巫女見習い

及川稜夏

第1話

「彼女は、将来、大巫女になれるだろう」

 大巫女は、とある貧しい家の前で夫婦に向かって告げた。

 その両手には、生まれたばかりの赤ん坊が、優しく抱き抱えられている。


「それが本当ならば大変名誉なことです、大巫

女様。しかし、こんな貧しい家の庶民です」

 顔色の悪い男のほうがおろおろと言う。

 痩せ切った女のほうも、心配そうに、

「私の子供は、本当にそんなに多くの霊力があ

るのでしょうか」

と続けた。


 大巫女は硬い表情で夫婦に告げる。

「霊力が多いと言うのは本当だ。だが、この力

を上手く使いこなせるかどうかは本人次第だ」

 そして、短く押しだまったかと思うと、

「結果がどうであろうと、ここで育てるよりはましだ。私らが大切に育てる」

とだけ言いのこし、名残惜しそうな夫婦に背を向け、夕闇の中を歩いていった。

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