第61話

その声に反応して閉じていた目を開けば、私の顔に届くギリギリの所で女の人の手が止まっていた。





危なかった…。





女の人達は、声がした方に振り向いて顔面蒼白で固まっていた。






「ま、牧谷さん…。」






1人の女の人が小さくそう呟く。






私もそちらに目を向けると、牧谷さんも私を見ていたようで、目が合った。






「何してるって聞いてんだけど。」






黙ったまま固まる女の人達に、再びそう聞く牧谷さん。





真っ黒なオーラを纏っていて、私まで身体が強ばる。






「こ、これはただ、話してただけで…!」






そう言いながら、慌てた様子で牧谷さんの方に駆け寄り腕に手を伸ばそうとする女の人達に、






「…触んじゃねぇ。目障りだ、失せろ。」






鋭い眼光で睨みつけながらそう吐き捨てていた。






それを間近で浴びた女の人達は、顔を青くしながら私の方に一切振り返ることなく走り去っていった。








シーン、と沈黙が流れる。






えっ…と。一応…助けてくれたのかな…?







私の方を無言でじっと見据えている牧谷さんに、







『あ、の…、ありがとうございました。』







とりあえずお礼を言って、小さく頭を下げた。

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