第041話 ドラゴンステーキ!
王都にやってくると、すっかり空が茜色に染まっていた。
俺達は住宅街を抜け、カーティスさんのお屋敷にやってくる。
「すみませーん」
門のところに立っている兵士に声をかけた。
「ん? おー、これはハルト殿。主から聞いております。どうぞ、中へ」
門番さんに勧められたので中に入り、屋敷に向かう。
「広いなー」
「おぬしも儲けて、これくらいの屋敷を立てたらどうじゃ?」
「誰が管理するんですか……サクヤ様が掃除してくれます?」
「せんの。まあ、ささやかで良いか。そっちの方が幸せそうじゃ」
そうそう。
お金はありすぎるのも良くないのだ。
と、安月給サラリーマンが言い訳します。
俺達が屋敷の前までやってくると、メイドさんが待っており、深々と頭を下げる。
「ようこそいらっしゃいました。カーティスがお待ちです。どうぞ、こちらへ」
頭を上げたメイドさんはそう言って、扉を開けてくれたので中に入る。
屋敷の中は調度品なんかも並んでおり、テレビで見たヨーロッパの貴族の屋敷そのものだった。
「すごいね」
「洋風で素敵です」
ジュリアさん家は和風だしね。
外見しか見たことないけど。
メイドさんも中に入ると、奥に歩いてったので俺達も続いた。
そして、奥にあった扉の前で立ち止まると、ノックする。
「旦那様、ハルト様御一行をお連れしました」
『おー、入ってくれ』
中からカーティスさんの声が聞こえてくると、メイドさんが扉を開けた。
そして、中に入るように促してきたため、3人で中に入る。
部屋は奥に長い広い部屋であり、白い布がかかった長いテーブルが置いてあった。
その一番右奥にはカーティスさんが座っている。
「来てくれたか。今、準備をしているところだ。席についてくれ」
「お邪魔しまーす」
俺達はテーブルに行くと、サクヤ様、俺、ジュリアさんの並びで席についた。
一緒に来たメイドさんはカーティスさんの後ろに控える。
「食事の前に少し、話があるのだが、良いか?」
「ええ。何でしょう」
「まずだが、ドラゴンの素材を売るのはやはり少し時間をもらいたい」
貴重な素材だから時間がかかるんだろう。
「それは大丈夫です」
「うむ。次だが、魔石を陛下が買い取りたいと言っている」
陛下?
「魔石なんかどうするんです?」
「特に何もせん。ドラゴンの魔石は珍しいからコレクションしたいだけだな。金貨50枚で買い取ると言っている」
すごっ!
「そんなにするんですか?」
「いや、実は安い。もう少し成長したドラゴンなら10倍はする。だが、あのドラゴンは巣立ったばかりの幼体だからそこまでなのだ。魔法ギルドに売れば金貨30枚といったところだろう」
へー……それでもそんなにするんだ。
「陛下はそれを金貨50枚と?」
「さすがに安かったり、同額ではな……どうする?」
「売ります」
魔石の使い道がわからないし、俺にとっては宝石と一緒。
「そうか。では、金貨50枚を支払おう」
カーティスさんがテーブルに金貨50枚を数えながら置き、袋に入れる。
そして、それをメイドさんに渡すと、こちらに持ってくれる。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
袋を受け取ると、ちょっと重かった。
「次にだが、ドラゴンの肉を譲ってくれたね?」
「はい。皆さんでどうぞ」
「感謝する。妻も子供も喜んでいた」
あ、結婚してるのか。
いや、そりゃそうか。
「それは良かったです」
「ただ、我らだけでも食べきれそうにないから陛下に残りをお譲りした」
「良いと思います」
「陛下も大変喜んでおり、礼ということで通行証を発行してくれた」
カーティスさんはそう言うと、一枚の紙をメイドさんに渡す。
すると、またしてもメイドさんが紙を持ってくれた。
「通行証というのは?」
「国を超える場合は当然、関所を超えないといけない。その際に必要なものだ」
「え? これがないと国外に出られないんですか?」
ダメじゃん。
「いや、そんなことはない。君の場合だったら魔法ギルドや冒険者ギルドのギルドカードを持っているだろう? それで通れる。とはいえ、審査なんかで時間がかかることもあるんだよ。でも、その通行証があればすぐだ。何しろ、陛下が認めているわけだからな。拒否すると、国際問題になる可能性がある。末端の兵士はそんな責任を負いたくないからすぐに通してくれる」
な、なるほどー。
「陛下にありがとうございますとお伝えください」
「うむ。陛下もドラゴンを倒すのは見事だと褒めておった。困ったことがあれば何でも言ってくれ」
良い人だなー。
「助かります」
軽く頭を下げると、ノックの音が部屋に響いた。
『旦那様、お食事の用意ができました』
「ああ、頼む」
カーティスさんがそう言うと、扉が開き、メイドさんが続々と入ってくる。
そして、食事の準備をしていくと、目の前にはパンとスープにサラダと共に焼いた肉が出てきた。
「シェフが言うにはシンプルなステーキが良いだろうということだ」
「へー……ドラゴンステーキですよ」
「うむ!」
「美味しそうですね」
ホント、ホント。
「では、頂こうではないか」
俺達は真っ先にドラゴンステーキをフォークとナイフで一口サイズに切り、口に入れる。
すると、口の中でとろけ、あっという間に喉の奥に行ってしまった。
「おー……美味い……何これ?」
「鶏肉か? いや、違うのう……うーむ、すごいの」
「何でしょうね。確かに鶏肉に近い気がしますが、全然、違います。とにかく、美味しいです」
これはすごいわ。
めちゃくちゃ美味い。
「君らの肉だからいくらでも食べてくれ。ちなみに、スープは骨で出汁を取ったらしい」
「ほうほう」
気になったのでスープを飲んでみる。
「あっさりですけど、美味いっすね」
「ホントにのう」
「上品な味わいです」
俺達はその後も食べ続け、ドラゴンステーキに関してはおかわりをするくらい食べた。
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