第19話 反撃
「どうだ、これが“キーボード”の力だ……」
キーマスターが冷ややかに笑いながら、目の前に浮かぶ光るキーボードを操作する。その指が次々とキーを叩くたびに、俺たちは次々に力を奪われていった。
「動けない……くそっ!」
俺は必死に左腕に力を込めて反撃しようとしたが、キーマスターが入力した「動きを遅くする」という命令が体に重くのしかかり、まるで全身に鉛を纏ったかのように動けない。
「何て力だ……!」
隣で仙台も苦しそうにうめき声をあげ、いつものように素早く3秒で指定場所に到達することができなくなっていた。彼の特殊能力さえも、キーマスターのキーボード操作により完全に封じ込められている。
「やっぱり……見えない……」
桐生の鋭い目でさえ、キーマスターが生み出す空間の歪みや操作内容を完全に読み取ることができない。彼女もその力を発揮する余裕がなく、膝をついていた。
「どうした?お前たちの力なんて、このキーボードの前では何の意味もない。運命も力も、すべてこの手で操れるのだからな」
キーマスターは余裕たっぷりに俺たちを見下し、再びキーボードに手をかける。次の命令を打ち込もうとしているその姿に、俺たちは無力感を感じずにはいられなかった。
「どうする……何とかしなければ……」
俺は苦しみながらも、必死に考えを巡らせていた。俺たちは全員、力を封じられている。反撃の余地もない。しかし、あのキーボードを止めない限り、このままでは全員やられてしまう。
その時だった。
「お前たち、随分やられてるじゃねえか」
突然、聞き慣れた声が上空から響き渡り、俺たち全員がその方向に目を向けた。建物の瓦礫の上に立っていたのは、加賀だった。彼はニヤリと笑いながら、手には黒い光を放つサイコロを持っていた。
「加賀さん……!」
俺たちは驚きの表情を浮かべた。加賀は軽やかに地面に降り立ち、俺たちに近づく。
「随分ボコボコにされてるな、そろそろ助けてやるか。運命ってのは、そう簡単に捻じ曲げられるもんじゃねえんだ」
加賀はキーボードに夢中なキーマスターに向けて挑発的に言い放つ。
「お前は……何者だ?新手か」
キーマスターが冷ややかな視線で加賀を見下ろす。加賀は笑いながらサイコロを手に取り、軽く転がし始めた。
「俺か?ただのサイコロ好きの男さ。でもな、運命を操るのは俺のサイコロが得意なんだよ」
キーマスターはその言葉に興味を引かれたようだったが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「サイコロだと?くだらない。そんな単純な運に頼って何ができる?」
「まあ、見てろよ……どんな目が出るか、運命ってやつをかけてやるよ」
加賀はそう言うと、サイコロを高く投げた。サイコロは空中で回転しながら落ちてきて、地面にコロコロと転がる。その目が何になるか——全員が固唾を飲んで見守った。
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