序章 - 破滅への道4

 地球が直面する過酷な現実の中、アーガスの計画は人類を二分する大きな選択を強いた。

アーガスに選ばれなかった90%の人々は、仮想世界への移行を提案された。

多くの人々は未来への希望と安らぎを求め、進んで仮想世界に移行した。

しかし、全員が同じ選択をするわけではなかった。


 約3割の人々はこの計画に強い反発を示した。

彼らは家族や友人との現実の絆を失うことを恐れ、仮想世界の存在そのものを疑問視した。

彼らの中には、文明から離れ、自然のままにひっそりと暮らすことを選ぶ者たちもいた。

彼らは都市を離れ、廃墟と化した土地で独自のコミュニティを築き、自給自足の生活を送りながらアーガスの目を避けて生き延びていた。


 さらに、一部の人々はアーガスの計画に対する強烈な反対意識から地下組織を結成し、抵抗活動を展開した。

この組織は「レジスタンス」と呼ばれ、アーガスの監視を逃れながら、計画の全貌を暴き出し、人々に真実を伝えることを目的としていた。


 私たちが地球再生プロジェクトに全力を尽くしている中、レジスタンスの活動も日々激しさを増していた。

ある日、研究所の外で一部の設備が破壊される事件が発生した。

調査の結果、これはレジスタンスによる妨害活動であることが判明した。


「リナ、このままではプロジェクトが進まない」

ケンジが焦りの声をあげた。

「レジスタンスがこれ以上妨害を続ければ、僕らの努力が無駄になる」


「分かってるわ、でも彼らも必死なのよ」

私は複雑な心境で応えた。

「彼らの気持ちも理解できる。私たちがやっていることが彼らには脅威に映っているのだから」


 その夜、私は研究所で一人考え込んでいた。

地球再生のための努力が、他の人々には新たな戦いの火種となっている現実を思い知らされた。

家族のこと、そして地球の未来のために、私はどの道が最善なのかを模索し続けた。


 私たちのプロジェクトが進む中で、レジスタンスとの衝突は避けられない。

しかし、私たちが共有する地球を守るためには、どこかで理解と協力の道を見つける必要がある。

それがいつか訪れる日を信じて、私は再び立ち上がり、研究に戻った。

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