13
紗良から作戦失敗の報を受けた深井は、とあるマンションの一室のアジトであるセーフハウス内で、島田と肩を並べてパソコンの画面に見入っていた。
街頭の防犯カメラがとらえた安村のタクシーの乗車する様子を繰り返し流している。
「奴はこのあと、すぐに降車したのだ」
深井は、眉間に深いしわを刻むと、ギリギリと歯噛みした。
「しかし、安村のヤツはどうやって携帯に埋め込まれたGPSに気づいたのだ?」
島田は皆目見当がつかないのか、黙り込み唸るばかりだった。
そのとき、柔らかい電子音が鳴った。玄関の呼び鈴である。
壁際の男性職員の一人が、対応すべく玄関へ向かった。
「誰だ?」
深井が不審がったが、居合わせた誰にも心当たりはないようだった。
ここは敵対組織やマスコミ等から身を隠すセーフハウスなのであり、団体名の看板等は一切なく、表札も個人名でしかも偽名だった。
よって外部の人間が、自分たちが何者であるかを知った上で訪ねてくることは、まずないのである。
玄関で訪問者とやり取りをしていた職員が部屋に戻ってきた。
十枚ほどうず高く積まれた平たい箱を、幾分よろよろとしながら両手で抱えている。
ソファで休んでいた大川が、それらが全部ピザの箱だと分かると短く口笛を吹いた。
深井は彼の横顔をにらみつけると、職員に目を向け訊いた。「なんだ、それは?」
職員は、こともなげに答えた。
「ピザです」
「分かっておる! これからピザパーティーでも始めようかっていうのか?」
深井は両手を広げると、苛立ちとない交ぜになった笑みを浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます