勇者パーティで最弱の俺が勇者から追放されなかった理由

のんびりした緑

第1話

「アルベルト、話がある」

 宿屋に着くなり勇者であるレオンから話を持ちかけられた。

 俺とお前だけの二人で酒場に向かうぞと言われ酒場に向かう。

 俺の心中としては、

 あぁ、遂にこの時が来てしまったのかととぼとぼと勇者に着いていった


「で、話ってなんですか勇者様」

「……そうだな、俺は言ってはなんだが口下手だ

 不快にさせる事前提で聞いてくれ」

 酒場に着くなりお互いエールを注文し、軽く舐めながら話を始めた。

 普段口数の少ない勇者様が不快にさせる事を前置きに何かを伝えようとしてる。

 あぁ、遂に追放されてしまうのか。

 だが仕方あるまい…、ここ最近の戦闘はまるで動けず足を引っ張るばかり

 俺を連れる理由が無いのだろう

「アルベルト、お前剣士向いてないだろ」

 勇者様は直球で俺のジョブである剣士を否定してきた。

 魔王城に近づくにつれ、より強い瘴気を受けた魔物は強くなってくる。

 魔王城に近づいたからか、ここ最近の魔物は強く、

 俺の剣技じゃその硬い甲殻や鱗、剛毛を突破出来ない事が多々ある。

 他のメンバーは易易と突破出来るのに俺だけ、が。

「すまない、言いたいのはこれじゃない……」

 手を額に当て顔を振りながら自分で言ったことを否定する。

 ん?勇者様は何を言いたいんだ?


「……そうだな、俺の聖剣……ちょっと持ってみろ」

 聖剣の柄をコチラに向けて勇者様は俺に持ってみるよう言ってきた。

 言われるがままに俺は聖剣を手に持つ、が

「おっもい……!?何だこの重さ……!?」

 受け渡され、勇者様が手を離した瞬間細身の長剣とは思えない

 あまりの重さに俺は両手で握っても維持できずに

 床にドシンと音を立てて落としてしまった。

 鞘に入ったままでなければ刃こぼれをさせてしまうんじゃないかと思うほどだ。

「それが俺の聖剣の重さ、ちなみに俺は重いと思った事が無い」

 そう言い床に落としてしまった聖剣を片手で拾い背中に掛けた。

 細身の体とは思えない剛腕を見せた。

 だが俺は納得してしまう。その圧倒的な重さ。

 それを振り回す事のできる剛腕から繰り出させる破壊力を考えれば

 この辺りの魔物を一刀両断等出来て当然と。

 俺と勇者様の圧倒的実力差を思い知らされた。


「……勇者様は俺に何を言いたいのですか?」

 単刀直入に勇者様は俺に何が言いたいのか訊ねる。

 勇者様なりに穏便に事を済ませたいが為に

 遠回しの追放を言い渡したいのか分からないからだ。

「……、ええっとだな、追放をだな」

 やはり追放か、だが今の圧倒的実力差を見せられたら

 ついて行けない俺を追放もやむ無しだろうな……。

「俺、実力不足で追い出されるんですね……」

「あぁ待て、そうじゃない」

 この口下手、どうにかならんかと頭を抱えながら勇者様は呟いた。

 ん?俺を追放する話では無いのか?

「昨今の追放、アルベルトはどう思う?」

 意見が聞きたいと勇者様が尋ねてきた。

「弱いから追い出す、じゃないですか?」

「大体はそうだろう。現に今もそこで行われてるし、珍しい話では無い」

 ここ以外にも追放劇は始まってる。

 弱いから出てけ、報酬も渡さねえからなと殴り合いが起きてる。

 が、追放される側が呆気なく敗北してしまい

 逃げるように何処かに行ってしまった。

「強さだけならアルベルト、俺もあんな感じだ」

「穏便に追放しようとしてくれる辺り、優しさを感じますよ……」

「待て!そうじゃない!」

 いつになく大声を張り上げる勇者様。はて、何が言いたいのやら


「アルベルト、腕っぷしの強さ以外にも必要なのって何だと思う?」

「強さ以外にも必要なもの?」

「……俺は口下手だ。今もお前を困惑させてる」

 喉を潤わせる為に勇者様は一度エールを煽り、再び語りだす。

「一方でお前は口が回る、俺の代わりに色々してくれてる。

 後、なぜかお前がいると戦いやすい」

 そこについては大変ありがたく思っていると感謝された。

 はて、勇者様は俺を追放したいのか感謝したいのか分からなくなってきた。

「戦闘面ももっと強くなれば言う事無いのだが……

 何か悩みでもあれば言ってはくれないか?」

 お前の動きは何か気が散ってるように思える。

 勇者様にそう言われてしまうと何も言えない。

 確かに気が散ってると言われれば散ってるが、言える内容というか

 信じてもらえるか怪しい部類だ。

「……俺に相談が無理なら、せめて婚約者とは相談してはくれないか?」

 お前の幼馴染でもあるのだろう?

 昔からよく知る間柄なら言えない事も言えるのではと勇者様に言われた。

 幼馴染であり婚約者のアリシアから相談されたのが

 今回の呼び出しのきっかけだそうだ。

「もしそれでもダメな場合、俺はお前を追放する」

 そう脅しをかけられ、俺はアリシアの元に向かった。

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