ふたつあるお耳
桜子は、なぜすぐに誰とでもお付き合いをするのだろうか…?
「あのさ、桜子…」
「ん?」
ポテトをくわえてアホずらな桜子がこっちをみた。
学校では、絶対そんなことしないくせに…
学校では、めっちゃすかしてるくせに…
…
あー、見せてやりたい!
桜子は、実は完璧人間じゃないんですってところをさ。
…
「桜子って、新しい彼氏とお互いなんて呼び合うことにしたの?」
…
しばらくポテトをモグモグしていた桜子は、
「名前…まだ聞いてなかった」
なんて言いながら一点を見つめ出した。
⁉︎
「名前、知らないとかある⁉︎彼氏なんだよね⁉︎」
「うん。あ、でも手は握り合ったよ?」
…
手を握り合う⁉︎
え?
どういうこと⁉︎
握り合うって…なにしてたん⁉︎
なぜ手を握り合うのか…なぜ…どんな?いつ?だれと?どこで?
…
もう、小学生の国語の時間になりつつあった。
なぜ…付き合っているから…
どんな…手を握り合う…
いつ…放課後…
だれと…彼氏と…
どこで………
「えっ、どこで⁉︎」
「学校で」
…
学校で幼馴染が名前も知らない彼氏とイチャイチャしていたそうなんです。
…
「アホくさ」
「は?なんでよ」
「だって名前も知らないんだよ?どうせまたすぐ、別れるんでしょ?」
桜子は、オレをキッと睨んだかと思ったら、
いきなりジュースを飲み出した。
けほっ
「あー、いきなりふざけたこというからポテトがのどに滞在するところだったー」
と、わけのわからないことを言い出した桜子。
「滞在…ですか?」
「ええ、ビザないからジュースにお願いして、強制退去してもらいましたよ。」
と、くだらないポテト滞在事件がいきなり勃発して、あっさりことなき事を得たのでありました。
…
「てか、すぐ別れるとか言わないでよね。今度こそ三年は、続いてみせるわ」
と、意気込んでいた。
「…いや、三か月も続いたことないのに?」
「うるさい!今度は大丈夫だから。」
「名前も知らないくせに?」
「デカバナを挫かないで!」
…
「プッ…、デカバナ…って…あははははっ!出鼻な!」
と、きちんと訂正して差し上げた。
すると桜子は、当たり前のように
「出鼻ね。そもそも遼ってお耳ふたつもあるくせに聞こえが悪いわねー」
とオレの耳のせいにしてきやがった。
…
かわいいそうなお耳さん。
オレのお耳さんは、間違えてなんていないのに。
後で耳ツボマッサージしてあげるからねと、お耳さんには、フォローしておいた。
「てさか、彼氏何組?」
オレが偵察してやるぜ。
と、意気込むと桜子は…またしても一点を見つめて
「知らない…ね?」
と、言った。
は?
知らないね?って何⁇
「あのー…クラスも知らないんだ⁉︎」
「でも‼︎手、握り合ったし、明日とかたぶん顔みたら思い出すし…その…少しずつ知っていくの‼︎だからいいの‼︎」
なんていい、ハンバーガーにかぶりついていた。
いまさ、顔見たら思い出すっていいませんでした?
名前もクラスも知らないのに、そもそもそんなこと思い出せなくない?
てか…もしかして思い出すって…
まさかもう、彼氏の顔を忘れたんじゃ…
「桜子って…ヤバいな」
「え?なんでよ?あ、もしかしてわたしに、しょっちゅう彼氏ができるから、いたんでるんだ?」
じっとオレを見る桜子。
…
いたんでる…って言われたらそりゃ心はめっちゃいたんでおります。
「それは…」
「そんなのうつわが小さいぞ?」
うつわ?
…もしかして桜子が言いたかったのは…
「え、もしかして今、いたんでるって言ったけど、ひがんでるって言いたかった?」
と聞き返すと桜子は、オレをみて
「あー、そう…さっき言ったじゃない。ひ、ひ…ひがんでる!って‼︎」
と、開き直った。
…
いたんでるって…野菜とかじゃないんだからさ。
「あー、桜子ってやっぱりバカだわー」
「違うよ!遼のお耳がおバカなんですーー。さ、お腹も膨れたし、ひと休みするわ。おやすみー。」
…
桜子は、当たり前のようにオレの布団で昼寝をするのでありました。
続く。
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