…
「これから早瀬君に、私たちが監修した通報アプリをダウンロードしてもらうね。安村君と会う前にこのアプリを立ち上げておいて。リンク先は、今メールに貼り付けるから」
紗良はそう言いながら、スマホの画面に当てた指先を細かく動かしている。
悠真もスマホを取り出すと、紗良からのメールを開いた。
そこをタップすると、小さな英文字がびっしりと並んだ黒い画面に遷移する。
"download"という反転文字に触れると、すぐさま新たな動作が始まり横長のゲージが表示された。
それがまもなく100%になると"now install"と点滅表示され、やがて"completed"という文字列に置き換わった。
「終わった?」
「たぶん」
「あとは当日、安村君と会ったら、祈里に電話を掛けるふりをしながら、今画面に出ているボタンをタップするだけよ」
悠真は画面に見入ったまま、黙って頷いた。
「ビルの外で待機している、深井課長のチームや病院へ移送する医療スタッフら全員のスマホ等の通信機器に通報されるの。そしたら、一斉に安村君の捕捉に動くことになっているんだ」
紗良は自分の手にしていたスマホを耳にあてた。
「あとはこんなふうに電話を掛けている演技をして、結局彼女が電話に出なかったということにして切るような仕草までできたら完璧。不審に思われることはないかな」
「だろうね」
悠真は、肩をすくめた。
「あ、そそ。私はその当日のミーティング、キャンセルするからよろしくね」
「え、なんで?」
「あたしは、皆のサポート役。通報アプリの動作で一斉に動き出すメンバーの様子をモニタリングするんだ」
さすがに悠真も驚く。会合をリードするはずの紗良も抜けたら、場がもたないだろう。
「ええ? ちょっと待ってくれ。俺一人きりになるのか?」
「二人じゃん。安村君と」
悠真は、紗良のくだらない屁理屈に眉を寄せた。
深井は苦笑いした。
「相変わらず、ああ言ったらこう言うね、君は」
紗良は目をしばたたいた。
「課長、それは私に感心してんですか。それとも、けなしているんですか」
「フフフ、それは言えんな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます