第024話 冒険者ギルド
冒険者ギルドに入ると、拍子抜けした。
荒くれ者が酒を飲んでいたり、騒いでいる印象があったのだが、魔法ギルドと変わらず、受付があり、冒険者らしき人達が普通に話をしているだけだ。
「普通ですね」
「そういえば治安が良いんじゃったな。さて、受付は……任せる」
いつもなら若い女性を勧めるサクヤ様もさすがにジュリアさんがいるので任せてくれるようだ。
受付をぱっと見て、若い女性はやめておこうと思い、男性の受付のもとに向かう。
「こんにちは。ちょっといいですか?」
「はい、こんにちは。受付担当のネイトと申します。ご依頼でしょうか?」
依頼?
頼むってことかな?
「いえ、冒険者ギルドについて聞きたいんです。旅の者なのですが、魔法ギルドに所属している魔法使いです。冒険者ギルドにも所属しようかなーと思っていまして」
「ええ。そういう方もおられますね。禁じられたことではありませんし、問題ありません。どういったことを聞きたいのでしょうか?」
すごい丁寧な人だな……
好感が持てる。
「ざっくりとでいいのですが、冒険者って何をするんですか?」
「主に魔物退治、護衛、採取、配達依頼がメインの仕事になります。魔法ギルドと異なるのはあちらが魔法関係者からの依頼が多いのに対し、こちらは町民から貴族の方まで幅広いです」
それで最初に依頼かって聞いてきたんだな。
「ぶっちゃけ儲かります?」
「冒険者ギルドはわかりやすく、強い者が儲かります。弱い者は儲かるどころか命の危険もありますね。その辺りはこちらでも実力を見て、依頼を紹介致しますが、それでもケガ人は出ますし、少なからず、命を落とす者もおります」
魔物を相手にすればそうだわな。
「あの、人を相手にすることもあります?」
「時と場合によってはあります。人を相手にするような依頼は基本的には傭兵ギルドの領分になりますが、時には盗賊に襲われることもありますし、要人の護衛中に暗殺者に襲われることもあります」
護衛の依頼はちょっと厳しいかな……
やらなければならないのならやるが、そうでないのなら避けたい。
ましてや、サクヤ様とジュリアさんがいるわけだし。
「その中だと魔物退治、採取、配達依頼ですかね?」
「そうですね。おすすめが魔物退治でしょう。あとは配達依頼ですね」
「と言いますと?」
「魔物退治が良いのは魔石が一緒に採れるからです。依頼料と共に魔石で儲かります。これは基本ですね。配達依頼が良いのは旅をしていると聞いたからです。次の目的地を教えていただければそこに配達する依頼を紹介できます。移動するついでに届けていただければ依頼は達成です」
な、なるほど。
すごくわかりやすい。
「もうちょっとここにいようと思っているので出る時にでも聞いてみます」
「はい。ただ、これだけは忠告しておきます。中には配達物を盗む者や配達を遅延する者もいます。これは罪に問われるので注意してください。事情があって依頼ができそうにないならちゃんとギルドに報告することです」
そりゃそうだ。
「わかってます。そんなことはしません。でも、失くした場合は?」
「罪には問われないかもしれませんが、当然、弁償です」
ですよねー。
まあ、家に置いておけばいいだけだから問題ないだろう。
「所属は誰でもなれますか?」
「一応、審査がありますが、魔法ギルドに所属しているなら問題ありませんよ。魔法ギルドが問題ないと判断したということですから。正直、ウチより魔法ギルドの方が信用は上です」
そうなんだ……
「サクヤ様、所属してもいいです?」
「好きにせい。とはいえ、ジュリアもおるぞ」
そういやそうだな。
「ジュリアさんはどうする?」
「どうした方がいいんですかね?」
さあ?
「失礼ですが、御二方は御夫婦でいらっしゃいますか?」
ネイトさんが俺達の手をチラッと見て、聞いてくる。
「そうですね」
「御夫婦で旅をしてらっしゃるのならパーティーでしょう。個人のカードもありますが、パーティーのカードもありますよ」
そういうのもあるのか。
「それで作れます?」
「もちろんです。所属ということでよろしいでしょうか?」
「それでお願いします」
「かしこまりました。お名前をお願いします」
苗字はどうしよ?
「えーっと、私がハルトでこちらがジュリア、そして、この子がサクヤです」
「ハルト様、ジュリア様、サクヤ様ですね……かしこまりました。早速ですが、お試しで簡単な仕事をしませんか? その間にカードを作っておきます」
ルイナの町でホリーさんにも似たようなことを勧められたな。
チュートリアルなのかもしれない。
「夕方までに帰りたいんですけど、それまでに済む感じの仕事はあります?」
「はい。単純な魔物退治はいかがでしょう?」
魔物退治か。
これは実力というか戦えるかを見るためだな。
戦えない者に護衛や魔物退治の仕事を回せない。
「外ですかね? 時間がかかりません?」
「いえ、外壁に狼が居座っているらしいのです」
日本では絶滅したという狼か。
「それ、魔物ですか?」
「そうですね。人を襲ったという報告はないのですが、危ないので駆除対象です。依頼料は銀貨5枚ですね」
銀貨5枚……
定食5食分か。
「そんなもんですかね?」
「森や山に行って、狼を狩ってこいっていう依頼なら倍以上はしますね。近くですし、狼は1匹なので」
ふーん……
「ジュリアさん、狼は大丈夫?」
変な質問だな……
「大丈夫です。実家の山で猪を倒したこともあります。お爺ちゃんが燻製にしてました。美味しかったですね」
浅井さん家ってお偉いさんの家なのにワイルドだな。
「へー……」
「魔物退治の他にもそういう狩猟の仕事もありますよ。血抜きなんか専門的な知識が必要になってきますが……」
ネイトさんにそう言われたので再び、ジュリアさんを見る。
「そこまでは……倒した後は作業を見てるだけでしたし」
まあ、そうだわな。
当然、俺もできない。
「普通に狼を倒してきます」
「わかりました。では、お願いします。狼は北門と西門の間で目撃情報が多いです」
「了解です。ちょっと行ってみます」
俺達はこの場をあとにすると、ギルドを出て、ここから近い北門に向かった。
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