第32話

「―――お嬢ちゃん?大丈夫かい?」







目の前からそんな声が聞こえ、ハッと我に返った。






いつの間にか俯いていた顔を上げれば、優しそうな顔をしたおばあちゃんが心配そうに首を傾げていた。






『えっ、あ、』






「顔色が悪いみたいだけど、どこか具合が悪いのかい?」






何て言おうかと言葉を詰まらせていれば、更にそう声を掛けてくれた。






『いえっ、大丈夫です!ちょっとボーッとしてただけなので…、ありがとうございます。』






私が笑顔でそう言えば、






「そうかい?なら良かった。」






ニッコリと顔を綻ばせ、安心した様な表情になった。







このおばあちゃん、いい人だ。







『じゃあ、私もう行きますね!ご心配、ありがとうございました!』






最後にペコッと軽く頭を下げれば、「あぁ、じゃあね。」と優しく微笑んでくれた。






そんなおばあちゃんと別れ、再び学校へと足を進める。





ちょっと遅くなっちゃったな…、早く行かないと。








…もう、あの事は考えない様にしよう。





もし誰かが私の事を探してたとして、何の目的かは分からないけれど、”今の私”が見つかるはずない。






今まで通り、地味に目立たない様に、ひっそりと過ごしていれば、大丈夫。







内心不安で不安で仕方ない気持ちにフタをして、そう、自分に言い聞かせた。

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