パクリマスオンライン 六つの企業が協力して完成された、最先端のTRMMORPG始動!
紫電のチュウニー
プロローグ テンプルヴァイス、ライセンス試験
■新宿FSビル■
問題100
痛覚における受容器を一つ答えよ。また、その受容器によって感じる感覚はどのようなものかを答えよ。
……前半から問題がやべぇ。
解。ポリモーダル受容器。
鋭く焼けるような痛み。
……問題200
痛覚における
また生理学で痛みに関する問題かよ!
解。
うぉらー、どんどん来い調子上がってきたわ!
……問題500
テンプルヴァイスにおける最大稼働時間には制限がある?
解。現実との乖離を含めて制限がある。
200問過ぎてからは問題が落ち着いたな。
……問題1000!
TR機器テンプルヴァイスでは、味覚などを感じることが可能か。その場合食事などは現実で摂取する櫃ようがあるか。
回答、可能だが、実際に腹は膨れないので栄養補給は現実で必要。
……っしゃあーーー、終わったぁーー! 試験問題全部で1000問とか舐めんな! まじ疲れた……データ送信をタップして終了っと。後戻りもできないから入力後の見直しも不可とか、鬼かよ。
テンプルヴァイス用ライセンス試験解禁の初日。新宿にあるオフィスで、学校
の友人たちと受験をしに来た。
全員個別に仕切られたブースでの試験が当たり前になった昨今。
初日ってだけあって受験者は多い。
にしても、難しいなんてもんじゃなかった。
ハードル高ぇよ。
こっちはゲームやるだけなのに。
それほど安全面には気を付ける必要があるってことなんだろうけどさ。
まじ腹減った。頭使い過ぎたわ。
大きく伸びをしてブースの席を立つと、担当員が近づいてくる。
「試験お疲れ様でした。工藤
「ども。もう帰っていいすか?」
「採点は直ぐですよ。お使いの端末に結果を転送しますね。ええと……? ちょっとだけ待ってくださいね……あわわ、やっぱり直ぐにはでませんでした。ロビーでお待ちください! 確認したら伺いますからー!」
すんごいミニスカの担当員姉ちゃんは走って出て行った。
さすが新宿オフィス。制服も緩いな。
髪色は俺好みのちょい赤色。うん、都会ってやっぱいいわ。
……にしても、直ぐにはでませんでした、か。
ダメだったのかな。よく分からねー。
考えんのやめやめ。ロビーに行かないとだった。
■新宿FSビル、ロビー■
しっかし事前に試験内容の問題傾向を見ただけでもすげー機械だわ、テンプルヴァイス。
開発元が日本とかまじかよってレベルだ。
実機をゲームで遊んだわけじゃないけど、試作段階を体験してみたら直ぐにでも欲しくなった。
購入するにはライセンスが必要。にもかかわらず販売台数が海外で1億2千万台というぶっ壊れ数値を叩き出した。
試験は難しかったが、テンプルヴァイス購入ラインが400点あればいい。
そこまでは到達した自信がある。
しかも試験は今後、各主要駅内に問題数を減らして合格基準を上げた別バージョンを設定するっつー話だから、そっち待つ方が受かりやすいんだろうけど。
パクリマを真っ先にプレイしたいからな。
しかし、あいつら来ないな……まったりしてたらミニスカ姉ちゃんが走って来た。
まだ10分と経ってないけど?
