第57話 ゴーストキッチン

~田舎町~


佐藤「そういえば、こないだゴーストキッチンに出会ったんですよ」


川岸「なんだそれ? 注文が多いキッチンか?」


姫路「ああ、『ここで裸になってローション塗りたくってください』ってやつ?」


川岸「いや、そんなエッチじゃないだろ」


佐藤「幽霊の話じゃなくて、自転車で出前する仕事の話ですよ」


川岸「おお、あれか。フードデリバリー」


佐藤「焼き鳥専門店の老舗があるってことで、店舗まで商品を取りに行ったんです」


姫路「そしたら?」


佐藤「そこがアパートの一室で、専門店とか老舗とか全部ウソ。冷凍のを焼いてました」


姫路「それは食品偽装じゃない?」


川岸「どっちかっていうと、商品掲示法違反だな。お客さん怒らなかったか?」


佐藤「配達した時、お客さんにも言ったんです。そしたら……」


姫路「そしたら?」


佐藤「レバーさえ食べられれば冷凍でも何でもいい。って」


川岸「変な客だな。まあ、でもクレームにならなくて良かったじゃないか」


富沢「ちなみに、そのお客さんどこの人や?」


佐藤「え? お客様の個人情報までは教えられませんよ」


富沢「いや、俺の知り合いかもしれん。○○町の、こう……髪のぼさぼさなおばちゃんやろ」


佐藤「あ、はい。そんな感じです」


富沢「あの人の注文、もう受けたらあかんで。家にもなるべく近づかん方がええ」


佐藤「え?」


富沢「佐藤は『縁がある』なぁ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る