【完結】ヒイラギ皇国建国記~その男の娘は革命軍を勝利へと導く~

路地裏ぬここ。

プロローグ

プロローグ 可愛い君は僕の戦友

「気持ちいい……頭がふわふわする」


 キャッツランド王国王弟・シリル・オリバー・キャッツランドは、頬を上気させ、潤んだ瞳で夜空を眺める。


 ここはヒイラギ皇国皇宮の屋上。


 屋上からは遮ることもない満点の夜空が見える。今日は空気が澄んでいて、南国では見ることができない星座も見える。


 大陸西側に位置する中堅国家・ヒイラギ皇国は、三年前に立ちあがったばかりの新興国。豊富な資源、高い技術力を持つ国として、新興国家ながら世界中から注視されている。


 この国の特徴は高い福祉を国民に提供しているところだ。「皇族は国民の公僕である!」をキャッチフレーズにし、初等教育は無償、国が運営する医療施設である養生所も無償。その代わり皇族や貴族の生活は他国よりも質素だ。


 その公僕精神は見習うべきところが多いとして、海外から官吏が視察へ訪れることも多い。


 明日はヒイラギ皇国建国から記念すべき三周年。三周年イベントに参加するためにシリルはここに来ている。


「ねぇ、アイゼル」


「シリル、その顔でこれ以上近づいてこないで」


 真横に横たわる、ヒイラギ皇国皇配殿下であるアイゼル・マテオ・ヒイラギに呼び掛けるも、アイゼルからは手で近づくなと制される。


「その顔ってどの顔?」


「……自覚ないのか? 困ったものだ。だから君とサウナに入りたくなかったんだ」


 シリルのために、屋上に臨時のテントサウナを作った。湯浴み着ではなく素っ裸で入りたいと言うシリルのリクエストに応えるため、屋上を貸し切りにして、素っ裸でOKにしてあげた。


 だが、サウナに入った途端、シリルの頬も全身も薔薇色に染まり、甘い吐息を吐きはじめた。


 用意された水風呂に入り、状態のシリルは、瞳が潤んでとろんとした表情だ。これらはすべて生理現象なのだが、若い男にとって目に毒だ。


「今の君は素っ裸で男のシンボルを晒している、かつ、僕は既婚者で男色家ではない。そんな僕でさえ、ちょっといけないところが反応しそうなんだ。近づかないでくれ」


 シリルは男性としては小柄な体躯を持ち、顔立ちは完璧なまでに愛らしく整っている。キャッツランドの天使の王弟殿下、男装の麗人と呼ばれ、シリルが微笑むと周りは一斉にその微笑みに魅了される。


 そんなシリルがサウナや温泉に入れば、その美貌から清廉さが消え、凄まじい色気が増す。シリル殿下とサウナに入ると道を踏み外しそうになる、と既婚男性から声があがっている。


 皇宮内には官吏や近衛騎士が利用できるサウナもあるのだが、当然シリルは出禁とされている。


「みんな酷いよ。僕だって好きでこの顔じゃないのに。さっきはトイレで立ちションしてただけなのに、君のところの大臣達が悲鳴をあげたんだ」


「……女子が立ちションしてると思われたんだよ。君だって女の子が物理的に不可能な立ちションをしていたらビックリするだろ?」


「…………僕は正真正銘の男なのに」


「わかってるよ。でも、そのエロい顔は自覚してくれ。君だって襲われて無駄な労力を使いたくないだろ? サウナで不必要に男性に近づかないように。そろそろ着替えて下に降りよう」


 アイゼルは、シリルのエロい顔を直視しないよう努めながら手を差し伸べた。


「ほら、拗ねないの。サウナ上がりのビールを飲もう」


 アイゼルは拗ねるシリルにそう声をかける。シリルは先ほどまでの不機嫌さは消し、蕩けるような笑みを浮かべる。


「なんでサウナ上がりのビールってあんなに美味しいんだろうね」


 妖艶さが消えはじめ、天使の微笑みを浮かべるシリルの頭を、アイゼルはぽんぽんと撫でた。


「君は本当に可愛いねぇ。少しレイが羨ましくなってきたよ」


 レイ――レイチェル・キングダム・キャッツランドはシリルの愛妻だ。シリルは妻を伴ってこのヒイラギ皇国を訪れている。


 立ちあがると屋上の眼下には皇都・マテオの夜景が広がる。宝石箱のような夜景が夜空と繋がって見える。シリルは多幸感を味わいながら夜景を眺めた。


「シリルと初めて会った時、この夜景を君と見られる日がくるなんて思わなかった。成功を夢に描きながらも、革命の礎となって死ぬ運命なのかと思っていた」


 アイゼルは真摯な表情でシリルに言った。


「君のおかげだ、シリル。ありがとう、僕の戦友」


 シリルはふわりと微笑んだ。


「君と君の妻である皇帝陛下、そして素晴らしい仲間達のおかげだよ。僕はその素晴らしい仲間達の一員に過ぎない」



 シリルは今よりも人間として未熟だったあの時のことを思い返す。辛いことも、葛藤もあった。でも間違えなく、大切な宝物のような思い出だった。



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次ページ、何の罪もない王子様の処刑シーンが入ります。(そこまでグロテスクではないハズ)


可哀想なシーンですが、なぜ主人公の親友が反逆に至ったのか、なぜ主人公がそれに肩入れするのかを語る際の外せないシーンと思いましたのでそのまま掲載しました…!


さらに3P目では、主人公の流血シーンがあります(これも大したことはない…はずだけど…)


主人公の特殊体質の証明として、必要なシーンであるため入れています。


苦手な方はあらすじの内容を読めばそのシーンは読み飛ばしても話は繋がると思いますので飛ばしちゃってくださいっ!


初日8話まで公開予定です。後は下書きを手直ししつつ、できるだけ毎日更新していきます。ぜひぜひ作品フォローをして応援よろしくお願いします!

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