喫茶店、始めました。
第1話
とある路地裏に佇む喫茶店の、とある昼下がり。
今日こそは、ゆったりとした日常にしてやろうと意気込んだ瞬間。
カランカラン――。
再び今日も、地獄の門が、開いた音がした。
「こんちわー!カレー大盛りでー!!」
『お前ら学校行けよ。』
真昼間に学ランで堂々と入ってきた4人組に、思わずそう突っ込んだ私は悪くない。
「相変わらず冷たいなぁ、お姉さん。で、今日こそ名前教えてよ?」
その中の1人、爽やかな見た目をしたチャラ男くんが、今日も今日とて私の名前を知りたがる。爽やかな外見のくせにチャラ男、非常にややこしい男だ。
はぁ…、と深い溜息を吐き出しながらもそれを軽く無視して、仕方なくいつものように4人分のカレーをお皿によそう。もちろん言わずもがな全員大盛りで。
「やったー!いただきまーす!!」
「やっぱここのカレーが1番だな!うめー!!」
「うん、相変わらず美味しいね。ねぇ、さっきの無視?いい加減教えてほしいなー。」
「…んま。」
『さっさと食ってさっさと帰れ、不良ども。』
見事に統一感のない奴等に容赦なく暴言を吐く。そしてチャラ男、お前はしつこい。
まぁ、美味しそうに食べてくれる姿は悪い気はしないので、結局今日もゆったりライフを諦める羽目になる。
ほんと美味そうに食べるよなこいつら。そんな顔見てると私まで…。
ちら、と横目で鍋の中を見る。独学で研究を重ねて数種類のスパイスを掛け合わせ、何日も煮込んだオリジナルカレー。その匂いが鼻を掠め、ゴクリと唾を飲み込んだ。
26歳、独身、カレー大好き女。それが私。
「まーた我慢出来なくなって食べてるよこの人。」
『うるせぇ、ほっとけ。』
オマケに毒舌口悪女も付け加えておくか。
これが、私の望んでなかったいつもの日常である。
「おねーさん、おかわりー!!」
「俺も大盛りで!!」
「俺もおかわりもらおうかな、お姉さん?」
「ん。」
『…さっさと食って帰れって言ってんだよ、耳聞こえねぇのかお前ら?』
そして黒髪くん、いい加減ちゃんとした言葉を喋れ。
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