ええっ?異世界ですって?
「ネスト様、お食事をお持ちしました」
セントラルエリアのクソほど縦に長い幾何学模様の玉座に寄りかかる俺の前にイベルワが家系ラーメンを上品に並べる。
「⋯⋯いやぁいつもありがとう」
「そう言っていただけますと至上の喜びでございます」
「頭下げないでよ。一緒に食べよう」
「よろしいのですか?」
「当たり前じゃん。ここでは俺が絶対なんでしょ?」
自分でも悪い顔をしているなーと思いつつも一緒に食べてくれと駄々をこねる。実のところ一人で飯って案外寂しいもんなのよねぇ。
「それでは同席させていただきます」
すると家系ラーメンがもう一つ当たり前のように出てくる。
「あぁそうそう」
「どうかされましたか?」
「さっきの侵略者が向かおうとしてた星⋯⋯名前が分かんないけどなんだっけ?」
「そちらの星はこちらで勝手に呼称していますがRSー332という星でございますネスト様」
「長ったらしいけど今はいいや。その332には40億人が住んでいるんだろ?まだ宇宙にはこないのか?」
「それがどうやらオカシイのです」
「オカシイ?何が?」
「衛生を通じて様子を確認しているのですが、この銀河では未知のエネルギーを使用しているようなのです」
ほう⋯⋯?この文明レベルでも知らないエネルギーか。
「完全に知らないって感じ?」
「申し訳ありません。正確に申し上げますと、この銀河にある惑星では珍しいエネルギー活動星なのです。エネルギーの名前は判明しており、性質もデータベースに保存されております」
「お、そうなの?どんなの?」
「RX223というネスト様の概念で近いところの宇宙エネルギーやダークエネルギーの一種とお考えいただければと思います」
「うっそーと言いたいところだけどそんなのとっくだよね多分」
「仰る通りです。このダークエネルギーの中には無限に近い種類のエネルギーが流れており、その中の一種です。こちらは通称万能粒子と定義上呼んでおり、様々な性質を持つ事から我々としても保険として貯蓄しているエネルギーです」
通称単一の粒子がほとんどなのだが、この万能粒子は複数の状態を持つことができる銀河でもかなり特異なものだそうだ。
「それに加えて意識と共鳴する事という所でも特異点です」
「共鳴⋯⋯」
「その特異な粒子を無限に近い量含んだ隕石が大昔のRS−−332に衝突しそして再構成しています」
「再構成⋯⋯か」
「はい。こちらの星では他の銀河系にあります力を使って繁栄しており、それらがこの銀河系では珍しいというお話でございます」
「そうなんだ。ちょっと見れたりする?」
「はい。ネスト様に接続致します」
やっぱりこの身体は信じられないくらい便利だ。
電子図書館も念じれば行けるし、DVRにもいける。挙げ句の果てにはこうして動画サイトや衛生を通じた観察すら当たり前のように可能にする。
「ん?」
「私も接続いたします」
⋯⋯おやおや?
脳内で専用サテライトにズームを念じる。
「ねぇ、イベルワ」
「どういたしましたか?ネスト様」
⋯⋯んん。
鼻息を漏らしながら、俺はその光景を見続ける。
いや、あれどう考えても魔法だよな。
手から炎の球が飛んでるし、なんか少女が捨てられてるようにも見える。
俺はいきなり嫌な場面を見てしまったと空笑い。
「この星、人間じゃない?」
「仰る通り、サピエンスです。しかし遺伝情報などは全て全くの別物でございます」
「やっぱり知的生命体って皆ああなるの?」
「宇宙生物だとヒト型でないものが多いですが、惑星で活動するタイプの知的生命体はほとんどヒト型⋯⋯ホモサピエンスやテリード、ダーラナールスというまた別物になったりもいたします」
「⋯⋯そう」
なんか知らない種族の名前が出たけど一旦置いとこ。
「────あ」
眺めている少女に動きがあった。
俺は更に拡大して状況をなんとなく推測してみる。
容姿は10歳から12歳くらい。全身ボロボロ。
でもって馬車から投げ飛ばされて転がされてる。
投げた側は当たり前のように馬車を引き返してその場を去っていく。
おいおい、中々酷くないか? それは。
「ネスト様、あの雌が気になりますか?」
「イベルワ、言い方」
イベルワに他意がない事は分かりきってるけど、やっぱり宇宙生物だからかその辺のデリカシーが皆無である。まぁ仕方ないんだけどさ。交尾とかなんて進んだ文明からすればその程度の単語にしかならんのだろうが。
苦笑いで答える俺にまずいと思ったのか即座に腰を折り畳んで大袈裟に謝罪をするイベルワ。
「申し訳ありません」
「良いよ気にしないで。とりあえずこの子可哀想だから助けようよ」
「畏まりました。ネスト様の性奴隷ということでしょうか?」
「─────イベルワ」
「申し訳ありません、ネスト様」
なぁ、俺達はコントでもやってるのか?と思いつつ、必死に笑いを堪えながらツッコむ。
内心大爆笑しながら、俺はこの明らかに可哀想な少女を助けるべく、色々と準備を始める事にしたのだった。
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