第2話

子供が2歳の頃から、シングルマザーをして来た。もう20年近くになる。


そう言うと驚かれたり、「あっ、すみません」と何故か謝られたり、凄く苦労したのではないかと勝手に労われたりして来た。

それぞれ、思いやりの心から派生する行動かと思うので、まぁ、ありがたいのかな?程度に思って来た。


実際は、何故か運が良くて(主に経済的に)困るかも‥と思うと臨時収入が入ったり、自治体や国の制度がちょうど都合良く変わったりして、スルスルっと生きて来られた。

そして、子供はスクスクと育ってくれた。


そう言いながらも、人並みよりは少し多い努力は勿論して来た自負はあり、おかげでそこらの同年代のおじさん並に人生経験はあると思う。


自己紹介はまたおいおいするとして、

さて、53歳。

子供もあと数年したら巣立って行くだろう年齢である。


そこで、私は一旦生きている意味を見失った。というか、先が見えてしまった今後が、とてもつまらなく思えてしまったのだ。


まだ子供も巣立っていないのに空の巣(からのす)症候群を先取りして憂鬱になってみたり、道ゆくお年寄りを見て「ああ、私はあんな風に飄々と生活して行けるのだろうか」と考えたり。


そんなある日。

なんでもない仕事帰りの夕暮れに、それは起こった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る