くりかえす君とのパヒューム

明鏡止水

第1話

「浮気してんだろ……ッ!!」


ぱあん!!!!!


相手からの平手打ち……。


崩れ落ちる


         ぼく わたし


相手が去ってから、しぼりだす……。


「……して、ないよ……」


         ぼく わたし


の体質。


それは、体に他者の体臭や洗濯洗剤、柔軟剤、香水の香りが驚くほど染み込む事。


そのせいで、恋人からは毎回


「他の人の香水がにおう!!」


と手酷くフラれてきた。


今日みたいに暴力を振るわれるのもしょっちゅうだ。


それでも、


        ぼく わたし


は相手を求めることをやめられない。


なぜなら家には誰もいなくてさびしいし、他の人の匂いを嗅いで安心したいから。


最初こそ


シャンプー変えた。


新しいトリートメント、どう?


ヘアケア変えた。


実は香水買っちゃった。


香水変えた。


洗濯物の匂いじゃない?


え? いやな匂いじゃない?

うちペットいるから消臭スプレーよく使うんだけど!


……付き合っているうちに使う言い訳はキリがない。


そんなある日。


頰を腫らした者同士のじぶんたちは、出会った。


相手からは、何の匂いもしなかった。


無臭なじぶんたち……。


秘密を打ち明ける。


「すぐ相手の匂いや香りを体が吸収して、浮気を疑われて殴られて終わる……」


すると、自分たちは意気投合して、お互いを大切にしあい。


やがて好きになって、でも……。


相手の髪からも首筋からもなんの匂いもしない。


人間は、無意識のうちに匂いで相手を選り好んでいるはずなのに……。


愛し合っているのに、不安で。


つい、言ってしまった。


「ねえ、好き?」


声がそろう。


……。


くすりと笑う。


「好き同士なら、いいよね……」


そうしてぼくたち、わたしたちは。


日々の香りを吸収し続けながら、結婚します。


すると、二人して、金木犀の香りが匂いだす。


「よかった、外のにおいは、かんじられる」


ふたりで、しあわせのにおいをたくさん嗅ごう……


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くりかえす君とのパヒューム 明鏡止水 @miuraharuma30

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