第48話 おふくろの味
~道端~
佐藤「川岸さんの『おふくろの味』って、どんなのですか?」
川岸「どうした佐藤。唐突だな」
佐藤「いや、川岸さんと二人きりのサイクリングって珍しいので、ちょっと気になって」
川岸「そうだな……ジャガイモを味噌と油で炒めた郷土料理があってな。それが俺にとって、おふくろの味だったよ。味付けが絶妙で、甘辛くてさ」
佐藤「いいなあ」
川岸「……お前のおふくろさん、何かあったのか?」
佐藤「あ、いや。バリバリ元気ですよ。ただ、料理しない性格で、俺はいつも出来合いの総菜とか、レトルト食品ばっかり食って育ったんです」
川岸「それだって、おふくろさんがお前のために用意した料理だろ。立派なおふくろの味さ」
佐藤「そうなんですかね? 俺は川岸さんがうらやましいです。手作り料理の温かみって感じがして、とっても」
川岸「そっか。俺はお前がうらやましいよ。佐藤」
佐藤「え?」
川岸「俺のおふくろはもういないからさ。あの味は食いたくても食えないし、最近は記憶もあいまいなんだ。でも、お前のおふくろの味は、食品会社が潰れない限り、いつでも食えるだろ」
佐藤「そう、ですね」
川岸「おふくろの味に優劣なんかねーよ。ただ、おふくろを好きでいられるかどうかがあるだけだ」
佐藤「ホームレスの爺さんから教わる事、あるんですね」
川岸「うんうん……待って。何で俺が今ディスられたんだ? しかも今はホームレスじゃねーし。エモい感じだったの台無しじゃん!」
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