当たり前に縛られて

ゆゆ太郎

当たり前に縛られて

僕には好きな人がいる。その子には小学校の頃から長年片思いしていて……

僕が惚れることになったキッカケは単純な事で、

「小学6年生という周りの関係が固まりきった時期に転入して周りから浮いていた時に遊びに誘ってくれた」なんて物だ。

それでも、今の今までそいつを僕はただの友達だと思っていた。


―――そいつに好きな人が出来た事を聞くまでは。





『相談なんだけど……好きな人ができたんだ』

『同じ部活動の人なんだけどさ……』

『え!?どんな子なの?』

『えっと……改めて言うと恥ずかしいけど、やさしい所とか、頼りになる所とか』

『青春してるなぁ』

『んんっ!そ、そういう唯斗だって好きな人くらいはいるんじゃないの!』


―――そんな顔を赤くしながら答えて、焦ったように話題を僕に振ってきてさ。

その時の表情が『恋をしてるやつの顔』って感じで


……そんな顔を見てたら胸がやけに苦しくて、締め付けられて、今まで気づかなかっただけで僕は友情なんかじゃなくて、恋愛感情を抱いていることに気づいたんだ。


その場では好きな人について、どんな所を好きになったかとか、どんな人なのかっていうのを聞いてやり過ごしたけど話を聞けば聞くほど苦しくなっていって……あぁ、なんでもっと早くこの感情に気づけなかったんだろう。そしたら何か変わっていたかもしれないのに。

今更気づいたって、もう遅い。


だって好きな人がいるって分かった上で告白したらどうなる?


〝あぁ、きっと振られる〟


それに、今の友達としての関係が壊れるのが怖いんだ。この気持ちを隠していれば少なくとも友達のままいる事が出来る。

でも、きっとこの気持ちを秘密にしたまま生きていくのはきっと凄く辛いんだろうな。


なら、アイツが好きな人に振られるのを望むかって言うと……それは最低な気がして、最低なのは分かってるけど、もし振られたら僕は喜んでしまいそうな気がして、そんな醜い自分に嫌気を感じる。


あぁ、こんな嫌なやつの時点で元から僕に勝ち目なんてなかったのかな?


うん、今の僕に出来ることはこの気持ちを秘密にしたまま、アイツの恋を応援することなんだ。

それで、もしアイツが振られたら悲しそうな顔したアイツを見て僕も一緒に傷つくんだ。


でも……もし、結ばれたとしたら―――


ううん、この先の結果なんてまだ分からない。


だから今はまだ妄想に浸るんだ。

そこでは僕がお姫様で、アイツは王子様。

2人は最後に幸せなキスをして結ばれるんだ。

……なんて有り得ない物語を考えたりして。


―――だって、僕は男でアイツも男なんだから。


これから僕が見ることになるのは気持ち秘密を隠しながらアイツの恋を見届ける、そんな物語だ。



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当たり前に縛られて ゆゆ太郎 @katuhimemisawa

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