第4話
ダズが子どもたちに問い掛ける。「それじゃあまず質問だ。このビギナ村の周りには何がある?」
「「「「何もない!」」」」幼い子たちが一斉に声を上げる。
「確かに何もないな!そうじゃなくてもっと地形的な意味でよ!?」「東に森がある!」
「そう!東には森があるな?」
ビギナ村の東には森があり、魔物も低ランクしか居らず、小動物や小さな虫ばかりのため、静寂の森と呼ばれている。
「この森は昔に何回か調査とかして奥に建造物がある事が分かったんだが、如何せん状態が悪くてな。推測でしかないがおそらく古に建てられた祠だと言われている。今じゃ何が祀られていたかなんて誰も知らないが。まあそれぐらいだ。お前らもしょっちゅう遊んでるだろ?」
「何も無いけどねー」「ウサギさんかわいい」「危険が少なく穏やかだから虫の観察をするのにスゴく向いてる!!それに生態系も変わっててこの前なんか」
「タツカー?落ち着けー?」暴走しかけるタツカをダズが止め、話を続けていく。
「そんでビギナ村から今度は北に真っ直ぐ進んで行くと王都ロワイヤがある。たまに行商人がそっから来るから皆知ってるよな?ロワイヤは三百年ほど前にこの周辺一帯を支配していた魔物を倒した勇者の一人が建国したんだ」
「勇者!?勇者!カッコいい!」「おれも勇者になってドラゴン倒すんだー!」「覚醒したらどんな勇者になるかなー?」「僕は虫の勇者になる!そして虫を愛でる!そうに違いない!」
王都ロワイヤの説明の際に出てきた勇者という単語に皆が盛り上がる。この世界において、勇者とは魔王を倒すたった一人ではなく、復数人存在する、世界に溢れる凶悪な魔物や魔族に対抗するために生まれた人類の切り札的存在だ。
「勇者に覚醒するにはいくつか条件が在るらしいんだが、細かい事は正勇者教が管理してるから分からねえ。分かってんのは勇者の力は受け継げるって事だ。実際ロワイヤの王は代々同じ力を受け継いでるらしいしな。」ダズが勇者について説明している中カイルがアシュランへと問い掛ける。
「アシュランは勇者に覚醒するための条件って何か分かる?」
「んなもん知らねえよ。強いて言うなら本人の素質とかか?」
「僕はね、心の強さだと思うんだ?」「なんでそう思うんだよ?」
「だって勇者ってどんな物語でも愛と勇気と絆の力で強くなるでしょ?だから大事なのは心かなって」
「クサイ事言ってる自覚あるか?」
「勇者って言うのはクサイぐらいがちょうどいいんじゃない?」「そうかぁ?」勇者に成るための条件について語り合う二人の間に、またしてもライノスが割り込んで来る。
「そんなのどれだけ強いかに決まってんだろ!?だからお前には無理だアシュラン!」
「どうしてこんなにライノスに絡まれるの?」「知るかよ。あんなヤツの気持ちなんて考えたくもねえ」
「なんだと雑魚!?」「うるせえよデブ!」「デッ!?デブじゃねえよこれは!ガタイが良いって言うんだよ!」ライノスは、自分より弱いアシュランが自らを差し置いてカイルやその妹といる事が気に入らないのだがアシュランは知るよしもない。
「お前らまだ授業中だぞー、喧嘩すんなー」ダズが注意するが、二人の熱に充てられて子どもたちもじっとして居られなくなってしまった。
「授業飽きたー!」「早く試したい!おれの必殺技、スーパーダイナミックスマッシュ!」
「まだ授業全然してねえだろー?まったく、今日言いたかったのは、ビギナ村には何もねえから伸び伸び農業と酪農出来て美味しい食べ物作れるよって事!じゃあもう終わり!今日は模擬戦するからするから、準備運動しとけー?」
「「「「はーい!」」」」こうして座学はあっという間に終わり、剣の授業に入っていく。
「しゃあ!じゃあやるぞアシュラン!またライノス様との圧倒的差を思い知らせちまうなあ!」待ってましたとばかりにライノスが挑んで来るがアシュランはそれを無視し、カイルを模擬戦の相手に誘う。
「カイル、今日は俺と手合わせしてくれないか?」
「全然いいよ。でもライノスはほっといていいの?」
「全然いい」「おい!?」ライノスが何度も話しかけて来るが、結局アシュランとカイルで模擬戦する事となった。
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