第72話

「…い、や…、やめ…っ…。」






微かにそう呟いたのが聞こえた。






あの時と同じように、魘されてるのか…。






そんな様子を見て、無意識にグッと腕に力が入る。






この子は、何を抱えてんだ…?






…いや、今はとりあえず移動しねぇとな。






頭の中に残る疑問を押し込め、旧校舎に向かう為に足を動かした。







そして旧校舎に入り廊下を歩けば、どいつもこいつも目を見開いていて固まっているのが視界に入る。






それらの視線を全て無視して、いつもの溜まり場の部屋のドアをガチャッと開ければ、ここでも痛いぐらいに視線が突き刺さった。





何か言いたげな表情をしている奴等の横を無言で通り過ぎ、いつも俺が寝るために使っている部屋のドアを開ける。





部屋の中は、ダブルベッドが1つと必要最低限の物しか置いてない。






そのベッドに、ゆっくりと降ろした。

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