「はぁ、はぁ……お待たせしましたぁ。工藤さん」
「ミニス……お姉さん。俺、ダメだったんすか?」
「いえ、待ち合わせなどが無ければ別室で少々お話を」
「あーと……すんません、ダチ待ってて、二人いるんです。まだ戻って来てないんすよ。てか、まだ誰も戻って来てないんすけど」
「当たり前ですよ。全ての問題を最速解答。しかも……」
「ん?」
「いえ、そういうことでしたらまだ他に受験者は戻って来ないと思いますのでこちらで失礼します。工藤翔也さん。実は初日でまさかの……なんですけど。初の満点合格です。おめでとうございます。限定モデルのテンプルヴァイスをプレゼントすることになっていますから、都合の良い日に受け取り申請をお願いします。申請場所は現地で現物を確認していただくため、当社がある、豊洲オフィス連動スクールへお越しいただけますか?」
は? 全問? しかも限定モデルが無料? つか、限定モデルってなに? そんなのあんの初めて知ったよ? 未発表だろそれ。
「マジですか!? 安いモデルでも30万ですよね!?」
「工藤さんは学生なので、テンプルヴァイスは半額ですけどね」
「そっか。学割あるんでしたっけ」
「ちなみに限定モデルは1台のみですから、購入不可能です。転売も出来ませんからご注意を。もし転売なんてしたら怖ーい通知が来ますからね? あははは」
「あははは……」
海外大手に訴訟勝ちする企業の怖い通知なんて笑えねーっつの。
つか、売るわけねーだろ。
手に入るのを指折り数えて待ってたくらいなんだぞ。
もしかして俺、先に手に入っちゃう系?
全問正解はいくらなんでもネタだよな?
選択式がほとんどだったが記述式だってあったぞ。
「はぁ。社長は全問正解なんてあり得ないって言ってたのに。まさか初日に出ちゃうなんて。絶対しつこく質問されるなぁ」
「それって社長が企画した話なんすか?」
「そうですよ。社長用にカスタマイズされたハイエンドのフルモデルです……といけません、仕事中でした。そろそろ別の受験者が来るかもしれないので失礼しますね。行先は受験登録端末に送信してありますから確認してください。本当におめでとうございまーす!」
ふわっとかかとをひるがえして去っていく赤髪ミニスカ姉ちゃんの背中を見送った。
……都会ってやっぱいいよな。
ミニスカ姉ちゃんと入れ違いで、ぐったりした表情の受験者がちらほらとロビーに戻って来る。
分かるわ……あ、ようやく見知った顔の奴が来た。
「おーいダッシュ。わりぃ、待たせちまった?」
けだるそうに手を挙げながら俺にそう呼びかけたのは、試験を受けに来た、同じクラスの鈴木
同じ高校2年のクラスメート。金持ち、割とイケメンでスポーツも出来る。
いわゆるモテ男ってやつだが悪い奴じゃない。
金持ち独特の見下すような嫌味も無いしな。
中学校から同級生でいろんなゲームやった仲だが、高校卒業後は六条寺のスクールに行くと決めてるらしい。
「頭くらくらするわ。全問解くだけでパーになるんじゃね」
「結果のこと聞きづれーけど、どうだったよ?」
「ん。即効結果出んのびびったけど、合格だった。お前は……聞くまでもねーよなぁ」
「なんでだよ。
「やめとくわー。俺477点のギリギリだしー。お前学校の勉強は大したことねーのにジャンル定まってるの神だからな」
「まぁ、プラモとかなら説明書
「頭んなか開けて覗いてみてーわ。ったく、俺の同士は
「よく言うわ。アキトだってちゃんと勉強しなかっただけだろ。ヒナタ時間かかってんな。そろそろか?」
「はい二人とも。お水」
『うお!?』
と、ロビーの椅子でだらけてる俺ら二人に後ろの椅子から水を渡してきたのは
こいつも腐れ縁。ちなみに男だ。
俺はありがたく水を頂くと一気に飲み干しもう
どこにあったんだろって思ってたら笑いながらもう
「お前いつから後ろにいたん?」
「ついさっきだよ。お水は戻りながら入れて来たの」
「サンキューな。そんで? お前何点だった?」
「597点だって。難しかったよね」
「お前だけは信じてたのに、俺より120点も上じゃねえか……」
「全員受かったんならいいじゃねーか。落ちても再挑戦は翌週から出来るんだろ?」
「お金は掛かるけどね。僕は新宿、人が多くて苦手だから。合格出来てよかったよ」
夕日はちょい女よりの性格だ。
でも俺ら三人割と仲はいい。
持ってきてくれた紙カップの水を飲み干しぐしゃりと潰す。
……ようやくだ。「パクリマスオンライン、プレイ環境ゲットだぜ! ……あ、悪いけどお前らどっちか、今度付き合ってくんない?」
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