第32話 ガル宰相の誤算

 ガル宰相の読みの通り、ヒロ魔道具師は魔道具作り以外は無能な男だった。

 建国して王に成ろうが、魔道具作り以外は何も出来ないヒロだったが、一つ読み間違いは、ヒロに付いたエンディ子爵の貴族オブ貴族、腹黒さと高潔さを兼ね揃えた、最高に貴族らしい働きを予想出来て居なかった事だ。



「国境はこの位置になる! 集落は気にせず北の山脈から南の山脈まで、真っ直ぐ防壁を建てろ!!」

 国境線上の2軒の家は家族の了解を得ている、元々エンディ男爵の領地の村人で、家を建てての移住は問題なく進んだ。


 エンディ子爵は、魔道具王国の国内魔道具師全員360人を召集し、横一列に整列させた魔道具師に初歩技術『強化壁』(素材は土に魔力)を一斉に作らせた。

 360人の魔道具師が、3日で北山脈から南山脈までの、長い防壁を中央の街道以外に完成させた。


「街道の国境門は、この素材で建てれるか?」

「お父様大門の鉄材が不足してます」


 街道筋の、人や馬車が通る通常門は完成したが、有事の時開門する大門は鉄材不足で後回し、今は只の壁で我慢する事にした。

 有事の戦闘はまず起こらないとのワインの予想を、エンディ子爵は信じていた。


 防壁監視台のワインが、声掛けしてきた。

「フランソワ様ミーシャが機械人形を引き連れやって来ます! 通常門を開いて受け入れて下さい!」


「ミーシャとは誰だ?」

「ヒロお父様が作られた最新オートマタです」


「ヒロさんは魔道具王国に帰って来てるはず、ヒロさんより早く着くって?」


「ミーシャは走って来たそうです。機械人形は近くにいた者が帰って来ただけで、この後サクセス王国中の全機械人形が延々と続いて帰って来ます!」

「機械人形達はサクセス王国を身限ったのか?」

「機械人形の扱いは道具としてのみで、ヒロお父様の様に人と同じ扱いはして居ません、ミーシャの呼び掛けに全機械人形が応じて自由意思で帰って来ます」


 機械人形は道具、元の持ち主達から返還要請が来るだろうが「持って帰れるなら自由に持ち帰れ、国境通過許可は出す」で、持ち帰れる者は居ないだろう、中には魔道具王国に帰化する者も出るだろう、機械人形の大移動は悪くない現象だ。



 機械人形55体を引き連れミーシャが通常門を通過した。

 ミーシャは、ガル宰相から国政を学んでいる、ミーシャが魔道具王国建国に加わった事で一気に国家体制が整って行った。


 ヒロが乗った馬車が、10日掛けて帰った時には『ヒロ魔道具王国』が建国していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る