終わりのラクシア

@ThornDarkGM

第一部滅びの未来

第1話 闇の世界

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………………………


………………


………



暗闇の中で、俺は重たいまぶたをゆっくりと持ち上げた。

どれほどの間、眠っていたのだろうか。

頭はぼんやりしていて、体も鉛のように重い。

寝ぼけた意識の中で、俺は周囲を見回した。



知らない空だ。


天に目を向けると、そこには見慣れない光景が広がっていた。

闇に浮かぶ数え切れないほどの星々。

それはさほど異常ではない。

だが、目に入った月は血のように赤く染まっていた。

あまりにも静寂なその空は、禍々しくもどこか美しい。


心臓が跳ねた。

まるで異世界に放り込まれたかのような感覚が、俺の全身を包む。


上半身を起こし、周りを見渡すと、同じように裸で眠りこけている人々が規則正しく並んでいる。

30人ほどか。全員が無防備に眠っている中、俺だけが目覚めたようだ。

だが、何もかもが分からない。

この場所も、状況も、俺の頭は疑問でいっぱいだった。

どうやら、俺が初めて目覚めたようだが…。


「…なんだ、これは。」


どうやらここは岩山の様だ。ここはきっと標高が高いのだろう。

そびえ立つ岩山。

そのふもとに広がる雲海うんかい漆黒しっこくに染まり、そこから突き出た山々は、赤い月の光に照らされている。

空の闇と地上の闇に挟まれた、その禍々しい光景にまた見惚れた。

この不気味な光景に、俺は言葉を失った。


(…誰かいる)


遠くに、暗闇の中で動く人影が見えた。

正確には火が見え、そこに人影がいた。

眠っている俺たちを並べたのは、きっと彼に違いない。

そう思い、声をかけてみた。


「そこのあんた」


その人物は振り返った。だが、その口元は血で汚れていた。


異様な光景に俺の胸に不安が押し寄せる。だが、目には確かに理性が宿っている。

彼もまた裸で、片手には粗末な槍、もう片方には血にまみれた生肉を握っていた。


「あんた、何者だ?」


全裸に片手にはまるで原始時代のような粗末な槍。

もう片手には何の肉か分からない生肉。

問いかけようとしたが、彼は何か意味のわからない声を発しながら、俺にその肉をしきりに差し出してきた。


…受け取れということなのだろうか。

しぶしぶ俺は受け取った。

それを見て、彼は満足そうにして別の生肉にかぶりついた。

生肉を受け取ったものの、口にはしない。

生食には抵抗感がある。せめて火で焼くとしよう。


俺は火で肉をあぶりながら彼に問うた。


「なぁあんた、ここはどこなんだ?」


しかし、返ってきたのは意味不明なうめき声だった。

ダメだ、言葉が通じない。俺の質問は全て無視された。

お互い意味が分からないだけで、無視はしていないのかもしれないが。

本当に彼は味方なのだろうか。不安が募る。


――この場所はどこだ?俺はどうしてこんなところにいる?


状況を整理しよう。

俺はザルツ地方ルキスラ帝国で活動している冒険者。

名をオルス。これでも一流の冒険者として名が通っている。


…一番記憶が新しいのは大陸新歴310年12月末。年末だ。

昨日のことなのに、遥か昔のことのように思える。

ルキスラ軍に従軍中に襲ってきた竜屍兵ダムドとか言う奴らと戦い、"黒い霧"に軍ごと飲まれたのが最後のはずだ。


黒い霧に飲み込まれ、混乱する軍隊。

悲鳴、走って逃げる兵士達の金属鎧の音、嘶く馬の声、撤退を示す笛の音。

そして、飲み込まれる直前の恐怖感。

あの時の光景がフラッシュバックする。

飲み込まれた後のことはよく思い出せない。


俺はあの黒い霧の中から助けられたのか?

だとしたら、ここは…あの黒い雲海は…。


滅び。


その言葉が脳裏を過る。


…。


とりあえず情報を整理したい。

彼と言葉が通じないことだし、他の者が起きるのを待とう。


疑念が渦巻く中、俺は自分がどこにいるのかを理解するため、静かに他の者たちが目覚めるのを待つことにした。

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