつかその国に行くのが、私の夢でもあるんですよ。」


今は限られた本を精神世界で王立図書館に接続して、読めるだけですけど…

と、十分に優秀だ。王立図書館とひとことに言ってもどこの物かは分からないが、その能力は

しっかりと見せてもらった。


そして、夢という素晴らしい言葉…


「そこの図書館に居る人と話せたらいいものなんだけど。」


「出来ますよ?」


「え、出来るの?」


「はい、もちろん。割とマイナーな観光スポットらしいですよ、探検家の方が極々稀に出没します。先ほど見たところ、司書さんは今日、

来てないみたいです。」


希望が薄過ぎる

探検家が極々稀って、一体どんな僻地だよ…


「お、おーけー分かった。」


もうこうなれば俺がやるしか本当に無いのか

今のスキルじゃ無理がある。


「ねえ、読める本の中にスキル逃走者エスケープについての本ってあるかな?」


きょとんとした顔をして彼女はこう答える。

「それでしたら、ページが破られて1ページくらいしか残ってませんが読んだことがありますよ。」


優秀!ヒスイちゃん!

誰だよ破ったやつ、例の探検家か?

それでもいい、今の俺にできることは…


「確か、流動体に関する…何でしたっけ、

すみません!急いで読んできます!」


「ありがとう!」


流れだったら風に相性がぴったりじゃないか。

例の探検家よくやった。無駄な知識を入れるより、緊急時に役立つもの、だ。

急いで、か、アイツらが依頼人にヒスイちゃんを引き渡す前に!


「ただいま読んできました!」


「どうだった?」


「流れに飛び込んで、その方向に飛ぶ!

だそうです。確かレベルは…2ですね、

そして、名前は・・・・

もしかしておにーさん?」


「完璧だ、即座にマスターとはいかないが

壁抜けバグでイメージは充分にある!」


とは言ってみたものの


問題点はこの空気の監獄の壁にめり込む事なんだが、これほどのものに入りでもしたら、体が

張り裂けるんじゃ…死人がいう事じゃ無いが

やっぱり怖い。


「ヒスイちゃん!俺を蹴ってくれ!」


しまった語弊が…


「分かりました!でぇい!」


声に反して戸惑う事なく普通にストレートな

一撃、だが彼女の足の長さよりも、

俺の腕の方が長い!


遠方逃走劇ロング・アヴォイド!」


この速度で、

壁に体が入るか否かのその直前で、

本っ当に悪いけどそのまま足を掴んで…

スキルの対象に引き込む!


「スキル発動。

    

    逃走者エスケープ通常型弍式レベル・セカンド

           調律超波線チューン・ディス・ウェーブ!」


これがまた、上手にいってしまった…、

流石はオープンワールドゲーム!伊達にプログラムが異常なだけじゃねえ!

超高密度の空気の壁をすり抜け、そして、

宿の屋根をぶち破り、すみません!

日が登ってくる空を文字通りに駆けて、




───目を覚した頃には、全く見覚えのない湖畔に体を横にしていた。


「どこよここ?」

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