序章4 『黒蛇の暴虐』
ゴロロロ、、、ヴァゴォォォォォン!!!!!
唐突だった。
なにか硬質なものが砕ける強烈な破壊音が、ヴィーグナの町に轟いた。
「、、なんだ?!」
その音は宿で眠っていたラースの耳にも届き、一気に彼の脳を覚醒させた。
部屋の窓に目を向け、状況の確認をしようと寝具から飛びのき勢い任せに窓のガラスをこじ開ける。
「、、、、は?」
眼下に広がるのは新月にも関わらず目に爛々と煌めく炎、いくつかの建物は巨大な岩石によって跡形もなく潰され、街灯はなにかの芸術品のように奇妙な形に歪んでいる。
「なにが、、、、どうなってる?」
昨日の光景とは似ても似つぬ凄惨な町の様子に、彼の頭は理解が追い付かない。
「きゃぁぁぁ!!だれか、だれかぁぁぁ!!!!!!」
暇なく、視覚の次は聴覚だと言わんばかりの様子で町の人たちの悲鳴や怒号が彼の耳に絶え間なく押し込まれる。
誰も彼も現状を説明できるものはいなく、ラースと同じ、唐突に起こった破壊の嵐に理解不能な顔で茫然としている。
頼れるものはいないと悟り、ラースは状況の把握に努める。
あたりの惨状、町の人たちの逃げ惑う姿、この国には似合わぬ地獄絵図。
ふと、ラースは人々が何から逃げてきたのか、彼らが来た元の方向へ視線で辿る。
すると、そこには、、、
港町ヴィーグナは東の果ての町だ。
近年は少なくなってると言えど魔物の被害に対策は必須。
そこで、海を背にして町を囲むように北から南までの西側を守るように魔物除けの術式が彫られた城壁が建てられている。
魔物除けの術式は、 常に改良が進められており、年々と強力な魔物の侵入を防ぐように、進化を続けていた。
だがどんな物事にも例外はある。
そんな術式をものともせず、いともたやすく災害を振りまく常軌を逸した化け物が存在する。
王国で最重要討伐目標として、過去に幾度となく国民の命を飲み込み、名だたる魔法士を亡き者にしたことで、他の魔物とは区別するためにとある指定を受けた忌み嫌われる魔物の頂点の一角。
〔
そんな黒蛇が、ヴィーグナの北西の灰燼に帰した城壁から侵入してくる様子を目に捉えた。
――、、、、なんでこんなところに?!
王国、いや、エイヴァロンの人間なら必ず耳にすることのある、『原罪』の烙印を押された特級の魔物の内の一体。
ここ20年ではその被害報告は挙がっていなかった。
討伐報告も挙がっていなかったが、魔物同士の縄張り争い、もしくは寿命か、はたまた別の要因なのか、近年では人々の記憶から薄れかけていた。
――だのに、こんな唐突に、、、!!
バクバクと逸る心臓の音がうるさい。
ようやく、明日、ついに明日に迫った目的の成就も黒蛇のおかげで台無しになったことだろう。
「くっ!!」
都合の良いようにはいかない彼の宿願に、苛立ちが湧いてくるが、それを上回るほどの焦りと恐怖が彼に逃げるようにと警報を鳴らす。
「は、早く僕も、、。」
焦燥に駆られた彼のその後の行動は早かった。
大急ぎで荷物をまとめ、部屋の状況を確認する。
「、、、よし。」
忘れ物の確認もそれまでに、懐にしまった髪留めを大事そうに抑え、部屋から飛び出した。
――――
宿を抜け、広間に出てきたラースの耳をつんざくのは先ほどよりも大きく、感情に現実感が伴った悲鳴の嵐だ。
「おいおいおい、、、、。」
死屍累々。
運悪く直撃したのだろう、頭の半分が岩石になって弱々しく手を空にかかげる死体のなりかけ。
泣きじゃくる子供の手を引き、自身も涙を流す青年の姿。
怪我を負ったであろう老いた女性を担ぎ、一目散に逃げるガタイの良い男性。
避難を指示しながらも自身の顔に恐怖がへばりつくのを隠せていない若く、おそらく新人であろう衛兵。
多種多様な人間が入り乱れる。
老若男女、職業、能力問わず共通するのは黒蛇に対する恐怖の色。
その中に、王都での魔物墜ちの時のような侮蔑の光は目に宿っていない。
みんな生き残るために必死に逃げた。
――やばいだろ、これ。
「GRRRRUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!」
黒蛇の雄たけびがヴィーグナを揺らす。
ソレの位置はまだ北西の城壁からあまり動いていない。
対して、ラースの位置は南東の入り組んだところにある宿屋の前の広間だ。
距離は十分にある。
だというのに、、
「っち、、、うるさすぎだろ!!」
思わず悪態が出てしまうほどの音の暴虐。
おそらく、今の咆哮で北西の人々の何人かは耳から血が出た死体へと変わっただろう。
――やばい、やばい。早く逃げないと。でもどこに?!
