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園城寺は、今日最後のタイムトラベルのモニター客とのやり取りを終え、呼出しボタンを押した。
先導役のスタッフがやってきて、男性客に声を掛けると手際よく外へ連れ出した。
二人が出ていき扉が閉まると、彼の顔からはそれまでたたえていた穏やかな笑みが消えていた。
パーティションの向こうにある機器に目をやり、手元のパソコンの画面と交互に見る。指差し確認をしてつぶやくようにいった。「よし、順調だな」
助手の羽田丸美が、回転椅子を回して彼の方を向いた。
「博士、お話が……」
「ん?」
彼は眉を浮かせると、彼女の顔を伺うように斜めに見た。「なんだね?」
羽田が閉まっている扉にちらりと目をやった後、声量を落としていった。
「あの例のモニターさんですけど」
園城寺は、その言い方でそれが誰のことなのか察している様子だった。彼女には何も問いかけず、手振りで話の先を促した。
「この方と全く同じ日に遡りたいと希望された方が、また別におられました」
彼は特段、表情を変えなかった。それくらいの偶然はあると踏んでいるようである。
羽田はそれを見て取ったのだろう。自分のパソコンのキーボードを叩いてモニターの名簿を表示させた。
「例の方が挙げていた関係者の性別は男性、イニシャルがY・Hとなっています。そして同じ日に遡りたいと希望された別のモニターさんですが、こちらも早瀬悠真さん、Y・Hです」
「……なるほど」
「それでもまだ偶然とお思いで?」
「ふむ?」
園城寺は、羽田の言い回しに首をひねった。「というと?」
「この男性、早瀬さんの挙げた関係者の性別、イニシャルが例のモニターさんと一致しています。互いに述べた相手方の年齢もほぼ一致が見られます」
さらに羽田はデータを読み上げる。
「決定的とも言えるのが、場所です」
「場所とは?」
「二人ともB橋のDビルディングの名を挙げています。待ち合わせをしていたと考えられます」
「つまり、この日のことで、二人が互いに相手のことにわだかまりがあって遡ろうとしていたというのか?」
羽田は黙ってうなずいた。
「なんてことだ」
園城寺は、そう声を漏らすと、当惑の表情を浮かべた。
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