その二日後には、祈里は退院の運びとなった。

 園城寺らに見送られて、その帰り道は迎えに来た会社帰りの悠真が池袋まで一緒だった。


 少し夜風に当たりたいといって祈里も池袋で降りた。

 二人で西口公園に向かい、噴水の前まで来て自然と祈里の足が止まった。

 闇に包まれながら、断続的に水の弾けるさまを眺めていたが、おもむろに彼女が口を開いた。


「ところでさ、気になっていたんだけど」

「ん?」

 形の良い祈里の横顔に目をやると、彼女も彼を見上げるようにした。


「なんで私が電話したのに折り返してくれなかったの」

 悠真は、まるで覚えのないことを突然言われて困惑した。

「いやいや、待ってくれよ。着信はなかったよ。そういう宮野は俺の遅刻連絡のメール、スルーしただろ? そのあと何回も電話したけど出てくれなかったしさ」


 今度は祈里が首を傾げた。

「何もなかったよ。メールも電話も」

「あれ、何で? 俺は宮野に聞いていたナンバーにショートメールと電話、両方したんだぜ?」

「本当に何もなかったよ」

 悠真が重ねて主張しても、祈里も食い下がった。


「な、何でだろ?」

「んー?」祈里は、こめかみに握った拳をあてて考える仕草をして、しばらくじっとしていたが、やがて両手に腰を当てて目を上げた。

「もしかしてさ、どっか違うところに掛けてたんじゃないの」

「え……そんなはずは……」


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