この町の外へ逃げようとも、西側は黒蛇がうろついている。
城壁に近づく行為は自殺行為だ。
「きみ!!なにしている!!早く東の波止場に向かえ!!領主様の船が待機している!!!」
――そうか!海に逃げれば追ってこれない!!
「はい!ありがとうございます!!」
そうと決まれば話は早い。
東の波止場へと走り出す。
逃げ惑う人には目もくれず、一目散に船へと急ぐ。
生きなければ、まだ死んではならない。
やるべきことが彼には残されているのだから。
――――
次の通りを左へと曲がる。
そこにはまた、同じような入り組んだ迷路のような通りが続いていた。
「、、、、僕は、馬鹿だ。」
自分の方向感覚の無さに呆れを通り越して絶望する。
――やばいやばい、今どこだここ?!
この入り組んだ区画に入って時間を浪費してしまった。
危機的状況の中、自身の欠点のいつも通りの通常運転具合が憎たらしい。
刻一刻と、時が経つにつれ生存の可能性は減少するが、それに反して彼の焦りは反比例するかのように正常な思考力を奪っていく。
――いったん戻るか?!
どうにかして状況の打破を務めようと来た道に足を向けようとした瞬間、
「、、、あ、、ラー、、ス、、さん?」
突然、自分の名が呼ばれたことに驚き振り返ると、通りの角から小柄な男女が顔を覗かせていた。
「き、、みは確か、、、。」
見覚えのある顔だ。
確か名前は少女がキーナで、少年はタクト。
昨日、喧嘩をしていたところに声をかけた姉妹だった。
「キーナさん、、だったよね?どうしてまだこんなところに?」
「あの、あの!!た、たす、たすけてください!!」
どうやら彼らも非常事態に見舞われたようで、その顔は今にも泣きだしそうな表情でこちらに助けを請うてきている。
――、、、、、、。
「あっちに、こどもが、こどもが怪我していて、、。私たちだけじゃ抱えきれなくて、、。だ、だからお願いします。どうか、どうか!」
生憎と彼女が指さしたのは、自分が行こうとしていた元来た道の方角であり、助けるかどうか渋っていたラースには断る理由がなくなってしまった。
「わ、、かりました。案内をお願いします。」
意を決したように彼が告げると、姉弟は希望が目に灯ったような表情に顔が綻んだ。
「あ、ありがとうございます!!」
「おにいちゃん!ありがとござます!!」
姉弟そろって、ラースにお礼を告げる。
「お礼は良いので急ぎましょう。」
事態は刻一刻を争う。
猶予は残り少ないと感じ、二人を急かし、現場へと向かった。
「、、ハぁ、、ハぁ、、こ、ここです!」
息を切らしながら案内された場所は巨大な岩石によって潰された家屋で、粉塵と血の匂いが混じった砂煙は中の住人の未生存を予想させた。
そこには一人だけ運よく、衝撃で外に放り出されたようで、この姉弟の弟の方と同じか小さいくらいの少年の安否が確認できた。
「こ、この子、あし、足が折れてて、、、、。」
「これは、、、、。」
足が折れているどころの騒ぎではない。
本来、人体の構造ではありえない角度でその少年の右足は関節を起点に反対方向 へ直角に折れ曲がっていた。
「ゔぅぅ、い、いたい、、、。いたいよ、、。」
痛みでこちらを把握できていないのか、少年は独り言のようにつぶやく。
――無理に動かしたら、千切れるか、、、?
