山狩り

金木犀

第1話

この国には、到底手の内では数えられないほどの「山」がある。

我々【山狩り】は、その「山」全てを登頂する。そう、山を狩り尽くす。それ故に、山狩りなのである。


第一話 討頂


「ここが…?」

「なーんにもないところですね〜」

私は山田 実(みのる)。これといった特徴のない名前のため、覚えにくくて申し訳ない。

そして、私と共に来ている女性は園田 紗奈。世間一般でいうところのギャルと括られるであろう女性だ。

本日、我々は山を登りに来た。そう。「日本一低い山」を。

「これは…山というべき…なのか?」

「山っていうか〜…丘?」

ご存知の方もいるだろう。「日本一低い山」。インターネットで検索すればわかる通り、ほとんど丘と言って差し支えないのだ。いや、むしろ丘と言う方が正確に思えるだろう。

「ほっ…これで登頂〜!…で、いいんですか〜?」

「あぁ…おそらく。あ、そうだ。この旗を刺してくれ。写真を撮る。」

私は山狩りと書かれた少しチンケな旗を園田に渡し、山の中央目掛けて刺してもらう。

「イェーイ!」

カメラに向かって、園田がノリノリでピースをする。

と、同時に地響きが鳴り始める。

「…来たか」

「こんなちっこい山なのにデカすぎません!?」

「こいつだけの胆力では無い。ほら、もう出てきたよ。」

小さな山から、まだ産まれたてかと思える大きさの怪獣が飛び出る。

「わ!ちっこ!可愛い〜!」

その瞬間、爆発音かと思えるほどの轟音が周りから鳴り響く。

「来たぞ!園田!」

「うっす!」

園田はすこしふざけた返事をし、私に習って背中の太刀を抜き取る。

「お……っも!」

「それが最低限でも必要な刀身の長さだ!慣れろ!」

私が一歩踏み出すと同時に、地響きが重なる。

振動に合わせ、翔ぶ。

怪獣の足元へと向かい、片足を上げた瞬間、もう片方の足を切り落とす。

倒れていく怪獣の落下方向に合わせ、腕を切り落とし、そして首を切りつける。

そして、まだエンジンに慣れない園田がふらつきながら私に追いつく。

「…ぅっしゃー!!!」

今までに聞いた事のない怒声をあげ、私が傷をつけた部分に正確なダメージを与え、怪獣の息の根を止める。

「…っすぅぅ…はぁぁぁ…」

「園田、ういっ」

私は園田に拳を向ける。

「…うっす」

園田は満更でも無い顔をし、グータッチを交わす。


第一話 終

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