第1章

第7話

「お前が、黒姫か?」





唐突に、後ろからそう声を掛けられた。





…また、か。チッ、と小さく舌打ちを零し、気だるげに振り返れば、見るからに不良と呼ばれるような外見をした数人の男達が気持ち悪くニヤニヤしながら立っていた。





『そうだけど、何か用かよ。』





面倒だな、と不機嫌さを隠しもせずにそう言えば、明らかに顔付きが変わる男達。





「お前、調子乗ってんなよ?…いいから、ツラ貸せ。」





クイッ、と顎をしゃくらせながら先頭の男が指し示したのは、ちょうどすぐ側にあった路地裏。その男は先に、路地裏の中へと消えていった。





”ついて来い”、ってことか。





はぁ…、と深い溜息を1つ吐き出して路地裏の方に歩き出せば、後ろから残りの男達が、恐らく逃げられないようにだろう、ついて来る。





最近、こういう”絡み”が増えてきた。まぁ喧嘩自体はストレス発散にもなるし別にいいんだけど、”あの子”が毎回心配するんだよなぁ。






――気を付けてね?無茶しちゃ、ダメだよ?






ほらまた。心配そうな声色で、”愛しいあの子”の声が、頭の中に響く。






――大丈夫だって。お前はいつもの様に休んでればいいんだよ。ほら、寝てろ。






そう呟けば、諦めたような溜息を吐いた後、静かになる。






――お前は何も考えずに、全部あたしに任せてりゃいいんだよ。

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