ドロウ・ザノア

マゴステラ

プロローグ



 presented by WF Company


 構想5年、開発30年の超大作!




 ー新たな自分を探しに旅立とうー


 〜♪(壮大な音楽)


 はるか昔、我らの先祖は覇を競い合った


 群雄割拠の時代


 止まぬ争い


 平和とは程遠い世界


 だが、そこには我々を引き付けてやまないナニかがある


 再び覇を唱えよ


 時を越え、未知を越え


 新たな冒険が始まる


 この世界は、君を待っている




『ドロウ・ザノア』





 ─────




「『ドロウ・ザノア』が発売されて2年、現在もなおプレイする方が増えていると言われるこのゲームですが、その魅力はどういったものなんでしょうか」


「やはり、VRという空間を自由に動き回ることが出来るという1点に限るでしょう。2年経った現在も他の企業が真似出来ていない技術ですからね。ゲームの評価を表す際、没入感という言葉が良く使われていましたが、このゲームは実際にゲームの世界に飛び込んでいる訳ですから、これを超える没入感はありません。

 私も当然プレイしていますが、初めて己の身で空を飛んだ時の感動は忘れられませんよ」


「ありがとうございます。では────」



「ハッ...ハッ...」


 映像結晶に映し出されるニュースを横目に、家に向かって走る。今日はとうとう"アレ"が家に届く日なのだという興奮を抑えきれなかった。心臓は早鐘を打ち、喜びと期待が入り混じった感情が胸に広がっていた。


 ようやく家にたどり着き、玄関先には大きな箱が置いてあった。心臓はさらに高鳴り、歓喜の声が口を突いて出た。



「来たぁあああああああああああ!!」


 急いで箱を部屋の中に運び入れ、着替えもせずに勢いよく開封する。箱の中から大きなポッドが姿を表した。心臓の音はもはや聞こえなかった。それほどに目の前の存在に夢中だった。


「ついに出来るんだ、ドロウ・ザノア!!」


 興奮しながらポッドの中に入る。


 成人年齢に達するまではプレイすることが出来ないため、2年待たされることになったが、ようやく遊べるのだ。いや、2年で済んだだけ運が良かったと言えるだろう。中には100年後まで遊べない者もいると聞く。


 街中やネット上にあふれる情報は、敢えて見ないようにしていた。羨ましくなるのもあるが、いざ始める時に楽しさが減ると考えたからだ。


(大変だったなぁ...)


 あまりの人気に情報は飽和状態で、自分の住んでいる所が閉鎖的な場所でなければ嫌でも耳に入っていただろう。

 しみじみと苦労を思い返しながら、ポッドの中に入る。あとは起動式を唱えるだけだ。


「スゥー、フゥゥゥ」


 1度深呼吸をする。


(ようやく始まるんだ)



魂接続ソウル・リンク




 視界が真っ白に染まる






 ────





 オルテンガルム


 様々な種族が存在し、歴史を紡いで来た世界。

 この世界で生きる者たちは、魔法と技術の発展によって平和な日常を過ごしていた。


 しかし、平和といえども寿命や価値観、力の差は当然存在し、他種族の共生は未だ実現していない。


 たが、それを良しとしない組織があった。

 数万年前に各種族の代表者によって作られた、世界平和を継続させるための組織、世界連盟である。


 世界連盟は、その設立以来、文明の発展と各種族間のバランスを保つために膨大な努力を払ってきた。世界連盟が懸念しているのは、文明発達の速度の違い。短命種は短い生を全うするために物事に打ちこむ性質を持ち、長命種よりも文明発展に余念が無い。


 元より力ある長命種の侵略に対抗するため、短命種が見出した進化の道ではあるのだが。今度は、長命種が短命種によって侵略を受けかねないほどに差が生まれてしまった。


 世界連盟のメンバーたちは、多くの夜を眠らずに議論し、戦略を立て、バランスを取るための措置を講じてきた。しかし、近年では危うい事件が増え始め、平和を保つためのコントロールはますます困難を極めていた。

 各種族の文化水準のバランスを保つために、連盟はあらゆる手段を試みたが、それでも全ての種族が満足する状況を作り出すのは至難の業だった。

 このままでは、必ず大きな争いが起きるだろう。先人たちが途方もない年数をかけて作り上げた平和を、自分たちの世代が崩してしまうわけにはいかなかった。



 そこで世界連盟が打ち立てた一大プロジェクトが「ドロウ・ザノア」


 魔法、そして技術発展の顕著な複数の種族から知恵を集め、第二の生とも言えるほどに自由度の高い仮想空間を作る。

 これに全世界の種族を集めることで、様々な種族間の相互理解、文化交流を進め、世界全体での調和を促すプロジェクトだ。


 プロジェクトの案が出て、直ぐに開発が始まった。

 凝り性の種族の意見がぶつかる事もあったがようやく完成。


 作り上げた世界は活気溢れる太古の時代を参考にした。創作物としても人気のジャンルであり、自分たちも少なからず憧れというものがある。

 更に、本能で闘争を求めている種族に対してガス抜きの効果があるだろうという予測も出来た。


 かくして、『ドロウ・ザノア』は全世界に広がった。






 ─────





 そして、今日


 世界に飛び込んだ新たな冒険者



 彼の名は『グレン』


 天空都市に住む竜人


 このゲームでの目標は彼の先祖のような偉大なドラゴンになる事




 物語が幕を開ける



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