…
「日本政府の一組織である我々、そして我々の家族に対する度重なる拉致等を予告した脅迫、デマによる名誉毀損、インターネット攻撃による業務妨害。その他諸々の犯罪行為を執拗に組織的に行っている地下組織『アフタートゥモロー』。その作戦実行犯リーダーがここにいる安村だ」
悠真は衝撃を受けたが、そのすぐ脇に立つ安村は、まるで深井の言葉が耳に入らなかったかのように微動だにしなかった。
「この男を呼び出してもらった理由は実をいうと、この前君に話したようにウィルス検査などではない。国家転覆を図る
悠真は、安村の顔を見上げた。
「安村、今の話は本当なのか?」
安村は何もいわず首をすくめる。
深井の左右にいた男たちが、安村を挟むようにして近くへ寄った。
悠真は幾分身を引いたが、その様子を険しい目つきでうかがっている。深井は釘を刺すようにいった。
「ま、早瀬君もいろいろ思うところはあるだろうが、こいつはれっきとした犯罪者だ。くれぐれも、邪魔立てはせんように」
安村に向き直った深井は、勝ち誇った笑みを浮かべた。
「安村、我々としては手荒な真似はしたくないのだが……」
「そいつは、オレも同感だ」
安村は平然としていった。
「フフフ、貴様の強がりがどこまで持つのか見ものだ」
片方の男が出入口を指さし、出るよう促した。
安村は観念したのか、手を挙げて無抵抗の意思を見せながら戸口まで歩いた。そしてそのまま、ゆっくり顔半分だけ悠真の方へ振り返った。
「ところで早瀬」
「ん?」
「こいつに、いくらもらったんだ?」
「……三万」
安村は短く嘲笑った。
「へっ! そんなはした金でオレを売ったのか、お前」
悠真は、さすがに目をむいた。
「そういうつもりじゃなかったんだよ……」
「皆、そういうんだよ。そういいながら、結局簡単に人を裏切るんだよ」
「お前、俺のこと、信じてないのか?」
「ヘイ、ユー。つまりお前は油断しすぎなんだ。そう言われたくないなら、何でも物事を鵜呑みにすんな。知らず知らずこういう狡猾な連中の手先になりたくなかったら、もう少しここを使うんだな」
そういって安村は、挙げたままの右手の指先で、自分の頭のヘルメットをコツコツと鳴らした。
「ちっ! 全く口の減らん奴だ……」
深井は渋い顔をして、二人の男に安村を連れ出すよう、顎先を横に振って指示した。
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