少年の膝はおそらく粉砕しており、青黒く内部出血を起こしている。
この非常事態の中、丁重に運んでいる余裕はない。
ならば、
「すぐに治療します!!痛いかもしれませんが踏ん張ってください。それと、力んで魔力を練るのはやめてください。治療が遅れます。」
聞こえているかもわからない少年に呼び掛け、術式の発動に取り掛かる。
「術式起動 術式名 『リバース』
術式効果 治癒
対象 設定なし
起動時間 設定なし
魔力循環 確認
術者の魔力資源 過不足なし
被術者の魔力抵抗 問題なし
第三者からの魔力妨害 問題なし
発動条件クリア
『リバース』 発動。」
魔法とは本来、魔力を媒介に事象を現実に具現化させる術。
魔力を精密に操る精密な技術はもちろん、魔法に対する理解と適切な魔力量と、事象を具現化させる想像力が必要になる。
六色の元素魔法には向き不向きがあり、己の適正に合った魔法を扱う者が多い。
技術、理解力、魔力量、想像力はその適正を決める要因であり、この国では、すべての人間が何かしらの魔法を使える。
そんな魔法を操る人間の中で、特異な人間がいる。
術式を持った者たちだ。
術式魔法を扱う人間にとって、元素魔法を用いるための要素以外にもうひとつ、魔力自体に性質を与える干渉力だ。
己の内に、術式を宿す者は魔力線から流れてきた魔力を術式を通して、性質を与え、外に特有の魔法を生み出す。
そんな稀な能力に恵まれた者が術式持ちの魔法使いだ。
――くっ、魔力練るなっつっただろうが。
術式を通した魔法は千差万別で、己の魔力だけで完結するような者もいれば、そうでない者もいる。
ラースの魔法はどちらの性質も含んでおり、今のように他者の魔力に自身の魔力のの性質を上書きして、術式の効果を分け与えることができる。
だが、他人が持つ魔力に対する干渉は、元素魔法の発動に必要な四つの要素と術式魔法の干渉力、この五つの要素を自身に発動する際とは違う、高水準なレベルで求められる。
――落ち着け、、。
冷や汗を垂らしながら、魔法の発動を続ける。
通常、魔法の発動の際は、引き金となる魔法名を口にするだけで、事象としての具現化を始める。
だが、ラースは己の特異な能力を扱う際、いつもより集中力を高める決まり事として、術式発動の際は魔法の発動設定を口に出し精神力を研ぎ澄ます。
「があああああああ!!!ゔゔゔ,いだいいだいだいいい!!」
歪んだ足がもとの位置に戻ろうと、徐々に正常な角度に戻っていくが、それに伴い尋常ではないだろう痛みが少年の身を這いまわる。
「もう少しです!頑張ってください!」
いつものような上辺だけの言葉ではなく、危機的状況での治療行為のため、内心、早く終わらせたいがため、珍しく本音の言葉が漏れた。
「がんばって!!」
「がんばえー!!」
姉弟たちも痛がる少年を励ますかのように声援を送る。
少年の関節部からは、青黒かった肌が健康的な小麦色に徐々に近づき、足の角度は既に正常な位置に戻っていた。
――あと少し!!!
最後の追い込みをかけるように魔力を振り絞り、患部の完治を急ぐ。
骨は繋がり、おそらく最後の一本であっただろう血管がつながった。
「完治しました。きみ、もう大丈夫ですよ。」
術式の発動を終え、無事に治療が終わったことを横たわる少年に告げた。
すると、少年は先ほどの激痛が嘘のように無くなったことに驚いた様子で、膝を折り曲げて具合を確認している。
「す、すごい、、、痛くない。どうやったの?」
呆けた様子で彼に問うてくる少年を無視して、周囲をラースは周囲の様子を確認する。
・・・・ゴロゴロゴロ!!!!
先ほどよりも遥かに近くなってきた破壊音が感じ取り、黒蛇が近づいてくるのを察知する。
――やばいな、、時間を使いすぎた。
「急ぎましょう!!波止場に伯爵が船を用意して待機しているはずです。さぁ早く!」
三人の子供たちに告げ、すぐにでもこの場を後にしようと先頭を切って走り出す。
「ラ、ラースさん!!そっちは違います。こっちの道です。」
「こっちだよ、おにいちゃん!!」
「・・・・。」
――チっ。
己の不甲斐なさと、ラースの狂った方向感覚とは異なり、正確な羅針盤を持つよくできた姉弟との差を胸に抱き、恥ずかしさを覚える。
「・・あ、ありがとうございます。急ぎましy、、、!!」
ギリィィィィ!!!ヴァゴォォォォォン!!!!!
訪れは唐突だった。
ラースから見て左前方の建物が凄まじい音を立てて瓦礫の山へと変わる。
それに伴い巻き起こる激しい防風。
思わず目を閉じその場で留まる。
鼻腔を突き刺す砂の風味。
肌に降りかかる無数の礫。
風が吹き抜けたのを感知し、恐る恐る目を開けるとそこには、、、、
――くそ!間に合わなかった。
眼前に佇むのは魔物の最強角。
漆黒に彩られた硬質な鱗を身に纏い、その巨躯からは尻尾の確認が不可能なほど倒壊した建物の後方へ延びている。
口端は魚眼を通した三日月の裂け、おそらく人血であろうものが付着しており、それを肯定するかのように口から延び出た舌は赤黒く変色したものだ。
眼光は鋭く、緋色に光る両眼は熱を帯びていると錯覚するほど禍々しく、こちらに殺気を放ち、睨んでいた。
――これが、『黒蛇』!!
「GYAAAAURAAAAAAAAAA!!!!!」
獣の威圧なんて比べるべくもないほどの迫力で咆哮する黒蛇に睨まれたラースは、自身の身体に蛙の遺伝子でも混じっているのではないかと感じる。
――くそ、一歩も動けない。
どうにかしてでも生きなければならない自分にとってこの状況は絶望的だ。
死になくない、まだやり残してることが、このために己の身に罰を刻んできたというのに、使命感だけでは指の一本でも動かせないとあざ笑うように、黒蛇の殺気はラースを磔にする。
「いやぁぁ、いやぁぁ、おかあさん、おとうさん、だれか!!いないの?!」
先ほど治療した少年が、まだ状況を把握できていないのだろう、おそらく瓦礫に埋もれてしまった彼の両親に気付かず、どこかに隠れているはずの幻想の中の両親に助けを求める。
「Syurururuuuuuu.」
恐怖を帯びた少年の声が広間に響き、黒蛇は視線はラースから外し、助けを求める少年と、姉弟たちの方へと眼光を突き刺す。
――…!今なら!!
視線が外れたことで、体の硬直が解ける。
――よし、動ける。
身体の操作権を取り戻し、すぐにでもこの場から離れようと体内の魔力を練り上げ、離脱の機を伺う。
――コイツが彼らに襲い掛かる瞬間。機会はその一回限り。
離脱のために魔力を体内に流し始め、身体能力の向上を図る。
身体能力の向上の効果を持つ魔法は、赤の属性を持った元素魔法の一種であり、魔法名は無く、体に帯びるだけで飛躍的に運動能力が上がる。
徐々に子供たちのもとへ近づく黒蛇の殺気は先ほどよりも色濃く肌に突き刺す。
「お、おねいちゃ、、、。」
「、、、!!だ、だいじょうぶ。タクトはわたしが、、、私が守る。」
恐怖で声を出す弟を、自身も怖いだろうに黒蛇の姿を弟に見せないように抱きしめる姉の姿がそこにはあった。
脳裏にチラつく過去の幻影。
幸せに過ごしていた幼き日。
妹の花が咲いたようなはにかむ笑顔。
守れなかった、助けれなかった、もう一度過去に戻れればと何度も渇望した。
今はどこにもない、兄と妹の微笑ましい毎日。
だから、だからだろうか、そんなことを思い出してしまったから、彼女らの姿と過去の幻影が、今は亡き妹が、幼かった頃の自分が、重なったのだろうか。
――僕は、、、。
この姉弟を見ていると、もう一人の自分が語りかけてくるのだ。
また逃げるのか、また見殺しにするのか、またお前は妹を、僕達を壊すのか、と。
