第85話

はぁ…、どうしたらいいんだろう。






このままここにいる訳にもいかないけど、かといってあの人達のいる部屋には出たくない。また、発作が起きてしまうかもしれない。






他に出口はないだろうか…、と後ろを振り返って部屋の中を見回すけど、やっぱり出口は1つしか無さそうで。






もう諦めてドアから出ようか…、と半ばやけくそに考えていれば、ふとベッド脇に置いてある机の上の灰皿が目に入る。







ドクンッ、と心臓が嫌な音を立てた。







…っ、あの、煙草は。







何本か残った吸い殻には見覚えがありすぎて。







全体的に真っ黒で、金色のラインが1本と何か文字が書かれている珍しい色をした煙草。







何で、ここに…。
















―――「この煙草、気に入ってるんだよね。」











ほんのりと香るバニラの甘い匂いを思い出して、酷く吐き気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る