第10話

────紅華side



 その日は久しぶりに外へ出ていた。


 秘書である杠 紫保(ユズリハ シホ)に声を掛け、気分転換も兼ねて街へ向かう。最近は組の中で色々あってな。内務処理が忙しくて外に出るタイミングを逃していたんだ。


 扇木組は中心都市である八重市の外れにある。その為、煙草をふかしながら街を歩き見回りをする。



(相変わらず賑やかな街…うるさいくらいだな)




 近頃、都戸市を拠点としてる火蛇の奴等が華狼と派手に遊んでると聞く。

 …若気の至りは程々にと笑いたいところだが、そう軽い話でも無さそうだ。


 火蛇の裏に朝比奈(あさひな)組も絡んでるとの情報があった。〝朝比奈組〟とは、先代…つまりは私の父親が頭(かしら)の頃から仲が悪くなり、現在扇木組と敵対している組だ。




 この組は、要注意。

 だって、朝比奈の先代は────





「紅華、アレ」


 過去に浸りそうになった私に小声で話し掛けてきた紫保の声に視線を移し、意識をそちらへ向ける。


「…路地裏にパイプを持った男が4人、か」


「如何にも怪しいと思うんだけど?」




 警戒した様子の紫保の言葉に、くつりと私の喉が鳴る。


 ああ、そんなあからさまなことをされては…




「〝ついてこい〟と言ってるモンなんだよなぁ」



 ニヤリと頬を吊り上げ笑った私の横で、紫保の呆れた声がするが敢えてスルーさせてもらおう。

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