――、、、わかったよ。
もう手遅れだった。
足は勝手に動き出し、術式に魔力が流れる。
もうこの世に妹が、リィナがいないとわかっていても、彼女らを、目の前の姉弟を助けることになんの因果関係がないとしても、自分が逃げてしまったら、過去に縋ってきた自分を否定することと何の違いがあるのか。
そう、思ってしまったから。
「術式起動 『リバース』!!!」
気づいたときには、ソレの右眼を抉っていた。
発動した術式は、油断していただろう黒蛇の体内の魔力は抵抗する間もなく、彼の魔法の干渉を受ける。
付与した性質は逆流。
黒蛇の魔力は逆流し、自身の魔力線を傷つける。
「GYAURRRRRRRAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!」
逆流した魔力は暴走し、行き場のない魔力線内を突き破るように、内側から神経、血管、筋肉を突き破る。
「痛いよなぁソレ、、、。よくわかるよ。」
凄まじい痛みに身もだえする黒蛇は右眼を真っ赤に染め、眼孔から大量の血液が零れている。
「SYURuuuuuuuu!!!」
呻きながらも殺戮の優先順位を変え、痛みの元凶を食い殺さんばかりに、ラースに襲いかかる。
ブゥオン!!
「っっっぶね?!!」
眼前を過ぎるは黒蛇の後頭部、驚くべき素早さでラースの頭を食いちぎろうと通過する黒蛇の攻撃。
――今ので死ぬかと思った。
あらかじめ付与していた赤の元素魔法のおかげか、間一髪で右前方に飛んでいたラース。
そのまま一息に距離を取り、少し離れた位置にいる三人の子供に声を飛ばす。
「早く逃げてください!!!もう船も出発してしまう!!」
幸か、不幸か。
ラースの子供たちの呼びかけにも気にした様子がなく、黒蛇は彼へ視線を一点集中している。
「でも!!!でも、ラースさんは??!!」
――あぁぁもう、ウザったい。見ればわかんだろ!!!
「見ればわかるだろ!!早くしろ!!!」
今まで生きてきた中で最大の修羅場に遭遇し、彼に普段の演技をする余裕は粒一つとしてなかった。
「、、、。でも、そのままじゃ、、、、!!」
それでも彼が心配なのか、姉の方、いや、弟も少年も、こちらを固唾をのんで伺っている。
「僕は死なない!!!後で追いつくから!!早く逃げてくれ!!」
そうだ、死ぬわけにはいかないし、無駄死にもごめんだ。
だからはやく、、。
ラースの必死な形相に覚悟が決まったのか、少女の目に意思が宿る。
「、、、。いくよ!二人とも!」
年長の少女と比べ、呆然とした顔で見守っていた二人の少年は、彼女に手を引かれ、名残惜しそうに足を動かし始めた。
「約束だからね!!!船で待ってるから!!!」
少女は最後にそう言い残し、その場を後にした。
――――
二人きり、いや、一体と一人取り残された広間でラースは己の愚行を内心嘆く。
――なにしてんだか。
「はぁ。。」
ここ一番での機会を水の泡にし、戦闘に入ってしまった状況にほとほとあきれ果て、ため息をつく。
「GARURURGAAAAAAAA!!!」
用は済んだか、とでも言いたげな黒蛇の様子に緊張が走る。
完全に逃す気はない相手の殺気にあてられながらも彼は口を開く。
「見逃してはくれないか?」
「SYURARARARAAAAAAAAAA!!!!!」
言葉の意味を理解しているかのように、彼の冗談交じりの声は咆哮にかき消された。
「だよな・・はぁ・・・」
何度目かもわからぬため息を漏らし、ラースも腹をくくる。
「お手柔らかに頼めるかな?」
ふざけた態度は普段は出せぬ素のものか、黒蛇の暴虐にあてられたことによる自暴自棄の表れなのか。
火蓋は切られ、戦闘は再開する。
ラースの愚行が招いたこの代償は、一体どれだけのモノになるのか。
彼のこの後に待ち受ける数奇な運命はこの時に決した。
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