隔離谷村

夏目 惇

第1話

xxxx年人里離れた集落 通称『谷村』

初夏が肌に感じる17回目の夏

季節が終わりまた始まる

そんなことを考える俺は『夏目 惇』どこにでもいる高校生だ

この頃になると容姿について気になるが、高身長で見た目も悪く無い

性格に棘がある為、そこでバランスをとっている


「おーい、こんな所にいたんだ!」

セミロングの髪を揺らしながら、走り寄ってきた少女は『久瀬 凪』

近所に住んでいる幼馴染で集落一の美貌をもつ

「少し季節の変化を感じてただけだよ」

風に当たりながら受け応える

流れていく時間を憂い、流されるだけの人生に思いを馳せる

「ふーん…変なの」

自由奔放な少女は顔を伺っている

「うるさい」

少女に対して突き放すように一蹴する

「そんなことより来週の祭りはしっているよね?」

凪の話通り祭りは定期的に行われている

人里離れていることもあり集落の人間で行われるこの祭りは、夏と冬に実施され強制では無いがほぼ全員が参加する

「知ってはいるけど…また羽目を外すなよ」

凪は自由奔放な性格で、付き合わされる俺は毎回痛い目をみる

「そう言っていつも私を縛るんだー」

一息ついて少女の顔が少し曇る

「もしかして私、迷惑かけてる?」

彼女は天真爛漫で明るい人だが、こう言った時、繊細になる

「そういう事じゃ無いけど、どうして俺ばっかと絡むんだよ」

集落といっても同年代の人は一定数いるわけで、人当たりがよく美人な凪に近づく人も多い

そんな彼女に対し距離を置こうとするが、何故か凪は絡んでくる

「それは…惇が…」

少女は頬を赤らめながら呟く

「わかった俺が悪かった」

凪の言葉を遮り言った

少女には俺に打ち明けづらい事情があるのだろう

俯いている少女に嫌気がさして手首を掴んで走り出した

「暗い顔してんなよ…明るい顔してるお前が、俺は好きなんだから」

その言葉を聞いた少女は顔を上げて俺を見てくる。照れくさくて顔を逸らした俺を見て凪は笑った

「これだから惇は…こんなだから私は…」

少女の言葉は風に攫われ彼の耳に届くことは無かった


凪はよく駄菓子屋に通っている為、流れで一緒に行く事が多い

「いらっしゃい」

この村の特徴として店を切り盛りしている人は年配の方が多い為、この駄菓子屋も最年長のお婆さんが接客をしている

「お変わりなく」

凪はいつも通り駄菓子屋に入ると早々に品物を見回っている為、お婆さんと近況について話をする

「最近はどうですか」

頻繁に来店する俺にとっては他愛無い会話

「村の事にゃ若いもんのほうがようしっておろう。お前さんはこの老体の話し相手になってくれるのかい?」

俺は微笑みながら頷く

「そうさねぇ…近々大型の建設があるとか…なんとか…」

この話は初耳だった

ほとんど開発事業などしてこなかった集落としては少し不可解に感じた

「どこまで話が進んでいるのですか?」

前のめり気味にくって話す

「そ、そこまでは知らんで」

老婆は急に態度を変えた俺を見て驚いていた

「そうですか」

そんな話をしていると奥の方から声が聞こえてきた

「これください!」

元気いっぱいの少女の声を聞いた俺は微笑んだ

「はいはい。仲がよおて羨ましいの〜」

老婆は会計を行う為、元の位置まで戻っていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隔離谷村 夏目 惇 @omojun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