…
その二日後には、祈里は退院の運びとなった。
園城寺らに見送られて、その帰り道は迎えに来た会社帰りの悠真が池袋まで一緒だった。
少し夜風に当たりたいといって祈里も池袋で降りた。
二人で西口公園に向かい、噴水の前まで来て自然と祈里の足が止まった。
闇に包まれながら、断続的に水の弾けるさまを眺めていたが、おもむろに彼女が口を開いた。
「ところでさ、気になっていたんだけど」
「ん?」
形の良い祈里の横顔に目をやると、彼女も彼を見上げるようにした。
「なんで私が電話したのに折り返してくれなかったの」
悠真は、まるで覚えのないことを突然言われて困惑した。
「いやいや、待ってくれよ。着信はなかったよ。そういう宮野は俺の遅刻連絡のメール、スルーしただろ? そのあと何回も電話したけど出てくれなかったしさ」
今度は祈里が首を傾げた。
「何もなかったよ。メールも電話も」
「あれ、何で? 俺は宮野に聞いていたナンバーにショートメールと電話、両方したんだぜ?」
「本当に何もなかったよ」
悠真が重ねて主張しても、祈里も食い下がった。
「な、何でだろ?」
「んー?」祈里は、こめかみに握った拳をあてて考える仕草をして、しばらくじっとしていたが、やがて両手に腰を当てて目を上げた。
「もしかしてさ、どっか違うところに掛けてたんじゃないの」
「え……そんなはずは……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます