第61話
その声に反応して閉じていた目を開けば、私の顔に届くギリギリの所で女の人の手が止まっていた。
危なかった…。
女の人達は、声がした方に振り向いて顔面蒼白で固まっていた。
「ま、牧谷さん…。」
1人の女の人が小さくそう呟く。
私もそちらに目を向けると、牧谷さんも私を見ていたようで、目が合った。
「何してるって聞いてんだけど。」
黙ったまま固まる女の人達に、再びそう聞く牧谷さん。
真っ黒なオーラを纏っていて、私まで身体が強ばる。
「こ、これはただ、話してただけで…!」
そう言いながら、慌てた様子で牧谷さんの方に駆け寄り腕に手を伸ばそうとする女の人達に、
「…触んじゃねぇ。目障りだ、失せろ。」
鋭い眼光で睨みつけながらそう吐き捨てていた。
それを間近で浴びた女の人達は、顔を青くしながら私の方に一切振り返ることなく走り去っていった。
シーン、と沈黙が流れる。
えっ…と。一応…助けてくれたのかな…?
私の方を無言でじっと見据えている牧谷さんに、
『あ、の…、ありがとうございました。』
とりあえずお礼を言って、小さく頭を下げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます