第16話

 ある日、千花は雪音のところに来た。

「雪音、明日、映画を見に行かない?」

「えっ?」

「ねえ、いいでしょう?」

「……」

「返事をしてよ」

「はい、私のこと許してくれるなら」

「じゃあ、約束よ」


 千花は笑った。

 その顔を見て、雪音は思った。

(この人は、どこまでも優しい、不思議な人だ。)


「千花さん、酷いこと言ってすみませんでし

 た。千花さんが私のこと、あんなに思ってくれているなんて」

「あたしこそ、ごめん。あたし、雪音のこ

 と、もっと知るべきだった。あたしたち、親友なのに」

「私もそう思います」


「ねえ、今度からは『千花』って呼んでくれ

 ないかなあ?『千花さん』だと他人みたいだし」

「わかりました」

「敬語もいい加減やめようよ。同い年なんだから」


「そうしま…そうしよっか、千花」

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